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【絶賛発売中!】僕は七度目の人生で、怪物姫を手に入れた(web版)【コミカライズ連載中!】  作者: サンボン
最終部 僕は七度目の人生で、怪物姫との幸せを手に入れた
228/241

ダートプールの街へ

「僕は七度目の人生で、怪物姫を手に入れた」は、本日発売!


内容もweb版よりも大幅改稿し、大変読み応えがあります!

どうぞよろしくお願いします!


▽特設サイト▽

https://fantasiabunko.jp/special/202207seventhtime/

「ではお爺様、行ってまいります」


 元祖父であるメイナード=ノーフォークに会って話を聞くと決めた日から三日。

 メルザは今、車窓から大公殿下に向かって笑顔で手を振っている。


「私も軍務がなければ一緒に行ったんじゃがのう……」


 そう言って、肩を落とす大公殿下。

 その姿を見て、メルザと離れるのが寂しいからか『ゲートを使ってすぐに帰ってくればいいじゃろうに』と、大公殿下がしきりに言っていたのを思い出し、僕はつい笑ってしまった。


 まあ、大公殿下のおっしゃることはごもっともなんだけど、せっかくの機会ということで、僕とメルザはゆっくり馬車の旅を楽しむことにしたんだけどね。


「むむ……何じゃ?」

「い、いえ! 何でもありません!」


 ジロリ、と睨まれてしまい、僕は思わず口元を押さえる。


「やれやれ……まあ、ダートプールの街までは馬車で片道二週間の距離じゃから、早くとも帰ってくるのは一か月後。あまり羽目を外さんようにな」

「分かっております。今回はヒューのルーツを確認することが目的なのですから」

「うむ、ならばよい」


 凛とした表情で答えるメルザを見て、大公殿下は満足げに頷いた。


 そして。


「二人共、気をつけるんじゃぞ!」

「「はい!」」


 大公殿下に見送られながら馬車は屋敷を出発し、皇都を出て一路ダートプールの街を目指す。


「そういえばお爺様のお話ですと、ダートプールの街というのは交易が盛んで、オルレアン王国だけでなく東方の国々の珍しいものが手に入ったりするのだとか」

「みたいですね。僕のこのサーベルも、ダートプールを経由して入手したものだそうです」


 そう言うと、僕はサーベルにそっと手を添えた。


「ふふ……そのサーベルも、たくさん私とヒューを守ってくださいましたね……」


 メルザは嬉しそうに目を細める。

 僕にとっても、このサーベルはメルザの次に一緒にいるからね。


 それに。


「これは大公殿下が与えてくださり、メルザが僕を騎士と認めてくださった、大切な相棒です。これからも、このサーベルと共にあなたをお守りします」

「はい……世界一大好きなあなたに、身も心もお守りいただけるなんて、私は世界一幸せです」

「僕もです。世界一素敵なあなたを、一生お守りできるなんて、こんなに幸せなことはありません」

「ヒュー……ん、ちゅ……」


 僕とメルザは手を取り合いながら、互いに唇を堪能した。


 ◇


「メルザ、見えてきましたよ」


 王都を発ってから二週間。

 車窓から前方を眺めると、かなり高い城壁がそびえ立っている。


 あれが、ダートプールの街だ。


「かなり堅牢な街のようですね……」

「はい。元々は、隣接する国や異民族、魔族などの外敵から皇国を守るための最前線の城塞都市という位置づけですから」


 そして、おそらくは領主である歴代のノーフォーク辺境伯のうちの誰かが、魔族と交わったのだろう。

 その魔族の血が、この僕の中に流れているんだ。


「ヒュー……不安、ですか……?」


 僕の手を取り、メルザが心配そうな表情で顔を(のぞ)き込む。


「……いいえ、違います。僕は今、この魔族の血を与えてくれたその祖先に感謝していたところです」

「感謝、ですか?」

「はい……七度目の人生を迎えた直後の僕は、何度も死に戻りして何度も裏切られることが呪い(・・)だと感じていました。ですが……結果としてメルザに出逢うことができました」

「あ……」

「さらには、サウセイル教授やメルザの母君から、あなたを守る力まで与えてくれたんです。今では、どれだけ感謝しても足りません」

「ヒュー……」


 メルザは口元を緩め、僕の胸にしな垂れかかった。


「今回の面会で僕のルーツを知り、この時を操る能力(・・・・・・)を完全に自分のものにして、サウセイル教授に挑みます。そして平和で穏やかな日々を取り戻し、あなたと幸せに過ごすんです」

「ふふ……本当にヒューは、結局は私のためなんですね……」

「当然です。僕の全ては、あなたのためにあるのですから……って」

「あ……」


 メルザと愛をささやき合っているところを、街の守備兵が苦笑しながら僕達を見ていた……。


「あ、あはは……どうやら検問のようですね」

「そ、そうですね……」


 恥ずかしさからメルザは顔を真っ赤にするが、それでも僕から離れるという選択肢はないみたいだ。

 なので。


「あ……ふふ、もう……」

「いいんです。こうやってするのも、婚約者の特権ですから」


 その細くて折れてしまいそうな腰を抱き寄せると、メルザは苦笑する。

 でも、その真紅の瞳はとても嬉しそうに輝いていた。

お読みいただき、ありがとうございました!


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