僕のルーツを求めて
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書籍の帯には重大発表あり!
お見逃しなく!
僕達がアイシス川で発見した魔法陣により転移したあの部屋で、初代皇帝ナイジェル=フォン=サウザンクレインの遺体と手記を発見してから既に二週間。
クリフォード皇子から依頼されていた橋梁工事も、いよいよ竣工を迎えようとしていた。
なお、例の転移魔法陣のある坑道については、全て埋め直して封鎖した。
ただし、同時に発見されていた紋様の石については、そのままにしておいたらどのような影響が出るか分からないため、皇国として秘密裏に管理することになっている。
一応、皇国の魔法使い達が紋様の石を引き続き調べるらしいけど、期待するような結果は得られないだろう。
とにかく、サウセイル教授の本当の目的が分かった今、僕達がこれからすべきことは、彼女の目論見を打ち砕くこと。
そして、彼女にあの手記を見せ、目を覚まさせること。
そのためには。
「メルザ……この工事を終えたら、まずはかつて祖父だった男に会おうと思います」
「ヒュー……?」
隣に立ち、一緒に工事の最後の仕上げを見守っているメルザが、僕の顔を不思議そうに見つめる。
「はい……あのサウセイル教授達が皇都を襲撃した夜、あなたは教えてくれました。僕の中に流れる魔族の血……それが起こした、能力について」
そう……サウセイル教授、そしてメルザの母君でヴァンパイアの真祖、エルトレーザ=オブ=ウッドストックとの戦いにおいて発動した、時を操る能力。
過去六度の人生での死に戻りを含め、あの時発動できたのは偶然……いや、奇跡に近い。
あれ以降、やはり僕は能力を発動することができていない。
「それで、僕はずっと考えていたんです。そもそも僕の中に魔族の血が流れているのは、僕の祖先に魔族がいたから」
「は、はい……」
「なら、僕のルーツである家系をたどっていけば、誰が魔族だったのか判明しますし、その魔族が能力を使っていたことが分かる文献や資料が見つかれば……」
「……ヒューの能力の全容が分かる可能性がある、そういうことですね?」
メルザの言葉に、僕は強く頷いた。
「そうなると、グレンヴィル家もしくは母方の家系であるノーフォーク家のどちらかということになりますが、僕はノーフォーク家ではないかと考えております」
「それは、どうしてですか?」
「はい……まず、グレンヴィル家にルーツがあるのならば、グレンヴィルやルイスに何度も対面しているメルザなら、気づく機会もあったんじゃないかと思います。ですが、メルザは一度もアイツ等に魔族の血が混じっている可能性について言及したことはなかった」
僕の血を飲んだから気づいた、というのは当然あるんだけど、メルザが魔族の血が混じっているかを確認したのは、僕の瞳を見てのことだった。
だから、グレンヴィルやルイスと対面した時に……何なら処刑されたその瞬間まで見届けたメルザなら、本当にそうだったなら気づく可能性はあったんじゃないかと思う。
「もちろん、僕の時のように血を飲んだり瞳をしっかりと確認したわけではないですし、グレンヴィル家がルーツである可能性は否定できません。ですが、可能性の高さから考えれば、ノーフォーク家ではないかと」
「そうですね……ヒューのおっしゃるとおり、私はあの者達から魔族としての可能性を一度も感じたことはありません。となれば、確かにノーフォーク家を調べたほうが確実そうです」
「はい。それに、僕が確率的にノーフォーク家のほうが高いと思った理由の一つとして、元の領地がサウザンクレイン皇国の辺境に位置しているからなんです」
サウセイル教授の襲撃の際に加勢に入った、メルザのご両親をはじめ魔族達は漆黒の森……つまり、オルレアン王国内にいる。
なら、皇国内で魔族と最も接触する可能性が高いのは、オルレアアン王国と面している辺境ということだ。
「……ヒューの考えは分かりました。ですが、確かノーフォーク家……つまり、ヒューの母方の実家は、先のクーデターに加担した罪で取り潰しにあったのでは……?」
「はい。祖父だった男、“メイナード=ノーフォーク”は平民に落とされました。ですが、今も領地である“ダートプール“の街で暮らしているそうです」
「そうですか……」
メルザは、少しだけ悲しそうな表情を浮かべ、うつむいた。
優しいメルザのことだ。僕が祖父と会うことで、つらい思いをするんじゃないかと考えているんだろう。
あの男もまた、過去六度の人生で僕を見捨てたのだから。
「ですのでメルザ。祖父と会う際は、あなたも同席してくださると嬉しいのですが……」
「っ! も、もちろんです!」
頬を人差し指で掻きながらそうお願いすると、メルザは勢いよく顔を上げ、二つ返事で了承してくれた。
あはは……僕はあなたがいる限り、悲しい思いになんてなりませんよ。
「では、どうぞよろしくお願いします」
「はい!」
メルザは、お辞儀をする僕に最高の笑顔で応えてくれた。
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