相容れぬ男と男、深い愛の女と女
「僕は七度目の人生で、怪物姫を手に入れた」は、いよいよ明日発売です!
web版よりも大幅改稿し、読み応えのある内容となっております!
早いところでは、既に本屋にて並んでおります!
どうぞよろしくお願いします!
▽特設サイト▽
https://fantasiabunko.jp/special/202207seventhtime/
書籍の帯には重大発表あり!
お見逃しなく!
「ふざけるな!」
棺の中にあった本……初代皇帝、ナイジェル=フォン=サウザンクレインの手記を読み終えた瞬間、僕はそれを思いきり床に叩きつけた。
当たり前だ。
この男がしたことは、口ばかりの愛をささやき続け、サウセイル教授をただ利用し、挙句の果てにその命を奪う……そんな最低なことばかりなのだから。
「ヒュー……お怒りはごもっともですが、どうか落ち着いてください」
「そんなの無理ですよ! もしこのサウセイル教授がメルザで、こんな真似をした男が僕だったのなら、僕は僕のことを永遠に許せない!」
そうだ、こんな男を許してはいけない。
こんな男の存在を、認めてたまるか。
メルザという世界一愛する女性がいるからこそ、僕はこの男の全てを否定する。
だって。
「だって……これではあんまりではないですか……ただ愛した人に再び逢いたくて、狂おしいほど求めたその先で、この男はサウセイル教授に死を求めているのですよ……?」
棺の中に残されている小瓶を見つめ、気づけば僕は涙を零していた。
どうしてこの男は、こんな惨い仕打ちができるのだろう。
どうしてこの男は、こんな酷い願いを求められるのだろう。
同じ愛する女性がいる男同士のはずなのに、僕には何一つ理解できなかった。
「ヒュー……あなたが高潔な御方であるからこそ、このような下劣な男を許せないことも分かります。だから……」
「ん……っ!?」
僕の頭を押さえ、その柔らかい桜色の唇で強引に僕の唇を塞ぐメルザ。
「ちゅ……ちゅぷ……ぷあ……私達のすべきことは、サウセイル教授を止めること」
メルザは唇を離し、凛とした表情で僕を見つめながらそう告げる。
「サウセイル教授が何をしたいのか、何故あのような真似をしたのか、この手記を読んでようやく分かりました……彼女は、愛する人を再び蘇らせたいのだと。転移魔法陣のその先でのうのうと眠っているこの男を取り戻すために、あの地下洞窟のその上にある皇都を消し去ろうとしたのだと」
「メルザ……」
「私も愛するヒューが死んでしまったら、同じようなことをしてしまうかもしれません。ですが、幸いにも私の愛する御方はこうして生きておられて、世界中の誰よりも素敵な御方でした」
そう言うと、メルザがニコリ、と微笑む。
「ヒュー……世界一大好きな、私のヒュー……私を深く愛してくださるあなただから、この最低な男に憤りを感じていらっしゃることはこの私が誰よりも理解しています。だからこそ、私達はサウセイル教授を止めないといけません」
「…………………………」
「そのためにはこの手記を彼女に見せ、これほどまでに愛していた男が、実は愛する価値が一切ないのだと、私達が教えて差し上げないといけないんです」
「あ……」
メルザの言葉を受け、僕はうつむいていた顔を上げる。
「ヒュー……サウセイル教授を止められるのは、私とあなたしかいません。これまで“怪物”と蔑まれて暗がりのなかに潜むしかできなかった私と、七度も家族に裏切られ続けてきたヒュー……だからこそ誰よりも深い愛で結ばれた、私とあなたで止めるのです」
「メル、ザ……」
ああ……あなたという女性は……。
誰よりも美しくて、誰よりも強くて、誰よりも気高くて、誰よりも愛おしい女性。
僕は、あなたと出逢えて……あなたを愛して、本当によかった……っ。
「はい……メルザ、ありがとうございます……僕は怒りのあまり、我を忘れてしまいました……本当に、僕もまだまだです」
「ふふ……そんなことはありません。そこまで愛が深いあなただからこそ、あなたは“怪物”である私を愛してくださり、私もまたあなたを愛しているのですから……」
そう言って、クスリ、と微笑むメルザ。
そんな世界一の、僕だけの彼女を、そっと抱き寄せる。
「メルザ……僕達でサウセイル教授を止め、そして……彼女を救いましょう」
「ふふ……はい!」
僕の言葉に、メルザは咲き誇るような笑顔で応えてくれた。
「……私も友として、絶対にシェリルを止めてみせる……っ! アイツを、絶対に救ってやるのだ!」
大粒の涙を零し、モニカ教授は拳を握りしめて決意する。
「あは♪ 今代の“影縫い”アビゲイルとして、初代の不始末は片づけないとね♪」
そう言うと、アビゲイルはニタア、と口の端を吊り上げた。
「……アビゲイルさんも、優しいですよね」
「っ!? あ、あは……私は暗殺者ですよ? や、優しくなんか、その……ありません……」
あはは、照れてしまってキャラがブレてますよ?
「はっは! ならば私は、ご先祖様にちと大目玉を食らわせてやるとするかの! それに……私の大切な孫娘と、大切な息子の未来がかかっておるからの」
豪快に笑ったかと思うと、大公殿下は瞳に優しさを湛えて僕とメルザを見た。
大公殿下……。
「さあ! もうここに用はありません! 皇都に帰りましょう!」
「はい!」
「おうとも!」
「うむ」
「あは♪」
僕達五人は互いの顔を見合わせ、笑顔で頷いた。
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