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異世界タウン take2  作者: 愛加 あかり
21/42

休日2

僕は、ヘイリス男爵家へ、ベスパを届けに向かっていた。

ベスパを届けて、少しレクチャーしたら帰るつもりだったのに。



 「お呼びですか、アルクサンダー様」


 「ああ。お前を、味わおうと思ってな」


 「私など、他の獣人の方が良かったのでは、無い……」


 『パチン』

 アルクサンダーが、スーリピの頬を叩いた。

 スーリピは、玄関で倒れて頬を押さえている。


 「お前は、私の言う事だけを聞いていれば良い。北条に、パスポートを渡さないぞ」


 「分かりました、アルクサンダー様」


 アルクサンダーは、僕の目の前で、スーリピを虐め。そのまま、本番を始めた。


 「それでは、アルクサンダーさん。昼過ぎの2時にお迎えに参ります。それでは、失礼いたします」


 僕は、スーリピを生贄にして、アルクサンダーに、パスポートを要求した。


 アルクサンダーは、2時に迎えに行っても中々帰らず。ギリギリの夕方5時前に、軽トラで送り届けた。


 回りの農家は、少し驚き。薄暗かったために、気の所為で片付けられた。


 そこから、大きな駅へ向かい。タクシーに載せた。



 そこから、2週間アルクサンダーからのメールや通話の連絡は無く。

 僕は、ベスパを納品に向かった。


 ご注文通りに、真っ白に塗装をして、フルフェイスのヘルメットには、ヘイリス男爵家の紋章も入れた。


 ヘイリス男爵家の家に着くと。

 早々に、玩具のサッカーボールを取り出して。

 片方に、アイスを入れて。反対側に、牛乳や砂糖などの材料を入れて、準備を整えていた。


 次に、軽トラの荷台に、スロープをかけて。ベスパのロープを解いて行く。


 貧弱な僕だが、ベスパを降ろすくらいわできる。

 慎重に、後方確認をしながら、スロープの板とタイヤを合わせる。


 ブレーキを小まめに入れて、ゆっくりと着地させた。


 「お疲れ。ご苦労、ご苦労。実物は良いな」


 遠くで見ていた、ヘイリス男爵が、バトラーと共に、小さな影が近づいて来て、声をかけた。


 「注文の品をお届けにあがりました。ご確認下さい」


 僕は、安全祈願のキーホルダーが付いた鍵を手渡した。


 「こちらは、何かね」


 「失礼します」


 僕は、ベスパにまたがり、スターターを回した。

 何も起こらない事を証明した後で。


 「先程の鍵を頂けますか」


 僕は、鍵を受け取りながら、鍵穴の場所を教えてると。鍵をそのまま刺して捻った。

 計器類が、反応を示して、スターターでエンジンをかけた。


 一発でかかった事が、嬉しかった。


 「こちらがアクセルで、コチラとコチラがブレーキです」


 一通りのレクチャーをして、ヘイリス男爵にベスパの椅子を明け渡した。


 「危険な乗り物ですので、ヘイリス男爵自ら試して、アンノンお嬢様には、諦めて頂きたく思います」


 ヘイリス男爵もまた、別な事情が有り。


 「それは出来ない相談だ。あと2カ月は、娘の好きにさせるつもりだ」


 ヘイリス男爵は、ゆっくりとベスパを走らせて、家の正面にある噴水の周りを、回り始めた。


 「確かに、これは少々危険かもな。だが、カーネギーよりは、言う事を聞いてくれそうだ」


 「ヘイリス男爵様が、『安全だと認めたで』宜しいですか。認めて頂けないのであれば、そのまま、ベスパは持ち帰らせて頂きます」


 僕は、燃料缶2つに手をかけて尋ねた。


 「こら、ヘイリス男爵様ですぞ。言葉の使い方を学ばないか。アンノンお嬢様が、お怪我をなされたら、お前が悪いのだぞ。責任は御前にある」


 バトラーが、吠えた。


 「僕は、危険だから乗せるなと、言っているのですよ。こんな物を貴族に与えて、お咎めがあるのなら、最初から与えない方が良いに決まっている」


 僕は、貴族の階級など知らない。与えて不利になるなら、与えない方が良いと考えている。


 「よい、よい、爺の気持ちも分かる。だが、これも、危険な乗り物だと知ってしまった。アンノンには、きつく忠告をするつもりだ。っで、これは、金貨3枚で足りるか」


 ヘイリス男爵は、馬1頭の値段を提示している。


 「申し訳有りません。その5倍は頂きたく思います」


 「何ですと。金貨15枚など嘘です。あの者は、平民だったではないか。なのに、金貨15枚の物を手にしているなど、有りえませぬ。突き返して下さい」


 バトラーは、僕を嘘つき呼ばわりした。


 「爺、黙れ。アンノンの機嫌を損ねたら、それこそ、本末転倒だぞ。わきまえろ」


 「今は、金貨3枚しか余裕が無い。2ヶ月だけ、ベスパをお借りできないだろうか」


 怪しいな。ハルルには、大勢の商人が、トイレットペーパーを求めてやって来るのに。なぜ、ヘイリス男爵家には、お金が無い。


 「分かりました。2ヶ月のリースで、金貨3頂きます。宜しいですか」


 「仕方がない。背に腹は代えられない」


 ヘイリス男爵と長男はすぐに出てきて、サッカーボールを渡すと。ボールを追いかけて、遊ぶようになった。


 そこへ、大分着飾ったアンノンお嬢様が現れた。


 頭には、飾りを乗せて。真っ赤なドレスをまとい、胸と背中はギリギリまで空いていた。

 履きなれないのか、侍女の肩を借りて。ゆっくりと歩き出そうとしている。


 「お待ち下さい。そのような格好では、バイクに乗せられません。こちらの洋服に着替えてもらうか。この話は、無かった事にして下さい」


 僕は、前もって準備していた服を渡した。

 中古のライダースーツに、適当なブーツ2足、最後に、特服を準備した。


 超ロングの特服の袖に、アンノン・ヘイリスと刺繍を入れて。背中にもゴールドでヘイリス男爵家の紋章を入れた。 


 ロングの特服は、『ワンピースにも、見えなくは無い』と、思い。実行した。


 膝当てと、肘当ても渡し。フルフェイスで締めた。


 袖の名前でしか判断ができない、バカなヤンキーを異世界で作り出した。


 僕は、荷物を渡して、ライダースーツの着方から説明をした。


 僕らは、アンノンお嬢様が、着替えをしている間に、軽トラの助手席からコーンを取り出して。

 噴水の前にある、日陰の階段でアイスを食べた。


 これには、皆が感動していた。

 爺さんでさえ、褒めていて。この日の為に生きていたと、語りそうだった。



 それは、静かに現れた。


 真っ白いコーデのお嬢様か。

 侍女が側にいる事で、分かった。


 フルフェイスのバイザーを開けて、視界が狭い中侍女に連れ添われて現れた。



 『コレで宜しいかしら』


 皆が、振り返り。

 距離が離れている事と、フルフェイスの為、上手く聞き取れていない。


 金属バットか、木刀を持たせたい。今は亡き、ヤンキー。赤いタスキを、足すのを忘れてしまったと後悔した。


 「何だこれは、糸でヘイリス男爵家の紋章を縫ったのか。手が込んでいるな」


 「頭にも、有りますぞ」

 「お姉様なのですか」


 悪ふざけが過ぎた作品だが。感動された。


 「文句が無いなら。僕は、それではコレで、失礼いたします」



 「何故だ。そなたが、ベスパの乗り方を教えるのであろう」


 「それは、出来かねます。貴族の女性に触れるなど、僕には出来ません。それに、レクチャーなら、ヘイリス男爵にお教えしましたので、そちらから学んで下さい」


 「お父様は、お母様に呼ばれているはずです。急ぎここを離れると思います」



 「おっ。そうじゃった、アレが読んでおった。爺、ついて参れ」


 「旦那様、宜しいのでありますか。どこの馬の骨とも知れない奴を、この用に扱われて。ヘイリス男爵の……」


 「くどい。行くぞ、爺」


 長男は、サッカーボールを手に、バイバイと言って、父親と共に消えた。



 「何をしているのです。私にベスパの乗り方をレクチャーしなさい」


 一通りの動作を教えて、ゆっくりと走らせる。

 急ブレーキをさせて、バイクの恐ろしさを教えたつもりだったが。

 吊り橋効果につながった。


 違う。バイザー越しに見つめる目は、最初と何ら変わらない。


 ヘイリス男爵と同じように、噴水の周りを、回っていると。慣れてきたのか。


 アンノンお嬢様は、体をシートの前に移動をさせて、後ろのシートを叩いた。


 「早くして下さい。誰かに見られてしまいます」


 僕は、辺りを見渡した。

 侍女一人しか見当たらないし。その侍女も、深く頭を下げている。


 「何の真似ですか。僕を殺す気ですか」


 「ですから。少しだけ。噴水を一廻りするだけでよろしいのです」


 辺りに、誰もいないのは帰任取れたが、建物の上を見上げると、2階に、ヘイリス男爵とバトラーの姿を見つけ。3階にはヘイリス夫人の姿が有った。


 僕が、助けを求めるように、両手を広げると。

 3人は、姿を隠した。


 『僕は、死なない。そう、彼女が教えてくれた。彼女に会うまでは、死なない』


 僕は、そう思い。ベスパの後ろにまたがり。なるべく触れないように努めてた。


 噴水一周の思いで胸に、アンノンお嬢様は、結婚に向けて、忙しい日々を送った。



 僕が、ベスパを回収に向かった時に、アンノンお嬢様が、シナハーバー子爵の元に嫁いだ事を、バトラーが教えてくれた。

 

読んでいただき、有難うございます。

長々となってしまい、申し訳有りません。

高評価、星とブックマークを宜しくお願いします。

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