あなたと、一つに
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「メルザ、戻りました……って」
「あ! ヒュー!」
扉を開けると、パアア、と満面の笑みを浮かべたメルザが飛び込んできた。
だけど、これって……。
「う、うう……」
うめき声を上げる三人の男が、床に転がっている。
「ふふ、面白いでしょう? あろうことか、ヒューが留守であるのを見計らって、この私を襲おうとしたんですよ?」
そう言うと、メルザがニタア、と口の端を吊り上げた。
「そうですか。なら、今すぐ息の根を止めるとしましょう」
逆上した僕は、サーベルを抜いてその切っ先を男の一人へと向けた。
「ヒ、ヒイイッ!?」
「うるさい。よくも僕の世界一大切なメルザに手を出そうとしたな。死んで償え」
そう言って、男の眉間を一突きにしようとする、んだけど……。
「ヒュー、そんなことをしてしまっては、あなたと二人きりの部屋が汚れてしまいます。それに、その大切なサーベルも」
「メルザ……」
サーベルを持つ僕の手にその細くて白い手を添え、メルザはそれを止めた。
……まあ、メルザの言うとおりか。
なので。
「なな、何を!?」
「ん? 決まっているだろう。僕とメルザの部屋に、オマエ達は邪魔なんだよ」
男の襟首をつかんで窓へと引きずると、ヒョイ、と持ち上げてそのまま窓から落とした。
ここが四階? 関係ないよ。
「や、やめてくれ!」
「すす、すまなかった! もう二度とこんな真似は……っ!?」
残る男二人も必死に抵抗するが、お構いなしにそのまま窓から下へ落とした。
「これで綺麗になりました」
手をパン、パン、と叩いて払うと、僕はメルザに微笑みかけた。
「ふふ……ヒュー、お疲れ様でした。お茶でもいかがですか?」
「あ、ありがとうございます」
椅子に腰掛け、メルザを向かい合わせに座る。
それに合わせて、彼女はカップにお茶を注いでくれた。
「うん、美味しい」
お茶を口に含み、思わず顔を綻ばせる。
まあ、メルザが淹れてくれたお茶なんだから、美味しいに決まってるんだけど。
「それでヒュー、聞き込みはいかがでしたか?」
「はい。どうやら漆黒の森というところは魔物の生息地らしく、中央には“ヴィーヴィル”と呼ばれる魔物の巣があるそうです」
「そうですか……では、気を引き締めていかないといけませんね。私の能力は、魔物には通用しませんから……」
そう言うと、メルザが少し肩を落とした。
「あはは、何をおっしゃっているんですか。魔物ごとき、この僕でも問題ありませんし、メルザだって強力無比な魔法があるんです。それこそ、あなたが気落ちする要素なんてどこにもありません」
「あ……ふふ、もう……すぐそうやってヒューは、私の心を読んで欲しい言葉をくださるのですから……」
僕の言葉を聞いて、メルザが口元を緩めた。
「あ、あと、これは少し残念なお知らせです」
「……何かあったのですか?」
心配そうに僕の顔を覗き込むメルザ。
そんな彼女の反応を見て、僕は口の端を持ち上げた。
「はい、あまりよさそうなお店がありませんでしたので、今日は部屋で食事を摂って、せめて夜は散策程度に留めましょう」
「あ……も、もう、驚かさないでください」
「あはは、すいません」
少し頬を膨らませるメルザが可愛らしくて、僕は声を出して笑った。
◇
「ヒュー、楽しかったですね」
夜の街の散策を終え、部屋へと戻ってきたメルザがニコリ、と微笑んだ。
「はい。僕はあなたと一緒なら、どんな場所だって楽しいですし、幸せです」
「も、もう……確かにあなたの言うとおり、目を見張るようなところはありませんでしたが……」
僕がほんの少し皮肉を込めてそう言うと、メルザは口を尖らせてしまった。
だけど、夜になれば少しは街の様子も変わるかと思ったけど、ますます閑散としてしまったからなあ……。
なお、メルザを襲おうとして僕に窓から捨てられた三人は、かろうじて息があったらしく、この街の治療院に運び込まれたらしいと、一階で他の客が話しているのが聞こえた。
ただ、僕とメルザの姿を見た瞬間、全員が一斉に目を伏せたりどこかへと行ってしまったりと、この宿に来た直後と正反対の反応を見せるようになったけど。
「ですが、本当にヒューは独占欲が強いですよね?」
「当たり前じゃないですか。メルザは僕だけの宝物なんです。他の男が視界に収めるだけでも、とても許せません」
「ふふ、ありがとうございます」
僕の答えに満足したのか、メルザが蕩けるような微笑みを向けながら僕に抱きついた。
「メルザ……どうぞ」
「はい……かぷ……んく……ん……ん……」
僕の首筋に牙を突き立て、メルザが美味しそうに喉を鳴らす。
だけど、今日はいつもより少し長いな。
「ぷあ……だ、駄目です……あなたが愛おしすぎて、歯止めが利かなくなるところでした……」
「あ、あはは……」
少し困った表情を浮かべたメルザに、僕は苦笑した。
僕としてもたくさん血を飲んでほしいという思いはあるけど、干からびてしまうわけにもいかないからね……。
「ね……ヒュー……」
真紅の瞳をとろん、とさせて、メルザが僕を見つめる。
彼女のその潤んだ瞳に、濡れた唇に、甘い吐息に、僕は吸い込まれると。
「ん……ちゅ……ちゅぷ……ちゅ、ちゅ、ちゅる……っ」
貪るようにメルザの唇を、舌を求め、絡め合う。
その首筋から漂う彼女の甘い香りに、僕はもうどうしようもなくなってしまって……。
「ん……っ」
気づけば、メルザの乳房に、腰に手を回し、その感触を味わう。
「ぷあ……は……ヒュ、ヒュー……」
「メルザ……」
「ヒュー……ヒュー……お願い、来て……っ」
誘われるまま、求められるまま、僕は彼女の中へとゆっくりと侵入すると。
「あ……は……あああああっ!」
――僕とメルザは肌を重ね、一つになった。
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