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異世界タウン take2  作者: 愛加 あかり
14/42

運転免許証

権蔵爺さんが、元に戻った。

お祖母ちゃんのお墓に線香を立てて、お祖父ちゃんは、お祖母ちゃんと別れを済ませた。




 「直孝、JAに行くぞ。マユタナさんの畑に使う鶏糞と牛糞が必要だ。車を出せ」


 「ごめん、お祖父ちゃん。今、向こうは夜中で。夕方にならないと、向こうには行けないんだ」


 お祖父ちゃんに、昼夜逆転の説明してなかった。


 「もう少しバイトしてて。ここが、終わったら、バイト変わるから」


 僕は、トラクターのギアを変えて、スピードを上げて。

 お祖父ちゃんは、渋々うなだれながら、映画館へと戻った。


 あっという間の一年だ。


 今では、お祖父ちゃんの貯金を戻し。プラスも出ている。順調、順調。

 怖いくらい、事が運んでいる。


 発泡酒を販売して、ビールの売り上げが落ち。

 ビールの値段を、少しづつ下げている。


 それよりも、トイレットペーパーが、大量に売れる。

 週2で、40fのコンテナ分を仕入れているが。

 商人たちが、馬車3台で来て。奪い合いをしながら消える。

 香り付きは、争奪戦になる。

 ほんの一部が、柔らかさを求めて。

 更にマイナーな、キャラクター物を欲しがる客もいる。


 比率は9∶07∶03ってな、ぐわいだ。

 圧倒的に、香り付きが選ばれる。

 そして、何故か領主の元に大量に流れる。

 貴族は、垂れ流さないはずだったのに。


 トイレットペーパー12ロールが、銀貨1枚で売れて。

 ヘイリス男爵領を抜けると、6ロールが、銀貨一枚になり。更に、辺境伯領を抜けると、2ロールで銀貨一枚になる。


 その向こうは、1ロール幾らの世界線だ。

 検問や関税も、発泡酒が有れば、列の先頭に回れて、融通も効くらしい。


 ビールが失くなる度に、『無益の書』が増えて。

 現在、71冊を保有している。


 「お祖父ちゃん、畑仕事終わったから。夕方まで寝てていいよ」


 時計は、12時前を指していた。

 カップ麺と、オニギリを取り出して。売店を見ながら、昼食を取った。


 「何が、足りない気がする。何だ」


 売店はある、トイレも綺麗。パイプ椅子なのは、申し訳ないが、不満は聞こえて来ない。


 「パンフレットだ」


 チラシ、パンフレット、グッズ。等身大パネルに、次回予告の広告。


 色々と忘れている。

 地球に戻ったら、色々と古い映画のチラシとか調べてみよう。たくさん購入できるかもしれない。


 「あっ。カラーコピー機を買わないと」

 直孝は、チラシを両面コピーするつもりだ。


 グッズな。やたら、変身する小物が、売れるんだよ。衣装も。

 Tシャツ類も、漁ってみようかな。


 直孝が、昼食を取りながら、白昼夢を見ていると。上映が終わり、観客が中から出てきた。


 トイレへ駆け込む者と、売店に来る者に分かれる。

 目当ては、サツマイモだ。

 ホクホクの焼き芋を買うのは、帰るお客さんで。

 飲み物を買う人は、次の上映を待つお客さんだ。


 中の清掃は、獣人たちにお願いして。

 映画の切り替えは、売店の中で出来るようにしている。


 「ソーセージパンを2つ下さい」

 「こっちも、ソーセージパン」

 「焼き芋を、3つ持ち帰りで」


 ※ホットドッグと、呼んではいけない。


 10分の予定が、4分も延長してスタートした。

 僕は、5時まで仕事をこなし。ラグマべと、仕事を交代した。

 ラグマべは、ハルルの住人で。商人の経験もあり、計算もできる。

 レジを任せられる人間だ。


 僕は、お祖父ちゃんを迎えに、異世界の家へと向かった。


 「お祖父ちゃん、地球へ行くよ。準備して」


 直孝は、地球の服に着替えて、お祖父ちゃんの準備を手伝った。


 「なぁ、直孝。儂は、どのくらい、お前に迷惑をかけた」


 「僕は、迷惑だなんて、思ってないよ。僕の方が、いっぱい迷惑かけたから。恩返しが出来て、嬉しいんだ」


 「ありがとう」


 お祖父ちゃんは、着替えながら泣いていた。


 2人が、軽トラに乗り込むと。直ぐに転移して。

 お祖父ちゃんの畑に着いた。


 まだ、薄暗く。お祖父ちゃんは、エンジンをかけたまま、軽トラから降りた。


 お祖父ちゃんの畑は、無尽蔵に雑草が生え、細い木が伸びようとしている。


 違った。ショットコーンの茎だ。


 そう思った瞬間。コーンの皮が剥けて、中の種が弾けた。

 物凄い勢いで、種が飛び出している。


 何故だ。ショットコーンなんて、植えた記憶も、捨てた記憶も無いぞ。


 ある仮説が浮かんだ。

 T-Rexだ。お腹はグチャグチャにしたが、コーンを食べた奴を、食したのかもしれない。


 コーンの種は、最後まで残るからな。

 T-Rexの栄養で延びたのかもしれない。


 待て、隣の畑にも、ショットコーンの実がなっているぞ。

 ハルルベリーの会社の売り上げが落ちてしまう。


 ショットコーンは、静岡の田舎で栽培され始めた。


 「直孝、お祖母ちゃんの墓へ行きたい」


 僕は、泣くお祖父ちゃんと、運転を交代して。お墓まで走らせた。


 ダッシュボードから、お線香とライターを取り出して。お祖母ちゃんのお墓に供えた。


 「すまん。時間かかってしまった」


 お祖父ちゃんは、お祖母ちゃんのお墓に、深く頭を下げた。


 僕は、本当に戻ってきたのだと信じた。


 しばらく、実家で仮眠を取り。

 『リアル過ぎる』のメンバーを励まして。


 助手席に乗り込んだ。


 「何やってんだ、直孝。久しぶりの公道は、少し自信がない。お前が運転しろ」


 「やだよ。お祖父ちゃんがしてよ。交番の前通るし」


 「何で」


 「免許、持ってないもん」


 「お前。二十歳にもなって、免許持ってないのか。静岡で生きていけんぞ」


 「だから、全てネットで購入している」


 「今の若い者は、全てネットで買い物するのか」


 「便利だよ」


 「根本的に間違っている。18になったら、免許を取る。お前は、頭は良いんだから、大型免許も、特殊もついでに取ってこい」


 「18の時、そんな事一言も出ませんでしたけど」


 「ばぁーさんに、止められたんだよ」


 軽トラの中が静まり返った。


 「儂が運転する。馬鹿たれ、泣くな」


 お祖母ちゃんの優しさが、僕の心を締め付けた。

 お祖父ちゃんは、JAへ行かず。教習所の駐車場に車を止めた。


 「嫌だよ。ヤンキーがいっぱいるから、ヤダ。降りない」


 お祖父ちゃんがまともになり。直孝も、昔に戻った。


 「いいから、行くぞ」


 お祖父ちゃんが、僕の袖を引っ張って、教習所の門をくぐった。


 まだ4月だが、バイクに乗るヤンキーはいる。

 そこで、直孝は、不思議な光景を目にした。


 「何度も、言っているだろう。後方確認が、抜けているんだよ。こんなんじゃ、印鑑は押せない。来週、もう1回やるぞ」


 僕よりも、差が低く、ハゲ散らかしたオジサンが、バインダーでヤンキーの頭を、何度も叩いている。


 「先生、頼むよ。このままだと、ゴールデンウイークまでに、免許取れないよ。ツーリングする予定だから」


 「後方確認もできない奴が、公道を走るな。安全に走っている方が迷惑する」


 教官は、強気の姿勢を見せていた。

 それが、なんだか、かっこよく見えた。


 僕は、異世界の仕事をこなしながら、半年間、教習所似通い。

 普通自動車、大型自動車、特殊自動車の免許を習得した。

読んでいただき、有難うございます。

高評価と星とブックマークを宜しくお願いします。

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