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パーティーへの出席

「うわあ……緊張する……」


 普段よりも豪華な服装に着替え、僕は鏡に映る自分の姿を眺めながら唾を飲んだ。


「うふふ! ヒューゴ様、よくお似合いです!」


 そんな僕の着付けを担当したエレンが、同じく鏡を見て絶賛している。

 いや……自分自身では似合っているとは思えないんだけど……。


「これで今日のパーティーは、ヒューゴ様とメルトレーザ様が主役で間違いなしですね!」

「いやいや……今日の主役はあくまでも第一皇子殿下だろうに……」


 そう、今日は第一王子の誕生パーティーが皇宮で行われる。

 それに、僕は大公殿下、メルザと共に出席することになっているのだ。


 大公殿下曰く、僕のウッドストック大公家の後継者としてのお披露目も兼ねているらしい。

 こう言われてしまえば、僕にも断る(すべ)はないわけで……。


「さあ、これでバッチリです! 早くメルトレーザ様にお見せしましょう」

「う、うん……」


 エレンに勧められるまま、僕はメルザの部屋へと向かう。

 うう……メルザ、僕を見て変に思ったりはしないだろうか……。


「メルザ、入ります」


 僕はノックをして扉を開ける……と……。


「あ……ヒュ、ヒュー……」


 メルザの姿を見た瞬間、時が止まってしまった。

 銀色と青色で彩られたドレスを身にまとう彼女の、そのあまりの美しさに……。


「ヒュー……?」

「え……? あ、ああいえ、あなたが美しすぎて、つい見とれてしまいました……」

「あう……そ、それならよかったです……」


 おずおずと不安そうに(のぞ)き込むメルザだったけど、我に返った僕の言葉を聞き、恥ずかしそうに白い肌を赤く染めてはにかんだ。


 ふう……今日のパーティー、絶対にメルザから離れないようにしないと。

 じゃないと、絶対によからぬ輩が彼女にまとわりつくからね……。


「で、ですが、その……ヒューもすごく素敵で……あ、も、もちろん普段のヒューもカッコ良くて素敵なんですが、今日は特に……」

「あ、あはは……ありがとうございます……」


 メルザに褒められ、僕は思わず照れてしまう。

 も、もちろん、僕だってメルザの婚約者なんだから、彼女に恥をかかせるわけにはいかないからね……。


 そうして、僕はメルザとお互いを見ては照れてを繰り返していると。


 ――コン、コン。


「メルトレーザ様、ヒューゴ様、お時間となりました」

「ええ、今行くわ」


 僕達を呼びに来た執事に、メルザがニコリ、と微笑みながら答えた。


「ふふ……ヒュー、では行きましょう」

「ええ」


 メルザの手を取り、僕達は玄関へと向かう。


「はっは! メル、婿殿、待ちくたびれたぞ!」

「お爺様……そんなことを言って、今来たばかりですよね?」

「なんじゃ、バレたか」


 メルザにジト目で睨まれ、大公殿下は肩を竦めておどけてみせた。


「じゃが、何といっても今日は、婿殿のお披露目じゃ。つまり、今日の主役は“クリフォード”殿下ではなく婿殿じゃ!」

「い、いえいえ!? あくまでも本日誕生日であらせられる、第一王子殿下ですから!」


 馬車に乗り込むなり、大公殿下がとんでもないことをおっしゃったので、僕は慌てて否定した。


「何を言っておる。クリフォード殿下からすれば、今日のパーティーなど自分の派閥を拡大し、結束を固める場でしかないわい。もちろん、アーネスト殿下もな」

「そ、それは……」


 確かに大公殿下のおっしゃるとおり、まだ正式に皇太子が決まっていない今、その座をどちらが手に入れるかは、お互いにどれだけ貴族達から支援を受けられるかで決まる。


 このウッドストック大公家は、大公殿下自身が先帝陛下の弟君ということもあり、どちらにも肩入れをしていない。

 なので、あくまでも中立の立場でいる、んだけど……。


「……おそらく、クリフォード殿下もアーネスト殿下も、僕を自分達の派閥に引き入れようとするでしょうね……」


 自分で言っておきながら、僕は肩を落としてしまう。

 絶対に、今日のパーティーは面倒なことになりそう……。


「はっは。じゃが婿殿よ、ということは他の貴族達は、嫌でも婿殿に注目するはずじゃ。ウッドストック大公家の跡取りが、どちらを選ぶのかをな。じゃからこそ、婿殿が今日の主役なのじゃ」

「ああー……」


 そんな主役の座、できれば御免(こうむ)りたい……。


「それと……おそらく、あのグレンヴィル侯爵の小倅(こせがれ)も、オルレアン王国から寝返った貴族を中心に結束を固めるはずじゃ。クーデターに向けて、の……」

「……はい」


 急に真剣な表情になった大公殿下の言葉に、僕はゆっくりと頷く。

 そう……今日は、反皇帝派にとってもクーデターを成功させるための、大事な会合の場なんだ。


「はっは、じゃがそちらは気にせんでもよい。オリバーの奴がしっかり目を光らせておるからの」

「パートランド卿が?」

「うむ。あやつにはパーティーに参加しつつ、現場の警護も担当させておる。本来なら近衛騎士団長がその任にあたるのじゃが、今回は外させた」

「そうなんですね……」


 うん……パートランド卿なら、安心できる。

 その仕事の辣腕(らつわん)ぶりは、この前の遠征でよく分かったからね。


「ということで、メルと婿殿は存分に楽しむがよい」

「「はい」」


 笑顔の大公殿下に、僕とメルザは微笑みながら頷いた。

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