スーリピの首
僕は、京也の身代わりを探していた。
何処の誰でも、良かった訳では無いが。似ているだけで良かった。
僕は、車を飛ばして、大阪の西成にいた。
目的は、沢山あるが西成にすべてが揃っている気がして、名古屋を通り過ぎて。大阪まで足を伸ばした。
第一の目的は、京也に似た男を探す事。
顔を整形する人を探している。
最後は、何も考えられ無くなる薬を求めた。
真ん中は、どうでも良かった。
似たヤツの顔を潰せば良いのだ。
絞首刑でも、何も語らない奴が欲しい。
色々と考えていると、看板を見つけた。
三角看板に、チョークでなぐり書きされている。
『整形屋さん。はじめました』
僕は、恐る恐る中を覗くと。
「いらっしゃいませ」
定番のように、後ろから驚かされた。
「どういった、ご要件ですか」
「急いで、整形したいと、言ったら。対応してくれますか」
「問題ないです。ですが、検査はした方が良いですよ。年の為に」
「その点は、問題有りません。それと、ハイになっちゃうお薬は有りますか」
「ウチには無いけどね。その辺の角で手に入るよ」
「有難うございます。希望の光が見えました」
「それじゃあ。頑張ってね」
僕は、角へ行き、適当に声をかけた。
「10万出せよ。天国見せてやるよ。その代わり、地獄も待ってるよ」
「いいねぇ。君、いい具合の茶髪だね」
「身長も最&高だよ」
「それじゃあ、10万円でお願いします」
エルフに頼んで、洗脳してもらった。
「問題無い。次に行くぞ」
僕は、整形をお願いしに、ヤブ医者の下へ向かった。
「急患です。大至急、この顔にお願いできますか。この顔がタイプで、どうしても、この顔が良いんです。お願いします」
「さっきも言ったけど。急に来て、顔がそのようにはならないの。そうだな、1週間は、顔が腫れるよ、それでも良いの」
「願ったり、叶ったりです。パンパンに腫らして行こう。お時間と金額をお願いします」
「急患だから、300万円で。時間は、5時間貰えるかな」
「前に200万円で、後で300出すから。逃げるな。逃がすなだ」
「OK。ノープロブレム。年収稼いだよ」
僕は、初めてパチンコをした。
音がやたらとうるさくて、小さな画面に釘付けになる。
ここでも、やらかしたのか。周りや機械が、数字が揃う度に盛り上がる。
僕は、理解が出来た。
エルフが後ろから、機械に対して、何かをしているようだ。
ループしているのか。理解した。
『僕は、エルフに洗脳されていた。幼少の頃からずっと。だから、一度だけしか種を取りに来なかった。逆だ。エルフたちが、タイムマシーンを奪ったから、来れなかった』
「エルフたちは、僕の側で、タイムマシーンが、完成するのを、ずっと待っていたんだ」
『まだまだ仮説の段階だ』
僕は、パチンコをしながら、タイムマシーンの事を考えていた。
雪女が、前原優子の場合は、僕の人生は、30歳の後半から40歳の前半。
前原優子と僕は、同い年だ。
エルフの薬で、若さを保つのなら、子供は授からない。
あの光る指輪、謎だったが。鮮明に思い出している。
エルフの記憶が、僕に、入り込んでいるのか。
そうだな、僕の視点で僕は見れない。
幽体離脱では無い。お前は、あの場にいたエルフだろ。
スマホのアラームが鳴った。
気が付くと、僕の周りにパチンコの玉の山が出来ていた。
「すみません。帰ります。どうしたらいいですか」
僕は、狭い席で、大きく手を振り。助けを求めた。
「兄ちゃん、帰るのけぇ。この台、私が座ってもいいかの」
「良いよ。おばちゃん頑張って」
派手なヒョウ柄のパーマのおばちゃんに、パチンコ玉ごと渡した。
「行くぞ」
独り言のように、声を出した。
パチンコ屋さんで、時間を有意義に使った。
サーモグラフィーで、エルフが付いて来ているかを確認しながら、整形外科医の所へ向かった。
僕の想像を超えて、彼の顔は腫れていた。
スマホを取り出して、防犯カメラの映像を確認しながら、腫れた顔を見ている。
スマホの画面を、並べたり。引いたり。近づけたり。問題ないのか。
カバンから、追加の300万を取り出して。ヤブ医者に渡した。
「お世話になった。明日の朝は、これ以上腫れているのだな」
「はい。これから腫れ上がるのです。答えが出るのは、1週間後です」
「そうか。まぁ、何とかなるだろう。お世話になりました。追加の料金です。急ぎますので、失礼します」
僕は、麻酔の効いている茶髪の彼を車に乗せて、異世界タウンへ向かった。
逸る気持ちを落ち着かせるように、高速道路でも、制限速度ギリギリを守り。
これからの事を、シュミレーションした。
「ゴーティーさん、そっちにフロタカマージパイソンが、そっちに向かったぞ」
「えぇ、こっちも見えてます。そのまま、B地点に追い込みます」
「分かった。こっちも、ジリジリ追い込むとするか」
「それでは、後で」
『パン、パン、パンパン』
「うるさいな。それどころでは無い」
「これは、仕留めないと。村にも被害が出るぞ」
「この大きさは、ヤバそうですね」
影村会長たちは、かなり大きなヘビに夢中で、退避命令を聞いてくれない。
音だけの花火は、何度も上げている。
マロウだって、気付いているはずなのに。
最後の難関が訪れた。
出口の様子が分からない。
こればかりは、出たとこ勝負だ。
僕は、エルグランドに10人の獣人を乗せて、異世界へ跳んだ。
異世界では、貴族たちが交代で、ニュータウンの前を見張っている。
後部座席のドアを開け放ち、左右3人ずつ、計六人で茶髪の彼を担ぎ。残りの2人は、両手を広げるシンガリを任せた。
最初に、僕が車を降りて、入り口で謝罪をした。
「この度は、地球の馬鹿が、申し訳ない事をしました。揺らせない事ですが。明日の朝まで待ってください」
「何を言っている。生優しい問題じゃないぞ」
「今直ぐに出せ。私の剣の錆にしてくれる」
「駄目よ、苦しめて殺さないと。首を跳ねるなんて、優しすぎる」
「それは、そうかも知れません。彼も人の子で、親御さんに挨拶をさせてやりたいだけです。『先立つ不幸を、お許しください』と声を交わすだけです。許していただけませんか。親御さんは、コチラに向かっています。何卒、しばしの時間の猶予を頂きたく思います」
暴動の目は、僕に向いている。
「今だ。行くぞ」
八人はそのまま、ニュータウンの道を走り抜けた。
貴族たちが気付き、暴動のベクトルを茶髪に向いた。
僕は、矢面に立つように、間に入り。
「問題有りません。明日の朝には、彼を皆様の前に差し出しますから。今は、目を瞑って下さい。この通りです」
また、僕は土下座をした。
翌日の昼過ぎ。無も知らない。茶髪の男の首と、ヒツジのスーリピの首が晒されていた。
貴族たちは、首を見て納得し。矛を収めた。
読んでいただき、有難うございます。
高評価、星とブックマークを、宜しくお願いします。




