魔族の血の否定と肯定
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「後は、貴様も知ってのとおりじゃ」
ノーフォークは、吐き捨てるようにそう言った。
「次は儂からも質問じゃ……貴様、魔族の話をどこで知った?」
「…………………………」
探るような視線を向けて尋ねるノーフォークに、僕は押し黙る。
だって僕は……母上と同じように、十四歳を迎えたことで能力が発動したのだから。
僕は自分が魔族だと、知ったのだから
そして、目の前の老人は僕が魔族だと知れば、母上と同様忌み嫌うことだろう。
別にそのことはいい。そもそも僕も、この男に対して家族の情なんて持ち合わせてはいないのだから。
だから。
「……簡単ですよ。僕も、十四歳の時に能力に目覚めたからです。オマエの言う、魔族の血によって」
「っ!?」
そう言うと、僕は口の端を吊り上げた。
「ヒ、ヒイッ!? きき、貴様も、この儂に……ノーフォーク家に災いをもたらそうというのじゃな!?」
椅子から転げ落ち、這いずりながら必死で逃げようとするノーフォーク。
その姿が、僕には滑稽で……憐れでならなかった。
おそらく、暴君と化したその祖先は、この男のような連中から蔑まれ、侮辱され、忌み嫌われたからこそ、そうなってしまったのだろう。
誰だって、裏切られれば心が壊れてしまうものだから。
「……別に僕は、オマエなんかに興味はないよ。ましてやオマエは貴族じゃない、ただの平民なんだ。魔族の血を引く、僕以下なんだよ」
「……っ!」
そう告げると、悔しいのかノーフォークは僕を睨みつける。
自分がしたことの結果として、今のオマエがいるのだから、お門違いなんだけどね。
とはいえ。
「オマエが毎年一回僕の様子を見に来ていたのも、グレンヴィルのクーデターに加担したのも、全ては母上と同じように僕が魔族として覚醒するかもしれないことを恐れてのものだったんだな」
「そそ、そうじゃ! 忌々しい魔族など、この世から消えてしまえばよいのじゃ!」
勢いを取り戻し、吠えるノーフォーク。
だが、本当に分かっていないんだな……。
「ハア、馬鹿だなあ……オマエだって能力に目覚めていないだけで、その魔族の血を引いているというのに」
「う、うう……うううううううう……っ!」
そのことが認められないノーフォークは、床にのたうち回りながら自分の身体を掻きむしる。
小汚い服が破れ、しわがれた素肌に爪を立て、みみず腫れになってもお構いなしに。
……無数の傷跡があるところを見ると、この男はずっと自分の中の魔族の血を否定し続けてきたんだな。
まあ、僕の知ったことか。
「メルザ、行きましょう……もうこの男に用はありません」
「はい……」
今まで僕の隣でずっと黙っていたメルザは、僕の手を取って頷いた。
「うう……ううう……うおおおおおおおおおお……っ」
慟哭に似た叫び声を上げるノーフォークを無視し、僕達は家を出た。
すると。
「メルザ……?」
「ヒュー……ヒュー……」
僕の身体を、メルザが強く抱きしめた。
少しでも僕が、悲しまないように。
たった一人残された家族に見放された僕を、包み込むように。
「……メルザ、僕は悲しんでなんかいませんよ?」
「ヒュー……ですが……」
「それよりも僕は、あの男に対しては怒りしかありませんでした。だって、あの男は魔族を否定したんですから」
そう……僕は、魔族を否定するあの男を許せなかった。
僕の愛するメルザもまた、半分は魔族の血なのだから。
「それに、僕の家族はあの男やグレンヴィルの連中などではなく、愛するあなたと大公殿下です。僕はもう、最高の家族がいるのですから」
「あ……ヒュー……」
そう言うと、僕はメルザを優しく抱きしめる。
優しくて、綺麗で、尊くて、愛おしい……世界で一番の僕の婚約者、メルトレーザ=オブ=ウッドストックを。
「メルザこそ……その、申し訳ありませんでした。僕に付き合わせてしまったせいで、あんな最低な男の言葉を聞かせてしまい……」
「わ、私は大丈夫です。ですが……ふふ、あなたはいつも私のことばかりなんですね……」
胸の中のメルザが、僕の顔を覗き込みながら嬉しそうにはにかむ。
あなただって、傷ついているだろうに……。
「よし!」
「キャッ!?」
僕は気合いを入れるために声を上げると、メルザを抱き上げた。
「これで用事はおしまいです! さあ、これから思いきりダートプールの夜を楽しみましょう!」
「あ……ふふ、はい!」
僕は笑顔のメルザを抱いたまま、貧民街の先で明るく輝く大通りへ向かって駆け出した。
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