モギリのお祖父ちゃん
エルフを、多く集めた。
ハルルベリーを、量産するためだ。
日本で、ハルルベリーを求める声が上がっている。
開館式を実行した。
村中の人を集めて、2部構成で試写会を行った。
最初に、喜劇王の作品を観てもらい。
山神様が出てくるアニメで締めた。
喜怒哀楽は、異世界でも共通している。
最初に電源を落として、真っ暗にした時は、流石に驚かれたが。
上映が始まると、皆食い入るように見ていた。
立ち上がる者や、騒ぐ者も少なく。お互いを、注意しながら見ていた。
問題はそこじゃない。
立ち見客の方だ。
本日は、指定席だから、皆席は決まっている。獣人たちにも、遠慮してもらっていたが。
サーモグラフィーで、20人近くのエルフを見つけた。
肉眼では見つける事が出来なかったが。
赤外線でも、確認することが分かり、お店にある対人センサーでも反応する。
「タダ見は、犯罪ですよ。こちらは見えてますから」
『ざわざわ』
僕は、サーモグラフィーの画面を、相手に見せながら近づいた。
1人が光学迷彩を解くと、全てのエルフが姿を見せ、ペナルティを加す事にした。
見つけたエルフは、ハルル農園で仕事をしてもらった。
「はい。映画をタダで観たのですから、働いて返してください」
『ざわざわ』
「何故、私たちのことが見える」
エルフの1人が訪ねた。
「きっちり仕事をこなし、暗くなったら、お教えしますよ」
エルフ達は、魔力を込めて、ハルルベリーの木を成長させていた。
「はい、お疲れ様でした。皆さん、1列にお並びください」
直孝は、エルフ達に給金を渡して、鼻の利く獣人が、セットを渡した。
エルフ達は、皆中性的な顔をしていて、男女のスタイルも同じ、服にも個性が無い。
少し違うのだろうが、遠回りをして2回並び、給金を2人分取るやつが出てきた。
僕は、その対策として、鼻の効く獣人を雇った。
次は、給金の時間に、森から出てくる奴等が出てきた。
いたちごっこだが、ハルルベリーの果樹園を編みで囲い。
柵の先は、有刺鉄線を螺旋状にして広げた。
そして、辺りは暗くなり、タネ明かしをした。
直孝は、スマホを取り出して、カメラモードにした。
「このスマホを、アソコのカメラに向けると赤外線が点灯しているのが分かるな」
エルフ達は、スマホの小さな画面を、食い入るように見ている。
直孝が、赤外線に触れると。対人センサーが反応して、照明器具が、眩い光を放った。
これが、光学迷彩の魔法でも、反応した理由だ。
エルフ達は、半信半疑だが、見えない赤外線がある事を理解した。
それでも、センサーを探しながら、タダ見を志す者もいる。
エルフ達は、なぜ映画館で盗み見している事が、バレたのか知らず。罪を重ねるものが増えた。
小さなセンサーを、探し出す事は不可能に近い。
最終的には、46人のエルフを捕まえ。
ハルルの人々は、こんなに入り込んでいた事に驚いていた。
ハルルベリーの生産が上がり。
週に30コの生産が可能になり、レストランだけでは捌ききれないと言われ。
静岡の田舎で、10コほどから、ハルルベリーの出荷を始めた。
お祖父ちゃんの農業従事者の名で、会社を設立して、 ハルルベリーの国内販売から始めた。
映画のチケットと発泡酒と裂きイカのセットと、銀貨6枚で、エルフの日当を支払った。
犯罪者は日当だけで。裂きイカのセットは出ない。
ハルルベリーの単価は、一つ5万円で。ネットのみの販売だ。
火曜と金曜の週2回の14∶00スタートして、5コのハルルベリーは、秒で売り切れになる。
政界、財界、芸能界、多種多様な人々が、ハルルベリーを求めた。
自称グルメ、星付きシェフ、農林水産省、JA、農業大学、企業研究所……。
多くの方が、火曜と金曜の午後2時は、パソコンやスマホの前で待機した。
転売ヤーは、必死になった。
誰がも欲しがり。20万で取引された事例もある。
二つ星のシェフのマネをして、ソースを作る動画を回したり。
「ここで、いったん中火に戻して、1摘みの塩を加えます」
豪快に、半分に切り。シャンパンを、種の部分に並々と注ぎ、大きなスプーンでくり抜いて食べる動画もバズった。
「来ました、来ました、頑張って5万円でGetしました。本日は、これを食します」
転売ヤーが、出てくるので。
偽物を、販売するものも出てくる。
「何だよ、サンプルじゃねーか。訴えてやる」
「りんごジャムって、舐めてるのか」
「俺の10万返せ」
「10年目のアニバーサリーなんだぞ、ど〜すんだよ」
直孝は、そんな方々を助けるために、ハルルベリーの苗を販売した。1つ10万円で。
これには、世界が飛び付こうとしていた。
検疫、関税、その他諸々が関わり。
輸出は、3カ月待ちとなった。
僕が、忙しくしている時に。
『お祖父ちゃんが、正常に戻った』
それは、突然だった。
僕は、トラクターに乗り、ハルルの畑を耕したいたのだが。
ツーバルが、お祖父ちゃんを連れてきた。
モギリの仕事をしている時間だが、映画館を抜けて外へ出てきた。
それを、ツーバルがたまたま見つけて、ここへ連れてきた。
『無益の書』を所持しておらず。
会話も出来ていない。
「直孝、ここは何処じゃ。マユタナさんの畑が大変らしい」
直孝は、涙を流して喜んだ。
約1年ぶりに、名前を呼んでもらった。
ヘルパーさんで無く。直孝と聞いた。
「直孝、儂等の家はどこじゃ。ここで何してる」
直孝は、トラクターのエンジンを切り。トラクターから降りて、お祖父ちゃんに抱きついた。
「お祖父ちゃん、お帰り」
「何だ、何が有った。直孝、儂に何が有った」
僕は、お祖母ちゃんのたえが、亡くなったことを伝え。
そこから、お祖父ちゃんが、おかしくなった事を、事細かく教えた。
お母さんが、ホームに入れようとした事。
タイムマシーンの失敗。
映画館の設立。異世界の家。
ツーバルさんとの出会い、村長さん家で宴会。
お祖父ちゃんを元に戻したのは、僕では無い事。
マユタナさんの存在。
悔しいが、お祖父ちゃんが、マユタナさんに恋をした。
マユタナさんは、戦争未亡人の1人で、旦那さんと息子を、10以上前の戦争で亡くしている。
異世界の成人は、15歳で。
マユタナさんの最初の結婚は、15歳の頃で出来ちゃった婚らしい。
当時の成人だと、珍しくもない話だという。
順風満帆に暮らしていたが、戦争が始まり。旦那と子供を戦場に取られた。
僕らが暮らしている家は、マユタナさんが住んでいた家で。
マユタナさんは、ツーバルさんの義妹に当たる。
最近のお祖父ちゃんは、マユタナさんに甘く。
「大丈夫、大丈夫。持って行って」
マユタナさんが、映画館に来る度に、コーヒーと軽食を与えて。
帰る時は、発泡酒出はなく、ビールを2缶手渡している。
マユタナさんは、まだ40代前半らしく。
僕の母より若い。
読んでいただき有難うございます。
お祖父ちゃんが、まともに戻りました。
星とブックマークを宜しくお願いします。




