新たな転移魔法陣
「僕は七度目の人生で、怪物姫を手に入れた」の発売まで、あと6日!
7月20日発売ですので、どうぞよろしくお願いします!
▽特設サイト▽
https://fantasiabunko.jp/special/202207seventhtime/
書籍の帯には重大発表あり!
お見逃しなく!
そして、物語はいよいよ最終章へ!
七度目の人生の果てにある、ヒューとメルザの幸せの軌跡を、どうぞお楽しみくださいませ!
橋梁工事を始めてから、ちょうど一週間。
「ヒュー! ヒュー!」
兵達の指示しながら橋を支える柱を建てている中、大声で僕の名前を呼びながらメルザが駆け寄って来た。
「メルザ、どうしたのですか?」
「は、はい! 例の紋様の石を掘り進めたその先に、新たな魔法陣が現れました!」
「っ!? ほ、本当ですか!?」
メルザの報告に、僕は驚きの声を上げた。
「と、とにかくヒュー、来てください!」
「は、はい!」
メルザに手を引かれ、僕はその魔法陣が見つかった場所へと向かう。
「メルトレーザ様! それにヒューゴ!」
「すいません! 中に入ります!」
「は、はっ!」
紋様の石を採掘している坑道の入口にいた兵士が、中へと向かう僕達を敬礼して見送る。
そして。
「これが……」
「そうです。確認しましたが、おそらくは転移魔法陣だと思います」
坑道の先に不自然に現れた人工的な四角い空間。
その地面に、直径三メートルほどの魔法陣が描かれていた。
「転移魔法陣……ということは、サウセイル教授の……」
「いえ、あの人の使う転移魔法陣とは違います」
僕の呟きを聞き、メルザが明確に否定した。
「そうなのですか?」
「はい……実はこの魔法陣、私も知らないような文字や紋様が描かれています。ほら、ここを見てください」
そう言ってメルザが指差した先には……っ!?
「こ、これは、あの見つかった紋様の石と同じ……!」
驚く僕を見て、メルザが無言で頷いた。
じゃ、じゃあ、この転移魔法陣はやはり何かの目的や意図があって……。
「……だったら、この魔法陣の転移先に行ってみるしかありませんね」
「っ!? それは危険です、ヒュー! 転移した先に何が待ち受けているか分からないのですよ!」
僕の言葉に、メルザが詰め寄った。
確かに彼女の言うとおり、魔法陣の先が例えば深い海の底だったり、あるいは大量の罠が仕掛けられていたりしたら、それこそ命はないだろう。
だけど。
「……メルザ、これは僕の勘なのですが、ひょっとしたら皇都の地下にある洞窟と関連があるのではないかと、僕は考えています」
「あの地下洞窟と、ですか……?」
「はい」
そう……あの地下洞窟も、サウセイル教授が利用したとはいえ、元々は皇都の地下に古くから存在していたことが分かっている。
しかもあの洞窟は、皇都そのものを転移させてしまうほどの巨大な魔法陣だった。
だから。
「ひょっとしたら、あの地下洞窟の転移魔法陣とこの転移魔法陣は、その行き先が同じなんじゃないか、そう考えたんです」
「あ……」
そう説明すると、メルザはその真紅の瞳を見開いた。
「……あの地下洞窟の存在を知って以来、僕はその目的や理由を考えていました。そして、可能性の一つとしてこう考えました」
僕の考えた可能性。
それは。
「……僕達のいる皇都が、実は別の場所から転移してきたのではないかと」
「っ!? ま、まさか!」
「ですが、そう考えれば色々と納得できるんです。どうしてあの地下洞窟が、皇都中心部を全て納めるほどの大きさなのか、どうして巨大な転移魔法陣が皇都の真下にあるのか」
「そ、それは……」
あまりにも話の規模が大きすぎて理解が追いつけないものの、メルザも僕の話を聞いて納得できる部分があったんだろう。
彼女は戸惑いながらも、そっと目を伏せた。
「ですので、僕は転移したその先を確かめてみたいんです。そこに何があるのか、あのサウセイル教授が、どうして皇都を転移させようとしたのかを」
「ヒュー……」
僕が言っていることが、無謀なことだというのは分かっている。
だけど、それを知らなければ、あのサウセイル教授の本当の目的が分からないと思うから。
「……分かりました」
「っ! メルザ……」
「ですが、転移をするなら絶対に私も一緒です。そうでないのならば、私はどんなことをしてでもヒューを止めます」
凛とした表情を浮かべ、メルザはその真紅の瞳で僕を見つめる。
そこに、絶対に譲らないという明確な意思を込めて。
「……本当は転移した先に何があるか分からない以上、あなたは連れて行きたくはありません」
そんなことを言ってみるけど、メルザが折れないことは分かっている。
それに、僕と同じ思いをメルザに強いていることも。
「メルザ……一緒に行きましょう。僕は、いつも愛するあなたと共に」
「ヒュー……はい!」
僕とメルザは、魔法陣の前で抱きしめ合うと、どちらからともなく顔を寄せ。
「ん……ちゅ……」
僕達は、互いの唇を求め合った。
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