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【絶賛発売中!】僕は七度目の人生で、怪物姫を手に入れた(web版)【コミカライズ連載中!】  作者: サンボン
最終部 僕は七度目の人生で、怪物姫との幸せを手に入れた
223/241

金属の棺

「僕は七度目の人生で、怪物姫を手に入れた」の発売まで、あと3日!


7月20日発売ですので、どうぞよろしくお願いします!


▽特設サイト▽

https://fantasiabunko.jp/special/202207seventhtime/


書籍の帯には重大発表あり!

お見逃しなく!

「さて……それで、ここはどこなんじゃ?」


 大公殿下が周囲を見回しながら、首を傾げる。

 あのアイシス川の転移魔法陣のある部屋と同様、四角い部屋、なんだけど……。


「む……出口が見当たらんな……」


 そう……この部屋は四方を石壁で囲まれ、出口がない。


「とにかく、調べてみるしかなさそうですね」

「はい……」


 僕達は壁や地面、それに天井を入念に調べる。


 すると。


「フフ……巧妙に隠していますが、これは隠し通路のようですね」


 僕やメルザと反対側の壁を調べていたアビゲイルが、そう言ってクスリ、と微笑んだ。


「本当ですか?」

「ええ。壁のこの部分だけ、音が違いますから」


 アビゲイルがダガーの柄頭で壁を叩くと、乾いた音が鳴った。

 これは、向こう側が空洞になっている証拠だ。


「ふむ……みんな、退いてくれ」


 モニカ教授が背中から大剣グレートウォールを抜き、切っ先を壁へ向けて構える。

 それを見た僕達は、慌てて壁の(そば)から離れた。


「はああああああああああああッッッ!」


 掛け声と共にモニカ教授は思いきり地面を蹴り、壁へと突撃する。


 そして。


「……アビゲイルさんの言ったとおり、ですね」


 破壊された壁の向こうから、奥へと続く石畳の通路が現れた。


「メルザ、通路の向こうから何か感じたりしますか?」

「いえ……」


 念のためメルザに確認するけど、彼女は少し唇を噛みながらかぶりを振った。

 確かにメルザは、人間の悪意(・・)()であれば見抜けるけど、残念ながら魔物に対してはその能力が通用しないことはあの地下洞窟で判明した。


 だけど。


「メルザ……そんな顔しないでください。向こうに悪意(・・)を持った人間がいないということが分かるだけでも、僕達にとってすごく有益なんです。それ以外でも、どれだけあなたが僕を支えてくださっているか……」

「あ……ヒュー……」


 メルザの頬に手を添え、僕はニコリ、と微笑んだ。

 すると悔しそうな表情を浮かべていたメルザは、蕩けるような笑顔に変えた。


 うん……やっぱりメルザには、いつも笑顔でいてほしい。


「はっは……婿殿がいれば、私はいつでも逝けるわい……」

「っ!?」


 大公殿下の呟きに、僕は勢いよく振り返った。


「な、何をおっしゃっているんですか! 僕はまだ、大公殿下から全てを教わっていません! まだ……メルや僕を置いて行かないでください……!」

「そうです! そんな悲しいことを言わないでください! お爺様には、私とヒューの幸せな姿をずっと見守っていただかないといけないんです!」


 僕とメルザは大公殿下に詰め寄り、必死に訴える。

 僕は……大切な家族を、()を、失いたくはない。


「ん? はっは! 当然じゃ! 私もひ孫を見るまでは死ねんわい!」


 大公殿下が一瞬キョトン、とした後、僕とメルザの背中を叩いて豪快に笑った。

 も、もう……心配させないでくださいよ……。


「ふふ……ヒューゴ君、メルザ君、そろそろいいかな?」

「あ、は、はい。行きましょうか」


 苦笑するモニカ教授に声を掛けられ、僕は頭を掻きながらメルザの手を取って通路へと入った。

 その後を、大公殿下、モニカ教授、アビゲイルと続く。


「……大公殿下、よかったですね」

「うむ……」


 そんなモニカ教授と大公殿下のやり取りが聞こえ、僕とメルザは微笑み合った。


 ◇


「……行き止まりみたいですね」


 石畳の通路の最奥までたどり着き、目の前の壁を見てアビゲイルが呟いた。

 だけど、最初の部屋と同じように、この向こうに隠された空間があるとみて間違いないだろう。


「はっは! なら、次は私がするかの!」


 そう言うと、大公殿下は嬉しそうにハルバードを構える。

 様子から察するに、どうやら身体を動かしたくて仕方がなかったみたいだ。


 その証拠に。


「ふふ……お爺様、張り切り過ぎないでくださいね?」

「分かっておるわい!」


 大公殿下のことを誰よりも熟知しているメルザが、僕の隣で苦笑しているし。


 そして。


「そうりゃああああああああッッッ!」


 掛け声一閃、大公殿下は通路の壁や天井を巻き込みながら、勢いよく振り回したハルバードを目の前の壁に叩きつけた。


「フフ……案の定、隠し部屋がありましたね」


 粉々に砕けた壁の先に見える暗闇を見て、アビゲイルがクスクスと笑う。

 だけど、これは……。


「かなり広い部屋のようですね……」

「はい……」


 僕は松明(たいまつ)の炎を高く掲げるが、うすぼんやりとした暗闇の先が一切窺えない。


「とにかく、中に入ってみよう」

「はい」


 モニカ教授の言葉に頷き、僕達は部屋の中へと足を踏み入れる。

 周囲を警戒しながらゆっくりと奥へと進むと。


「これは……」


 現れたのは、金属製の無骨な()だった。

お読みいただき、ありがとうございました!


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