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看破

「行きます!」

「うむ……来い!」


 僕は剣術の授業の免除を賭け、モニカ教授との試合を始めた。


 その直後。


「ふっ!」


 モニカ教授は一気に僕に詰め寄り、懐に入ってくる。

 並の相手なら、(まばた)きしている間にも命を落としているだろう。


 だけど……僕に対してそれは、悪手ですよ。


「っ!?」


 僕は冷静にモニカ教授の動きを見極め、剣の間合いに入ったタイミングで横薙ぎにした。

 モニカ教授も咄嗟(とっさ)に剣で防御するけど、ただでさえ背の低い彼女だ、僕の一撃を受けて吹き飛んでしまう……って!?


「甘い!」


 空中で体勢と整え、着地と同時にフェイントを入れながら僕の背後を取った。


「終わりだ!」


 そんな声とともに、モニカ教授の剣がうなりを上げる。

 ……モニカ教授、そこも僕の間合いです。


「な!?」


 クルリ、と身体を(ひるがえ)して剣をいなすと、モニカ教授の首筋に剣先を向けた。


「僕の勝ちです」

「……ふふ、そのようだな」


 木剣を収め、互いに礼をする。

 モニカ教授……一回目の人生で褒めてくださった僕の剣術は、ここまで強くなることができました。


 あなたの、あの言葉のおかげで。


「うむ。ヒューゴ君、またぜひとも手合わせをお願いしたい」

「はい……僕もです」


 口の端を持ち上げたモニカ教授と握手を交わし、僕は更衣室へと向かう。

 もちろん、メルザと一緒に魔術の授業を受けるために。


 ◇


「ええと……あ、いた」


 着替えを済ませ、早速魔術の授業を(のぞ)いてみると、メルザが真剣な表情で授業を受けていた。

 うん……メルザの凛々しい横顔も、最高だなあ……って!?


「あらあら、また(のぞ)き見ですか~?」

「あ、あははー……」


 案の定、今回もサウセイル教授が背後にいて、ツンツン、と僕の頬を突っついていた。


「ではでは、また彼女の隣の席に座ってくださいね~」

「は、はい」


 サウセイル教授に誘導され、僕は教室内に入ると……はは、メルザが笑顔で手を振ってくれた。


「メルトレーザさんは、あなたが来ると思って席を取っているんですよ~」

「え? そうなんですか?」

「はい。あなた、愛されてますね~?」


 サウセイル教授に肘でお腹を突かれ、僕は思わず照れてしまう。

 でも……サウセイル教授、メルザがものすごく睨んでいるので、そろそろやめていただけませんでしょうか?


「はは……また来てしまいました」

「……そうですか」


 苦笑しながらメルザの隣に座ると、メルザは口を尖らせて、プイ、と顔を背けてしまった……。


「あ、あはは……サウセイル教授に、『あなた、愛されてますね~?』なんて言われたものですから、嬉しくて照れてしまいました……」


 先程のサウセイル教授とのやり取りにヤキモチを焼いているであろうメルザに、僕はほんの少しだけ言い訳がましく説明した。

 い、いや、もちろん本心なんだけどね。


「……他には?」

「他に、ですか……?」


 うん、どうやら今の答えだけではお気に召さないらしい。


 なので。


「……僕が来ると思って、こうやって席を確保してくださり、ありがとうございます」

「あう……そ、それもサウセイル教授から聞いたのですか?」

「はい」


 打って変わって恥ずかしそうにしながら尋ねるメルザに、僕は頷く。

 本当に、僕の世界一の婚約者は可愛い女性(ひと)だ……。


「そこー! イチャイチャしないでください~!」

「「あ……」」


 サウセイル教授に怒られてしまった……。


「ふふ……では、真面目に授業を受けましょうか」

「はは、そうですね……」


 僕とメルザは顔を見合わせて苦笑しながら、魔術の授業を受けた。


 ◇


「ではでは、これで今日の授業を終了します~」


 サウセイル教授が間延びした声で終了を宣言すると、生徒達が自分達の教室へと戻っていく。


「メルザ、僕達も行きましょう」

「ええ」


 メルザの手を取り、教室を出ようとすると。


「あ! 二人共、ちょっと待ってください~!」

「「っ!?」」


 大声で呼び止められ、僕達は身構える。

 ま、まさか……メルザの秘密に気がついて……?


「うふふ、今日の授業で放ったメルトレーザさんの氷結魔法が素晴らしかったので、ぜひとも他の魔法についても確認させてほしいんです~」

「は、はあ……」


 サウセイル教授のお願いに、メルザがキョトン、とした。

 いや、確かに僕の(・・)メルザの氷結魔法は、授業を受けていた生徒の中でもずば抜けてはいたけど……。


「そういうことで、私の研究室に行きましょう~!」

「え? ええ!?」


 サウセイル教授がメルザの腕をつかんでグイグイ引っ張り、メルザは困惑しながら連れて行かれる。


「ま、待って下さい!?」


 そんな二人を、僕は慌てて追いかけるんだけど…手。


「え、ええと……」

「どこでも好きなところに掛けてくださって結構です~」


 なんてサウセイル教授は勧めるけど……残念ながら、教授の研究室の中は大量の本や紙などが足の踏み場もないほどに散乱していた。

 これじゃ、片づけないとどうやっても座れないです……。


「わ、私達は立っておりますので大丈夫です……」

「ええー、そうなんですか~?」


 少しがっかりした表情を浮かべるサウセイル教授。

 いや、だったら研究室を整頓してください……。


 すると。


「シェリル、来たぞ……って、ヒューゴ君にメルトレーザ君」

「モニカ教授!」


 何故か、モニカ教授がサウセイル教授の研究室へやって来た。


「うふふー、私がお呼びしたんです~」

「うむ……だがシェリル、急にどうしたのだ?」


 どうやらモニカ教授は、用件を知らされていないようだ。

 だけど……メルザの魔法を確認するだけだったよね……。


「決まっています。モニカは何かあった時(・・・・・・)のための保険ですよ~」

「「っ!?」」


 その言葉を聞いた瞬間、メルザを守るように僕の背中の後ろに隠した。

 まさか……っ!


「うふふー、メルトレーザさん、あなたはヴァンパイア(・・・・・・)ですよね~?」

お読みいただき、ありがとうございました!


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