皇帝の手記
「僕は七度目の人生で、怪物姫を手に入れた」は、いよいよ明日発売です!
web版よりも大幅改稿し、読み応えのある内容となっております!
早いところでは、既に本屋にて並んでおります!
どうぞよろしくお願いします!
▽特設サイト▽
https://fantasiabunko.jp/special/202207seventhtime/
書籍の帯には重大発表あり!
お見逃しなく!
――親愛なる、シェリル=ダスピルクエットへ。
君が、いつの日かこれを読むと信じて、私はここに書き記しておく。
思えば君とは、出逢ってから既に五十年以上の月日が経とうとしている。
出逢った頃はお互いに若く、私は他の者より少し力が強く剣の扱いが上手いだけの、ただの冒険者に過ぎなかった。
魔法学校に通っていた魔法使いとして駆け出しの君と街で出逢って、強引に私のパーティーに引き入れた時のことを、今でもはっきりと脳裏に浮かぶ。
君は強引な私に、顔を真っ赤にして猛抗議していたな……。
その後も一緒に様々な冒険をして、あり得ないような魔物……巨大な三つ首のドラゴンやサラマンダーなんかも討伐した。
そんな日々を繰り返すうちに、私達のパーティーは“ドムトニア王国”で最強の名を欲しいままにした。
そのせいで、望まない戦いを強いられたこともあった。
だが、君と共に戦い、支え合った日々は、死を目前にした今も私の胸に刻まれている。
結果、こうやってサウザンクレインの名をいただいた私達の国を興すことができたのだ。これ以上、望むべくもないだろう。
私はもうすぐこの世と終わりを告げるが、君はどうしているだろうか。
死を間近に控え、思い浮かべるのはいつも君のことばかり。
アビゲイルの奴は夜中に皇宮へ忍び込んでやって来ては、愚痴や文句、それに『死ぬな』との無理難題ばかり押し付けてくる始末。
だが……あの時、私が君を選んでいたら、こんな想いをする必要もなかったのだろうな……。
野心家の私は、結局は君と二人きりでの平穏で穏やかな人生ではなく、この大陸に覇を唱えることだった。
そのために君を裏切り、私はドムトニアの王女、“ナタリア”を選んで妻にした。
自分の国を、手に入れるために。
だが君は、そんな私を責めもせず、ただ私の……新たに興した、このサウザンクレイン皇国のために尽くしてくれた。
私とナタリアの間に生まれた二人の息子も、まるで自分の子どものように可愛がり、時には厳しく育ててくれたりもした。
おかげで二人共、次の皇帝となるに相応しい皇子となってくれた。
とはいえ、二人は互いに仲が悪いので、私亡き後は国を二つに割ってしまうのではないかと危惧しているが。
なのに。
ここまで尽くしてくれ、支えてくれた君を、私は裏切ってしまった。
君は、私のことを憎んでいるのだろうな。
当然だ。
私は周囲に圧され、保身のために帝国の民を実験材料として蘇生魔法の研究を行っていた君を摘発し、絶対に逃れることのないネヴィル山の閉ざされた監獄へ幽閉したのだから。
しかも君に魔法を一切使えないよう、全身に封印を施して。
だが、こうでもしなければ、私を支えるために肉体改造を行った君を止めることができない。
様々な魔族の身体を移植してできた、その美しくも禍々しい君を。
君は全てを捧げてくれたのに、私はそれを仇で返す。
思えば、初めて逢った時からずっと、君には仇しか返したことがない。
でも、それでも私は、死してなお最後に仇で返そうと思う。
シェリル。
我が愛しのシェリル。
君がこの手記を読んでいるのが明日なのか、来年なのか、十年後なのか、それとも百年後なのか。
それは、私にも分からない。
だが、いずれこれを読んだのならば、私がこの後記したことを受け入れてくれると至上の悦び。
シェリル。
愛しのシェリル。
君のために用意した、この手記と共に我が手にあるこの小瓶を、どうか君の可愛らしい口の中に収めてくれ。
この私のために咲き乱れてくれ。
そして。
この私を、君の赤い血で彩ってくれ。
我が子、サウザンクレイン皇国の未来のために。
いつか、その日がやって来ることを夢見て。
――ナイジェル=フォン=サウザンクレイン。
お読みいただき、ありがとうございました!
少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、
『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!
評価ボタンは、モチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!




