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異世界タウン take2  作者: 愛加 あかり
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不思議な出会い

北条直孝は、受験日の深夜に不思議な体験をする。

雪女と出会い、熱に侵されての受験戦争を迎えた。

頭は重く。体はダルい。終いには、関節痛も起こしている。



 僕の名は、北条直孝。


 16歳にして引籠り。広いネットの海に溺れて、自室の6畳間で、1日を過ごしていた。


 高校の受験に失敗して、今年の受験も受けずにいると。


 「お兄ちゃんが、今年受験だから。直孝は、静岡のお祖父ちゃん所で、休養しましょうね」


 母親は、僕を腫れ物のように扱っている。

 祖父や祖母が嫌いな訳では無い。

 家から出るのが怖いんだ。



 僕は、受験日の深夜に不思議な体験をした。


 前日の夜は、22時に自室へと入り。23時には、就寝していたと思う。

 自分で言うのもなんだが、寝付きは良い方だと思っている。


 母親も、翌朝の弁当の準備を済ませて、早めに就寝し。兄は、恋人とグループチャットを行い。父親は、単身赴任で福岡で仕事をこなしている。


 深夜の2時頃だろうか、マンションの四角に、頭までマントで隠した者達が、不思議な呪文を唱えると。

 外の雑音は消えて、マンションの住人達は深い眠りへと誘われた。


 真っ白い着物を着た女性だけが、マンションの中へと進み。

 オートロックを、カードで解除して。正面のエレベーターへ乗り込んだ。

 エレベーターは、ゆっくりと進み。着物の女性は、逸る気持ちを抑えつつ、5階で扉が開いた。

 女性は、何度かこの部屋を訪れているが。この時間に訪れるのは初めてだった。


 スペアキーで、玄関を開け。

 真っ直ぐ、僕の部屋へと向かった。


 女性は、ノックをするか。躊躇をした。

 握った左手を右手で包むように、胸の辺りで合わせて。意を決して、僕の部屋へ乗り込んだ。


 『カチャ』


 ゆっくりとドアが開き。

 廊下の間接照明が、直孝の部屋を照らした。


 『可愛い』と、僕を見下ろし。暖房のスイッチを切り、コンセントを抜いて、ドアを閉めた。


 女性は、着物の袖からハンカチを取り出して、左手に広げた。

 ハンカチの中には、宝石の付いていないリングが有り。


 女性が触ると、微かに青白く光を放ち。

 女性は、リングを取り。左手の薬指にはめた。


 雪女は、直孝の部屋に冷気を放ち。

 霜を走らせ、外の温度より気温を下げた。


 直孝の部屋は、隙間なく密閉されて。氷の層ができている感じで、音が反響している。


 「直孝起きて」


 雪女は、僕のベットの横で膝をつき。優しくキスをした。



 流石の鈍感な僕でも、それには気づいた。

 慌てた僕は、壁に背を向けて、後頭部を強打した。


 「誰ですか」


 これが僕の不思議な体験だ。


 「名前は言えません。ですが、知っているはずです。私は、雪女」


 雪女は、スッと立ち上がると。着物の帯を回し、解き始めた。

 慣れているのか、着物は肩からストンと落とし。雪女は、高価そうな着物を拾い上げて、ハンガーラックの上に広げた。


 「何をなさるのですか」


 中学生の僕は、固唾を飲み込み。

 スルスルと解ける着物に、釘付けになっていた。


 雪女は、襦袢の外帯も解き。襦袢の前が、自然と開けた。


 「直孝の子種を、直接頂きに来ました」


 微かな指輪の光が、 襦袢の袖を通り。一糸纏わぬ雪女が現れた。


 雪女は、指輪を外し。僕の布団に潜り込むと。


 「お任せ下さい。直孝の事は、全て知り尽くしています」


 雪女は、もう一度僕にキスをして。


 「これからの直孝は、ひどく苦しみますが。これは、私達が出会う為です。そして、初めてを奪ったのは、羊では有りません。夢々、忘れないように」


 カーテンの隙間から入る月光と、暗闇に慣れた目は、雪女がムチムチの熟女だと確認した。



 僕は、夢と現実の狭間で、目を覚ました。


 頭は重く、体はダルく、関節が痛む。


 『ヤバい。風邪をひいた』


 僕は、壁伝いに部屋を出て。トイレでは無く、リビングへと向かった。


 長いテレビ台の引き出しを開けて、体温計を取り出した。

 几帳面な母が、整理してくれて助かったが。

 僕のお弁当を作っている母からは、僕の行動は丸見えだった。


 「えっ。こんな時に、風邪ひいたの」


 母は、卵焼きの火を消して。一度、水道で手を洗い、エプロンの裾で、手を拭きながら近寄ってきた。


 僕の脇に挟んだ体温計は、タイミングが悪く。母が、近づいたと同時に鳴った。


 『ピピッ、ピピッ』


 「大丈夫だよ。少しダルいだけだから」


 僕の男としての部分が、弱音を拒否した。

 ここで、弱音を吐くと。未来永劫、『高校の受験日に』とか、言われかねない。


 「本当に大丈夫なの」


 直ぐに、体温計を確認しない僕に、疑いを向けて。右手の甲を、ゆっくりと近づけて。僕のおでこに当てた。


 「大分、熱いわよ。大丈夫なの」


 母は、自分のオデコにも左手を当てて体温を確認した。


 僕は、冷たくて気持ちのいい母の手を、払い除けて。


 「大丈夫だよ。このくらい」


 急いで体温計を取り出して、確認した。


 『38.4℃』


 頭が重たい気がするが。液晶画面を確認した後。直ぐに、リセットボタンを押した。


 「全然37.5℃は、微熱だよ。それよりも、顔洗ってくる」


 ゆっくりでいい。慌てずに、『平常心。平常心』と、心で呟きながら、洗面所へと向かった。


 冷たい水が気持ち良く。顔を洗った後で、体温計の横に有った、ジェルのシートをオデコに貼った。


 直孝は、自室へ戻ると、部屋の匂いに気付く。

 何の匂いかは不明だが、良い匂いがした。


 僕は、疚しい気持ちになり。窓を開けた。

 冷たい風が、顔に当たり、全身に鳥肌が駆け巡った。


 「寒い」


 窓のサッシには、大量の水が溜まっていて。部屋の隅には、小さな水の玉が、気化できずにいた。


 今の僕は、気付く事が出来ず。時間と気怠さに、押し潰されている。


 少しの朝食と、ゼリーを体に入れて。予備のゼリーや固形物も、カバンにしまい。


 母が運転する車の助手席に座った。


 「こんな事になるなら、少し遠くても。神奈川工科大学付属の工業高校に、推薦入学してたら良かったね」


 今、一番聴きたくない一言を聞いた。

 工科大学付属の工業高校への推薦は、可能だったが。

 家の近くにも、川崎工業高校第二が有る。


 家の近くだったから、川崎工業高校第二を選んだ。

 高校では、ロボットの研究チームに入り。プログラムや配線をいじり、熱中するつもりだったから、家は近くの方が良かった。

 少しレベルは落ちるが、僕がリーダーになれば問題ない。


 色々な賞を勝ち取り。東大の工学部へ向かうレールは、完璧だった。


 助手席で、寝たフリしていると。第二工に到着した。


 この時ほど、遠くの学校にしとけば良かったと、後悔して。束の間の休息を終えた。



 「受験票に、筆記用具とお弁当。OK、母さんありがとう」


 力加減が分からず。助手席のドアを思いっきり閉めて、第二工の門をくぐった。



 時間が立つにつれて、焦りと目眩に襲われ。解答欄がズレていたり、計算をミスしたり。回収の時に、慌てて自分の名前と受験番号を書いた。


 散々な初日を終えて。二日目は、問題無く全ての問題を埋め尽くした。



 僕は、大器晩成型なのだ。1年遊ぼうと、問題無いと思っていた。

読んでいただき有難う御座います。

星とブックマークは、励みなりますのでよろしくお願いします。

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