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探り合い

「では、四人は引き続き楽しみたまえ」


 そう言い残し、第一皇子と第二皇子はそれぞれ別々に他の貴族の元へ離れて行った。

 もちろん、自分達の派閥のグループへと。


「……あの二人の皇子は、仲が悪いのか?」


 そんな二人の背中を交互に眺めながら、シモン王子が尋ねる。


「いえ……決してそういうわけではありません。何より、僕達のところに二人揃ってやって来たではないですか」


 そう言って、僕は背中に嫌な汗を掻きながら誤魔化した。

 メルザ……お願いだから笑わないでください……。


「その、シモン様はご兄弟がたくさんいらっしゃるとお伺いしましたが、やはり仲はよろしいのでしょうか?」


 苦し紛れに僕はそんなことを尋ねてみる。


 すると。


「……どうなのだろうな」


 そう言って、僅かに顔を歪ませた。

 どうやら、あまり触れてはいけない話題のようだ。


「……ですが、クリフォード殿下もアーネスト殿下も、ヒューゴ様とメルトレーザ様を特に気にかけていらっしゃるようにも見受けられます」


 クロエ令嬢が話題を逸らすように、そんなことを言った。

 あくまでも、皇国の話題に引き戻したいらしい。


「そうでしょうか……」

「それは当然だろう。ヒューゴは次代の大公なのだぞ? しかも、あのウッドストック大公殿下の後継者でもある。ならば、その関係構築に腐心するであろう」


 クロエ令嬢の言葉をわざわざ否定したのに、シモン王子が肯定してしまった。

 できれば、皇国の内情に触れるような話題は避けたいんだけどなあ……。


「は、話は変わりますが、シモン様とクロエ殿は、これからどちらにお住まいになられるのですか?」

「ん? それは学院に併設されている寄宿舎だが……」


 これ以上お互いの国の内情に触れないよう、話題を変えようとしてそう尋ねると、シモン王子は不思議そうな表情で答えた。

 まるで、『何を当たり前のことを聞いているのだ?』と言わんばかりに。


「そ、そうですよね……」

「ああ……なので二人にも、寄宿舎でも仲良くしてもらえると助かる」

「「あ……」」


 シモン王子の言葉に、僕とメルザは声を漏らす。


「じ、実は……僕とメルザは、特別に屋敷から通わせてもらっているのです……」

「そうなのか? 生徒は全員寄宿舎で生活すると聞いたのだが……」

「は、はい。クリフォード殿下もアーネスト殿下も、確かに寄宿舎で生活しておられますし、もちろん他の生徒もなのですが……」


 答えに(きゅう)し、僕は言葉を濁す。


「ふふ……ヒューはお爺様のお手伝いなどがありますので、婚約者の私と共に特例として認めていただいているのです」

「ふむ、なるほど……」


 ふう……メルザの機転で、何とかやり過ごせたぞ……。

 ありがとうございます、メルザ。


 すると。


「む……どうやらダンスタイムのようだな」


 音楽が流れ出し、ホールの中央に男女が集まるのを見てシモン王子が呟いた。


「ならば、メルトレーザ殿。この私と一曲お願いできるか?」


 シモン王子が頭を下げ、右手を差し出す。


「申し訳ございません。ダンスのお相手は、ヒューだけと心に決めておりますので……」

「フフ、そうなのか。ならば仕方ないな」


 メルザがカーテシーをしながら丁重に断ると、シモン王子は苦笑した。


「ならメルザ……ご一緒しても?」

「ふふ、もちろんです」


 (ひざまず)いて手を差し出すと、メルザが嬉しそうに僕の手を取った。


「ふむ……ヒューゴのその申し込み方では、まるでメルトレーザ殿に仕える従者のような振る舞いだな」


 どうやら、僕のメルザへの態度が気になったらしい。

 シモン王子は、顎をさすりながら首を傾げた。


「そのとおりです。何故なら、僕はメルザの騎士でもあるのですから」


 そう……僕は婚約者でもあり、メルザの騎士なんだ。

 それにこんなことを言ってはなんだけど、僕にとってはそれだけ尊い存在だから。


「ヒュー……では、行きましょう」


 僕は、咲き誇るような笑顔を見せたメルザと共にホールの中央へと向かうと。


「ふふ、ヒュー、またダンスが上手になっていませんか?」

「あはは、それはメルザも同じです」


 僕達は微笑み合いながら、ダンスを堪能する。

 それに、僕達のダンスが上手くなったのは、あれから月夜の庭園で一緒に踊るようになったからだからね。


 メルザが華麗にターンを決め、それを僕が支える。


 そして。


 ――パチパチパチパチパチパチ!


 ホール全体から、僕達に向けて拍手が鳴り響いた。

 同じく僕達のダンスを見ていた大公殿下も、満面の笑みで力一杯拍手している。


「ふふ……少しはこれで、お爺様も他の貴族に自慢できたりしますでしょうか?」

「あはは、もちろんです。だって、一緒に踊っている僕が、ずっとあなたに見惚れているくらいですから……」

「ヒュー、それは私の台詞(セリフ)ですよ?」


 そう言うと、僕達はお互いのおでこをこつん、と付けた。

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