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異世界タウン take2  作者: 愛加 あかり
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暴走する会長




 数人のハンターが、森から帰ってきた。

 金丸さんが運転する大型トラックの荷台には、20mオーバーのフロタカマージパイソンが、トグロを巻いた状態で鎮座している。


 「今日の酒は美味いぞ、なぁ」

 「この大きさですから、武勇伝語れますよ」

 「ショットガンが、豆鉄砲に見えたよ」

 「チゲぇねぇ。ライフルが致命傷に、ならないんだから」

 「正面に、立った時に走馬灯が見えたよ」


 皆が、ご機嫌に帰った時に。貴族が数人、頭部に石を投げていた。


 ご機嫌で帰った、影村会長が、最初に見たのは。

 京也の首とスーリピの首だった。


 顔は、無残にも原形を留めて無く。側のスーリピが、京也の首ですと判断した。


 「北条。出て来い。何処だ」


 愛用のショットガンを、狩用の軽トラの荷台に乗せて。そのまま、運転席に乗り込んだ。


 頭に血が上り。助手席には、京也の頭部が布に包まれている。


 僕は、グッズショプで、店番をしていた。


 そこへ、迷うこと無く。影村会長が現れた。

 影村会長が、玄関のドアを開けて、対人センサーの音がなった。


 エルフの事もあり、手元の作業を止めて、玄関に目をやった。

 手元に集中する事もあり、見上げない事も有ったが。何気に見上げると。


 影村会長と目が合って、ショットガンの銃口がこっちを向いた。


 僕は、カウンターの中で、床に伏せた。


 『パーン』

 『カーン』

 『カッチャ』


 影村会長は、躊躇無く引き金を引いた。

 銃声が鳴り、コンテナの壁に穴が空き。薬莢が飛び出した。


 やはり、マロウでは、伝言できなかったか。


 「皆さん、伏せてて下さい。非常に危険です」


 まず、お客様の安全を確保しようとした。


 「影村会長、落ち着いて下さい。話せば分かります」


 「何を語る。言ってみろ。京也を殺しやがって」


 「落ち着いて下さい。僕は、悪く無い。何度も、忠告したはずだ」


 「そんな事は関係ない。京也の命を奪った事が許せん。お前は死ぬべきだ。地獄で京也に謝ってこい」


 「ここでは、被害が出ます。外に出ましょう」


 「逃げる気か」


 「そんな事はしません。ゆっくり立ちますから、話を聞いて下さい」


 僕は、両手を上げて、カウンターの中で立ち上がった。


 「これは、確認です。京也の暴走は、影村会長が、望んだことではないのですね」


 「何を言っている。京也が、あの家から出るはず無いだろう」


 「違います。京也さんが、スーリピと一緒に、ハベルを訪れて。貴族たちの反感を買った。貴族たちが、怒り、京也の首を求めた。貴方に何度も、連絡を入れたはずだ。無視されてるとも連絡を受けている」


 「それは、違う」


 影村会長のショットガンが、下がった。


 次の瞬間。貴族たちが、入口に向けて走った。


 影村会長が、ショットガンを構え直し。振り向いた。反射的に、動いている。


 「落ち着いて下さい。コッチです」

 大きく手を振ると、銃口がこっちを向き。


 『パーン』

 『カーン』

 『カッチャ』


 「危ないですよ。ショットガンは、床に置いて下さい」


 もう一度、床に伏せていた。

 心臓が、バクバクと高鳴り。破裂しそうなほど、落ち着かない。


 後ろに有った、限定品の玩具たちが、崩れ落ちて来た。


 貴族たちって、馬鹿なのか。無茶するな。


 もう一度、最初からしますよ。僕は、ゆっくり外へ出ますから、皆さんは、そこに居て下さい。


 僕は、両手を上げて。ゆっくりと立ち上がった。


 「僕は、悪く無い。確かに、京也を助けられなかった。だけど、それは、影村会長も同じ事だ。あれだけ、スーリピを側に置くなと言ったのに。聞く耳を持たなかった。同じじゃないですか」


 「黙れ。黙れ。お前に何が分かる。この苦しみは、お前には伝わらない。望み通り、ゆっくり外へ出ろ。確実に殺してやる」


 影村会長は、ゆっくり2歩下がり、外への動線を作った。

 僕は、そのまま両手を上げて進み。玄関を開けた。


 外は、2発の銃声で、多くの人が集まっている。


 「馬鹿か。早く遠くへ逃げろ。殺されるぞ」


 僕が、立ち止まって大声を出したから。影村会長の銃口が背中に当たった。


 「さっさと歩け。打つぞ」


 「危ないぞ。皆、逃げろ」


 僕は、防犯用スプレーを手にしていた。


 「影村会長、ごめんなさい」


 僕は振り向きながら、銃口を上に向けた


 『パーン』『カッチャ』

 『パーン』『カッチャ』


 『カチャ』『ガチャ』

 ショットガンの弾倉が、空になった。


 そのまま、押し倒し倒そうとしたが、ショットガンを捨てて、腰のハンドガンに変えた。


 僕は、防犯用スプレーを、影村会長に吹きかけて、グッズショプの中を通り抜けて、そのまま、裏口から出た。


 影村会長は、グッズショプの入り口で、もがき苦しんでいる。


 「水だ。水を持ってこい。早くしろ」


 数人が、グッズショプの冷蔵庫から、キンキンに冷えた水を、取り出して。影村会長へと渡した。


 影村会長は、ペットボトルの水を何本も使い。

 目を、擦りながらも、微かに見える程度だが。軽トラに乗り込んだ。


 軽トラの中で、ショットガンの弾倉を詰めて。

 映画館へと向かった。


 映画館には、僕は向かった無かった。


 だが、それでも良かった。


 「ここに、北条のガキを呼べ。お前たちは、人質だ」


 最初の犠牲者は、シマウマのゼッツだった。

 お腹に大きな穴が空いた。


 「「「「「キャー」」」」」


 映画館で、パニックが起こった。


 「うるせぇな。直孝のガキ連れて来い。早くしろ」


 ウサギのビーチュが捕まり、喉元にナイフが突き付けられている。


 次に、売店で働く、亀のカーラマが、邪魔だと言うだけで、射殺された。


 影村会長は、喉を潤しながら。目を冷やしている。


 「まだか、早くしろよ。オレは気が短いんだ」


 影村会長は、何日も森で狩をしていた。体の疲労は、とっくにピークに達している。

 意識を失わない為に、虚勢を張り。睡魔と戦っている。


 そんな時、影村会長の意識が消えて、眠りに就いたように思えた。


 ウサギは、影村会長の腕から離れて、水牛のミーバロが、ショットガンを奪いに向かった。


 ミーバロが、ショットガンを掴んだ瞬間に、影村会長が目を覚ました。


 その場で、ミーバロの頭部が飛び。ウサギの体にも、穴が空いた。


 「ったく。油断も隙もねぇな」


 僕は、映画館に呼ばれて。外でタイミングを伺って居たのだが。

 2発の銃声で、映画館に飛び込んだ。


 影村会長は、僕を見つけて、ショットガンを捨てた。


 ハンドガンを両手で持ち、狙いを定めた。


 「動くなよ馬鹿。直ぐに楽にしてやる」


 「影村会長、辞めて下さい。お願いします。京屋さんは」


 僕の前に、マロウが現れた。だが、マロウは真実を話そうとした。


 僕は、咄嗟にマロウの口を押さえて、真実を隠した。


 僕と、マロウが揉み合いになり。影村会長は、引き金を躊躇ている。


 しかし、マロウは、影村会長の放った弾丸で命を落とした。


 僕が、力を失ったマロウを離すと、影村会長もその場に崩れ。眠りについた。


 映画館とグッズショプは、しばらく閉館となり。

 影村会長は、地球へ戻された。



 僕は、7人の霊を弔うために、お墓を作った。

 1つは、名前が無い。


 バベルは、お客の数が減った。

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