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【絶賛発売中!】僕は七度目の人生で、怪物姫を手に入れた(web版)【コミカライズ連載中!】  作者: サンボン
最終部 僕は七度目の人生で、怪物姫との幸せを手に入れた
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漆黒の森

「んう……」


 寝苦しさを覚え、僕は、目を覚ます。

 部屋がまだ暗いところを見ると、まだ深夜のようだ。。


 そして。


「すう……すう……」


 僕の腕枕で、メルザが寝息を立てている。

 つい数時間前は、僕はこの美しいメルザと一つになった、んだよな……。


 そう考えると、僕の胸がまた高鳴る。

 肌に触れるメルザの温もりと、絹のような肌触りが、さらに心を掻き立てた。


「メルザ……」


 顔にかかる艶やかな黒髪をすき、僕はその頬に口づけを落とすと。


「ふふ……」

「あ……起こしてしまいましたか……」


 メルザが目を覚まし、真紅の瞳で僕を見つめながら微笑んだ。


「ヒュー……私、とても幸せです……」

「僕もです……あなたの全てを感じることができて、まるで夢のようです……」


 本当に、あれは全て夢だったのかもしれないと思うほど、メルザは心地良くて、全て包まれるようで……」


「ね……ヒュー……」

「あ……」


 メルザが掛かっているシーツをどけて僕の上に覆いかぶさり、その美しい裸体が露わになる。

 僕は……。


「メルザ……メルザ……ッ」

「ふふ……ん……あん……」


 やはり僕は自分の理性を押さえることができず、また彼女を貪るように求めた。


 ◇


「う、うう……ヒュー……もう少しゆっくり……」

「す、すいません……」


 御者席に座るメルザが、馬車が揺れるたびにつらそうに眉根を寄せる。

 これに関しては明らかに僕のせいなので、ただ平謝りするしかない。


「な、なんでしたら、後ろで横になっていますか?」

「っ! 嫌です! 私はヒューの隣がいいんです!」


 僕は心配して休むように告げるが、メルザは僕の腕にしがみつて断固拒否の姿勢を取った。

 昨夜、初めての夜(・・・・・)を共にしたことで、メルザはこれまで以上に甘えるようになった。


 もちろん僕も、これまで以上にメルザが愛おしくて仕方がない。

 あはは……まさかここまで求めてしまうようになるなんて、僕自身びっくりだ。


「そ、それで、“漆黒の森”にはあとどれくらいかかりそうですか?」

「昨日の聞き込みでは、セルジュの街から三時間ほどだと言っていましたので、あと二時間はかかるかと……」

「に、二時間ですか……」


 そう聞いた瞬間、メルザは腰を押さえながら肩を落とす。


「あ、あははー……誰も漆黒の森に行こうとする者はいませんので、人もいないですし、その……飲みます?」


 僕は罪悪感とつらそうなメルザを見ていられなくなり、そんな提案をしてみた。


「! い、いいんですか!」

「はい。せめてもの、その……罪滅ぼしに……って!?」


 話し終わる前にメルザが僕の首に勢いよく飛びつくと。


 ――かぷ。


「ん……んく、んく、んく……っ」


 いつもよりもたくさん血を飲むメルザ。

 腰の痛みから、せめて癒しを求めているんだと思うけど、それにしてもペースが速いなあ……。


「ぷあ……っ! はああ……!」


 ようやく牙を抜き、頬を紅潮させて蕩けるような微笑みを見せるメルザ。

 漏れる吐息も、まるで僕を誘うかのように色香を漂わせていた。


「ふふ、いけませんね……どうやら愛する人の全て(・・)を受け入れてしまうと、どうしようもなく求めてしまうようです……」

「そ、そうなのですか?」

「はい……漆黒の森に到着したら、お母様に聞いてみませんと」


 う、うわあ……そんな話をメルザの母君に話したら、僕の命は尽きてしまうかも……。


 そして僕達は、途中で何度か休憩を挟みながら、予定より一時間遅れで漆黒の森に到着した……んだけど。


「……まさか、生い茂る木々までもが文字通り(・・・・)漆黒だとは思いませんでしたね」

「はい……」


 森の入口に馬車を停め、僕とメルザは森を見て立ち尽くす。

 木々や葉の色が黒いという点以外は、基本的に普通の森と変わらない……とは思うけど、それでも、その異様な雰囲気に足を踏み入れることを躊躇してしまう。


「どうしてお父様とお母様は、このような場所に住んでおられるのでしょうか……」

「さ、さあ……」


 とはいえ、魔族が棲んでいると言われると妙な納得感があることも事実。

 むしろ、普通に街に魔族がいたら、それはそれで違和感を覚えていると思う。


「と、とにかく、覚悟を決めて森の中へ入りましょう」

「は、はい」


 僕はメルザの手を取り、森の中を進む。


 すると。


「「っ!?」」

「「「「「キキ……」」」」」


 早速、この森にいる魔物が現れた。

 しかも、よりによってゴブリンの群れか……。


 ゴブリンは人間よりも小さく非力ではあるものの、集団で襲いかかり、しかも残忍な性格をしていて、決して侮っていい魔物ではない。

 何より……コイツ等は、人間の女性を苗床(・・)にする。


「はは……貴様等、誰を見てそんな下卑た笑みを浮かべているんだ?」


 メルザに対し濁った視線を向けるゴブリン達に怒りを覚えた僕は、サーベルを抜くと。


「ッ!? ギギ!?」

「ギャ!?」


 一気に詰め寄り、瞬く間にゴブリンを二体斬り刻んだ。


「ふふ……ヒュー、離れてください。このような下衆な魔物は、全て燃やして浄化して差し上げます」


 ニタア、と口の端を吊り上げ、メルザは瞳の色と同じ巨大な火球を出現させると。


「【紅蓮】」

「「「「「ギギャアアアアアアッッッ!?」」」」」


 悲鳴を上げるゴブリン達が、全員業火に包まれた。

お読みいただき、ありがとうございました!


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