3Weeksエルフの旅(後)
リトアニアのアルクサンダーは、馬鹿だった。
僕を、騙して、スーリピを羽交い締めにした事が、問題だった。
2週間も音沙汰がなかったのに、一方的に5人の老人を異世界で受け入れて欲しいと、連絡を残してきた。
「急に、異世界へ5人を受け入れろだなんて。審査や重要事項だってあるのですよ。それに、他人に喋るなんて論外です」
「お前は、パスポートが欲しくないのか。俺は、お前の為に動いてやっているのだぞ。それと、エルフを、5人ほどリトアニアに連れて行きたい。可能だよな」
「エルフをですか。何故です」
「リトアニアでも、ハルルベリーの栽培をしていて、そのチームを率いることとなった。ハルルベリーの栽培が、リトアニアで成功したら、ヨーロッパの市場は独占できる。素晴らしいアイディアだろう」
「あのエルフたちを、地球に、連れて行くのは反対します。恐ろしすぎますよ」
「うるさい、これは、決定事項だ。来週、成田にエルフたちを連れてこいよ」
アルクサンダーは、一方的に無茶苦茶な事を言い放った。
『ったく。連絡は、小忠実に入れろったろうが、急にこれかよ』
「また、抽選会をしないといけないじゃないか」
お祖父ちゃん家の留守電には、何も録音されて無かったし。パソコンにも、メールは届いていない。
何かトラブルがあったのか。
次に、トロクセイさんに報告をした。
「トロクセイさんですか。来週の火曜日に、リトアニアから老人5人を、受け入れる事になりましたので、エージェントの人を、数人お願いできますか。お願いします」
こちらは、すぐさま、留守電に報告を入れた。
1週間後、僕は、成田に居た。
抽選で決まった、5人のエルフを連れて。顔や体を、独特のローブに身を包ませて、怪しい宗教団体に見せた。
ここで、5人の人質交換が始まった。
比較的に、平日で客はビジネスマンだらけだと思っていたが、意外と一般人も多く感じた。
トロクセイさんは、任せろと言っていたが、不安が無い理由ではない。
何事もにも、万が一は有る。
僕は、僕のやり方で、演じるだけだった。
「こちらが、北条さん。日本の方で、異世界に扉を開いた人だ」
「おい。声が大きいぞ」
少し焦って、普通に喋っている。
「こちらの5人と、俺の6人で異世界へ渡る。勿論、獣人たちの手配は整えてあるな」
「はい。その点は、抜かり有りません」
「それじゃー。車の方へお願いします」
荷物がやたらと多い。
事前に宅配しろよ。無能共。
「それでは、5人はこちらのエルグランドへ乗ってもらい。1人はタクシーで、お願いします」
当然の事ながら、アルクサンダーが単独でタクシーに乗車した。
今回は、おれ一人だし、軽トラの出動は無い。
お昼に到着の便で、何処で飛んだら良いのかも、把握できていない。
普通に、高速で静岡の田舎へ向かった。
要人の護衛の気配も無く。トロクセイさんたちの姿も見えない。
途中で、タクシーの運転手が、トイレ休憩したいと言うので、SAで休憩する事となった。
要人たちを車に残して、適当に余ったお弁当を買い、車内で食べてもらった。
僕も、いくつかのおにぎりを食べ、お茶で流した。
要人を、移送している緊張は無く。仕事のように割り切っていた。
少し到着が早かった。5時頃に到着して時間を持て余していた。
タクシーの運転手にお金を払い。
ゴチャゴチャとうるさい要人に、愛想を振りまきながら、対応をしていると。2時間経っていた。
エルグランドの運転席に、エルフを一人乗せて、アルクサンダーを、助手席に座らせた。
僕は、軽トラへ乗り込み。異世界へ旅立た。
異世界に到着すると、時間どうりにエルフの団体と、トロクセイさんの仲間が待機していてくれた。
ここで、僕の仕事は終わった。
エルグランドの荷物を下ろすと、荷物全てが、エルフのお土産だった。
「おい。これ、全部リトアニアの土産か」
3週間もの間、光学迷彩を使いながら、アルクサンダーにへばり付いていた、エルフのお土産。
ついでに、アルクサンダーを洗脳して、表に出てこないフィクサーたちを、異世界ホームを餌に、呼び出したのだった。
良くは知らないが、リトアニアの政府の情勢が傾きつつあったので、アルクサンダーの周辺を嗅ぎ回っていたトロクセイさんが、僕の送ったメールに気づいた。
そこで、アルクサンダーを呼び出して欲しいと、助けを求められてきたので、直ぐに応じた。
交換条件は、マユタナさんのパスポートだ。
ラトビアの大使は、二つ返事で答え。1週間後には、ラトビア人として、生活をしている。
年の為に、お祖父ちゃんとの籍も、産婦人科も訪ねては居ない。
異世界に連れてこられた6人は、エルフたちに洗脳されていて、トロクセイさんの仲間が、全ての情報を聞き出している。
これには、バルト三国の命運が関わってくるので、ラトビア政府としては、見過ごせなかった。
それに、大いなる収入もあった。
アルクサンダーの反対派が、エルフの力で、ラボの人々を洗脳して、別のラボへと引き抜いた。
これに、エストニア政府が、便乗した感じで、エルフの3Weekの旅が始まった。
最初に、エストニアのラボで5日働き、1日の休暇を与えて、ラトビアへ移動。
同じように、3週間繰り返して、日本へ帰ってくる旅が始まった。
エルフの給与と、ハルルベリーの売り上げの15%が、お祖父ちゃんの財布に入る手筈になっている。
バルト三国は、地球で始めて、ハルルベリーの量産化に成功した国となり。
ヨーロッパとアラブの人々から、注文を取り付けた。
そして、僕が手にしたのは、大量の武器だった。
僕は、横浜港に居た。
貨物船にエルフを一人忍び込ませて、リトアニアの武器を密輸していた。
ハンドガンから、手榴弾。ロケット砲にマシンガンまで。
総額6億円もの軍の払い下げを、密輸しようとしていた。
「それでは、これから船に乗り込むぞ」
小さな軽トラが、貨物船の中に入っていった。
辺りは照明が落ちて、5分だけカメラの録画も停止された。
軽トラが、船の中へ潜入すると、証明は付き、カメラも戻った。
目的のコンテナだけが、船に残されていた。
僕と西尾さんは、軽トラから降りて、軽トラとコンテナをワイヤーでつないだ。
「「OK」」
僕らは、軽トラに乗り込み。
『ドロン』
異世界のニュータウンの強化が始まった。
問題が起きたのは、少し前だ。ハルルの集落に大量の石が運ばれてきた。
石は、近くの山で採集が可能で、獣人やエルフも駆り出されて、開墾が始まった。
映画館とトイレットペーパーが、貴族たちを呼んでしまった。
読んでいただき、有難うございます。
高評価、星とブックマークを宜しくお願い致します。




