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異世界タウン take2  作者: 愛加 あかり
17/42

休日

直孝は、やり過ぎて、貴族を呼んでしまった。

ヘイリス男爵は、特別なものを注文してお帰りになった。




 「直孝さん、問題が発生した。急いで映画館に戻ってくれ」


 僕のトランシーバーに、グターニから連絡を受けた。


 「グターニさん、何があったの」


 「何もありませんが、これから起こります。ヘイリス男爵のバトラーが来てまして。ヘイリス男爵が、こちらに向かった来ています。どうしますか」


 「分かりました。直ぐに、戻ります」


 僕は、畑の主に相談をして。トラクターの仕事を明日にしてもらい。

 トラクターのギアを変えて。スパーチャージャーをオンにした。


 『キュィーン』

 ※インターセプターでもWILD・Sでもではない。


 僕は、急いで映画館へと戻った。

 トラクターを、映画館の正面へ止めて。中で、グターニさんとヘイリス男爵のバトラーと話している最中に、ヘイリス男爵の馬車が到着した。


 「表のアレを、移動させてもらえませんか」


 御者が、トラクターを退かすように、求めてきた。


 「貴族って、事前に連絡してこないのですか」

 僕は、ホール中に聞こえるように、叫んだ。


 「申し訳ありません。庶民が貴族に合わすのが、世の常ですから」

 バトラーが、ぼそっと呟いた。


 僕が、御者と一緒に玄関を抜けると。ヘイリス男爵と思われる方が、馬車の窓から顔を出して抗議している。


 「早く、馬を連れてきて、それを退かせ。私を、どれだけ待たせる。歩かせるつもりか。赤いカーペットも、用意しろ。これだから、庶民は」


 御者が、乗車すると。ヘイリス男爵も、顔を車内へ入れて。静かになった。


 僕は、トラクターを動かして、適当に止めると。驚かれた。

 「ウマ無しで、どうやって動いている」

 「うるさくて、変な匂いもします」

 「馬より速い訳なかろう」


 僕が、トラクターを片付けて、映画館のドアを開けて待っていると。


 「アレは何だ。ウマ無しで、走るのか」


 「はい。馬力が違います」


 「あれで、馬車を引いたら、どうなると思う」


 「全力出したら、馬車の車輪や本体が、壊れます。確実に」


 直孝は、普通に会話をしている。

 内申、怒っているが。押さえている。


 「しばらく、こちらでお待ち願えますか」


 適当に作った木製ベンチに、貴族の家族四人を案内した。


 コーヒー3つと、オレンジジュースを2つ出して、次の作品のチラシを4枚渡した。

 ヘイリス男爵、夫人と娘と幼い息子。バトラーに渡した。


 「私を誰だと思っている、ヘイリス男爵だぞ。ここの領主だぞ。何故、私を待たせる」


 「もう、まもなく、上映作品が終わりますので、しばらくお待ち下さい。でないと、ここで暴動が起こります。チラシを読んで、お待ち下さい」


 貴族の男爵を、完全に下に見ていた。


 紙が、貴重な時代に、カラー印刷された物を4部渡して。寸分の狂いもない、チラシに驚かれている。


 貴族たちが、チラシを夢中で読んでいると。

 上映が終わった。


 次々に、感想を述べながら、出てくる観客。

 売店に、長蛇の列が出来。トイレも込み合っている。


 『ゴホン』

 バトラーが、咳払いをした。


 一斉にバトラーを見た後、貴族の存在を知った。


 ヘイリス男爵も、自分の存在感の無さに、驚きを隠せていない。


 皆が、膝をついている中、僕は掃除スタッフと一緒に、僕が寝起きに使っているソファーを、移動させた。

 適当にパイプ椅子を退かして、真ん中辺りに、スペースを作った。


 貴族を席に案内すると、外で騒ぎが起こった。


 「連続で見る予定だったから、席に帽子を置いてきた」

 皆、連続で見る予定で、チケットも、購入されていた。


 「皆さんで、ご視聴したらいかがですか」

 これは、僕だけの意見だった。


 「貴族たちと、一緒になんて見れない」

 「席の私物を、取りに行きたい」

 「ビールのサービスをしろ」


 様々な答えが返ってきて。


 「お手数ですが、一度、先ほどのベンチへ出てもらえますか」


 ヘイリス男爵たちを、劇場から出して。荷物を取らせた。


 皆、一斉に荷物を取り。掃除を済ませて。

 確認の後、再び、ヘイリス男爵を劇場へ招いた。


 一つの問題が解決して、上映を開始した。


 今度は、チケットを買った方と、連続で見ようとした方々だ。


 ビールや飲み物、スナック。次回のチケットなどを配り、赤字となった。


 ※110円のレンタルで、赤字とは。


 今、上映中のラブロマンスは、人気作でレンタルでは無く、DVDを常備してある作品だ。


 1時間に渡り対応して、今は静粛が怖い。

 嵐の前の静けさ、何事も無ければ良いのだが。


 上映が終わり、5人が出てきた。


 「面白かった」

 「あの後は、どうなるのです」

 「女王と庶民の恋など、あり得ない」

 長男は、バトラーの背中で寝ている。


 「あの庶民が、乗っていた乗り物は何」

 ツンデレのアンノンが聞いた。


 「確か、ベスパと言う名のバイクです」


 「お父様、私アレが欲しい」


 「君、アレを一つ所望したい」


 「アレって、ベスパですか。かなり値が張りますし、維持費も大変です。何より、危険な乗り物です。お嬢様に、もしもの事が有れば、責任を取れません。却下すべきです」


 「値段など問題ない。彼は、庶民なんだろ。庶民が買えて、貴族の私が、買えないはず無いだろ。あの姫様は、直ぐに、乗りこなしているように思えたが、気の所為か」


 「バイクを乗るのに、それなりの許可証がいります。この国では、必要ありませんが、それなりの訓練は必要です。先程も、伝えましたが。アレは、馬より速く走ります、かなり危険だと思います。危険は、避けるべきです」


 「危険ですって、アレは諦めなさい。アンノン」


 「大丈夫ですわ、お母様。じゃじゃ馬のカーネギーを、乗りこなしたのよ。私は」


 「カーネギーは、お父様と相性が悪かっただけです。ねぇ」


 「どうだったかな。取り敢えず、アレを1つ頼む。アンノンに乗せるかどうかは、その後で決める。頼んだぞ」


 「責任は、取りませんが。商品は届き次第、お渡しします。お色は、どうしますか」


 「白ぽく見えましたが」


 「白ぽく見えましたが、薄いグリーンです。グリーンでよろしいですか、赤でも、青でもピンクでも白も可能です」


 「では、白で」


 「分かりました、白ですね。塗装しだいお届けにあがります」


 ヘイリス男爵家族は、ベスパを注文して。馬車に乗り込み、帰路についた。



 「アンノン。貴女は、シナハーバー子爵に嫁ぐのですよ。わかってますか」


 「分かっています。ヘイリス男爵家の名誉のために、ナヤット・シナハーバー様の側室に努めます」


 「分かっていれば、良いのです。庶民などと」


 僕は、翌日に休日を取った。

読んでいただき、有難うございます。

高評価、星とブックマークを宜しくお願いします。

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