お茶会への招待
「第二皇妃殿下にございます」
「「っ!?」」
そう聞いた瞬間、僕とメルザは息を飲んだ。
ここにきて第二皇妃殿下がお茶会に誘ってきたということは、つまり……。
「……メルザ。大公殿下にお話しして、お断りを入れるようにしましょう」
「ヒュー……ですが、第二皇妃殿下のお茶会を断るのは、お爺様でも難しいのでは……」
確かに……ただの貴族からの誘いであれば、気に入らなければ一蹴できるけど、相手は第二とはいえ皇妃殿下。
理由もないのに断るのは、さすがに無理があるか……。
「……それで、お茶会の日時は?」
「明日、学院が終わった後のようです……」
「そうですか……」
となると、このお茶会はまさにメルザのために開かれるものだということが分かる。
さて……第二皇妃殿下は、他にどのような夫人方や令嬢を呼ばれるのか……。
「ふふ……ヒュー、心配しなくても大丈夫ですよ? ただのお茶会ですし、相手に悪意があれば私にはすぐに分かりますから……」
メルザは僕を安心させようと、そう言ってニコリ、と微笑んだ。
でも、そんなお茶会、僕には到底信用できない。
「……メルザ。でしたら明日のお茶会、僕に会場までエスコートさせていただいてもよろしいですか?」
「あ……ふふ、本当にヒューは心配性ですね。ですが……ありがとうございます」
メルザの白い手が僕の胸にそっと触れる。
エスコートについて了承してくれたようだ。
「ですが、そうなると制服のまま皇宮に行くわけにはいきませんね……」
「ええ……学院が終わり次第、屋敷に戻ってまいりませんと」
それと、ついでに学院で第二皇子に問い質してみるとしよう。
明日は、なかなか慌ただしい一日になりそうだな……。
◇
「え!? そ、そうなのか!?」
次の日。
早速、第二皇子を捕まえてお茶会の件について問い質してみると、第二皇子は驚いた様子を見せた。
どうやら、第二皇子はそのことを知らなかったようだ。
まあ……そもそも第二皇子は寄宿舎住まいなんだし、第二皇妃殿下の動向なんて知る由もない、か……。
「だけど、そうか……」
すると、第二皇子は口元に手を当て、思案し始めた。
何か思い当たることでもあるのだろうか……。
「……私がこんなことを言っても信じてもらえないかもしれないが、母上は決して悪気があるわけではない……あの方に政治的な打算など、できるはずもないのだから……」
第二皇子にしては珍しく、真剣な眼差しで僕を見つめ、そう告げる。
振り返ると、メルザも静かに頷いていた。
つまり、第二皇子の言葉に嘘はない、か……。
「……分かりました。アーネスト殿下のお言葉、信じます」
「! ああ! ありがとう!」
たったそれだけのことなのに、第二皇子は満面の笑みを浮かべる。
僕に信用されたのが、そんなに嬉しいのだろうか……。
「で、では、母上をよろしく頼む!」
「「は、はあ……」」
深々と頭を下げる第二皇子に、僕とメルザは曖昧な返事を返すだけで精一杯だった。
そして、僕達は第二皇子から離れ、自分の席へと戻ると。
「あ、あの……」
Aクラスの令嬢達が、メルザの元へと集まってきた。
「みなさん、どうされたのですか?」
「さ、先程のアーネスト殿下とのお話が聞こえましたものですから……」
そう言うと、令嬢達はお互いの顔を見合わせた後、意を決したように頷く。
「じ、実は、私達も第二皇妃殿下様から、お茶会のお誘いを受けまして……」
「ええ!?」
その言葉に、メルザが驚きの声を上げた。
いや、僕達はてっきりウッドストック大公家の令孫であるメルザを派閥に引き入れるためのものだと思っていたのに、まさか同じクラスの令嬢達までだなんて……。
しかも、どうやら留学してきたばかりのクロエ令嬢を除くクラスの令嬢達全員を誘っているみたいだ。
それこそ、派閥に関係なく。
「……最初、私が何故ご招待いただけたのか不安で仕方なかったのですが、先程の会話を聞いて、実はみなさんが同じだということが分かりまして……」
「そ、そうだったんですね……」
うん……まだ意図は分からないけど、これなら決してメルザだけに何かあるってわけではなさそうだ。
少しだけ、安心した。
「で、では、今日はどうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
令嬢達はどこか安堵した表情を浮かべ、自分達の席に戻っていった。
「お、驚きですね……」
「ええ……ですが、これならメルザに対して変な思惑などもなさそうですし、よかったですね」
そう言って、僕は胸を撫で下ろす。
「でも、そうなりますと今日のお茶会には、ヒューはエスコートする必要もなくなってしまいましたね……」
メルザが少し寂し気な表情を浮かべ、視線を机に落としてしまった。
「? いえ、エスコートはしますが……」
「! ……そうなのですか?」
「はい。たとえ思惑や変な意図がないとしても、何があるか分かりませんし、それに……」
勢い良く顔を上げて僕の顔を覗き込むメルザの、その真紅の瞳を見つめると。
「これは僕の我儘ですけど……その、あなたの傍を離れたくありませんから……」
言ってから恥ずかしくなってしまった僕は、誤魔化すように頭を掻きながら苦笑した。
「ふふ……それは私も同じです……私は、いつでもあなたとこうして一緒にいたいですから……」
メルザはその白い手で僕の手を握ると、頬を赤く染めながら嬉しそうにはにかんだ。
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