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目的地、アイシス川へ

「僕は七度目の人生で、怪物姫を手に入れた」の発売まで、あと7日!


7月20日発売ですので、どうぞよろしくお願いします!


▽特設サイト▽

https://fantasiabunko.jp/special/202207seventhtime/


書籍の帯には重大発表あり!

お見逃しなく!

「ヒュー……ヒュー……」


 優しく呼ぶ愛する女性(ひと)の声に僕は意識を取り戻し、ゆっくりと目を開けると。


「あ……ふふ、起きました?」


 そこには、慈愛に満ちた微笑みを浮かべる、メルザの美しい顔があった。


「あはは……あまりにも気持ちよくて、眠ってしまいました」

「ふふ、ヒューの寝顔、すごく可愛らしかったですよ?」


 メルザの膝に乗せている僕の頭を、彼女が優しく撫でる。

 柔らかい太ももの感触も相まって、それだけで僕は、また夢の世界に誘われてしまいそうだ。


 とはいえ。


「起こしてくださったということは、もう到着したんですよね?」

「はい……残念ながら」


 僕は名残惜しさを感じつつ身体を起こしてそう尋ねると、メルザは肩を落とした。


 なので。


「そ、その……馬車を降りる前に、膝枕をしてくださったお礼として、僕の血を飲んでいただけませんか?」


 少しでもメルザとの二人きりの時間を引き伸ばそうと、そんなことを提案してみた。


「あ……よ、よろしいのですか……?」

「もちろんです。僕の血も、あなたに飲んでほしそうにしていますし、何より、あなたが僕の血を飲む時は、同じように僕も幸せを感じることができますから……」


 真紅の瞳をこれ以上ないほど輝かせるメルザに、僕は強く頷いた。

 そう告げたように、メルザの唇が、牙が、僕の首筋に触れている時は、本当に嬉しいんだ。


 だから。


「メルザ……」

「はい……かぷ……ふ……ん、んく……」


 そっと抱き寄せると、メルザは首筋を噛み、喉を鳴らしながら僕の血を堪能する。


「ぷあ……はああ……! どうしてこんなにも、世界一愛しい御方の血は私の心を潤してくれるのでしょうか……!」


 頬に手を当て、メルザは恍惚の表情を浮かべた。

 その姿が、僕の心をこれ以上ないほど高鳴らせる。


 だから。


「メルザ、失礼します」

「んっ!? ……ん……ちゅ……ちゅく……」


 僕はグイ、とメルザの顔を寄せ、少し強引に口づけをした。

 最初は驚いたものの、メルザもすぐに僕の唇を求めてくれた。


「ちゅ……そ、その、メルザの可愛らしい唇に僕の血が付いていたものですから……」

「は……ふふ、ありがとうございます……」


 メルザは桜色の唇を舌で舐め、妖艶な表情を浮かべる。

 そんな彼女に吸い込まれそうになるが、さすがにこれ以上は時間がない。


 なので。


「メルザ……続きは、今日の分の仕事が終わってからにしましょう」

「あ……はい……」


 メルザに手を差し出してそう告げると、彼女は少し残念そうに僕の手を取った。


 でも。


「約束……ですからね……?」


 馬車から降りる時、蠱惑的な笑みを浮かべたメルザが、耳元でそうささやいた。


 ◇


「それで、次は……」


 橋梁工事の段取りについて、僕はパートランド卿から師事を受けている。

 だけど……過去六回の人生では建築関係について学んだことがないから、本当に一から真剣に勉強しないと……。


「……ということですが、よろしいですか?」

「はい、ありがとうございます」


 説明を終えたパートランド卿の念押しの確認に、僕は頷いた。

 いや、教え方がすごく上手で分かりやすかった。


 さすがは大公軍の実務を一手に引き受ける、大公殿下の右腕だなあ……。


「? どうしました?」

「い、いえ、何でもありません」

「?」


 尊敬の眼差しで見つめていたら、パートランド卿に不思議そうな顔をされてしまった。


「では、早速取り掛かるとしましょう。作業を行うのは大公軍の兵ですので、ヒューゴさんもやりやすいでしょう」

「はい」


 ということで、僕は段取りどおりに兵達に指示……というほどでもないけど、指揮を執りながら橋梁工事を着工した。


 そして。


「ははは! 相変わらずヒューゴは尻に敷かれてるなあ!」

「あ、あはは……」


 とりあえず今日の分の作業が終了し、僕は大公軍の兵士のみなさんに弄られていた。

 もちろん、僕とメルザの仲について。


 といっても、みなさんは僕達のことを温かく見守ってくれていることは分かっているし、何より、僕がいつも(のろ)けてしまうからこうなってしまうので、苦笑するしかない。


 すると。


「ふふ……ヒュー、みなさん、お疲れ様でした」

「あ、メルザ」

「「「「「メルトレーザ様!」」」」」


 僕の時とは打って変わり、兵士のみなさんは直立不動になって一斉に敬礼した。

 あ、あははー……メルザは大公殿下が溺愛する孫娘だから、こんな反応になるのも仕方ないんだけどね……。


「メルザ、例の石の調査はいかがでしたか?」

「はい……やはり、屋敷でお爺様から見せていただいたものと、この川にある他の石とは同一でした。含まれている魔力量も」


 そう言うと、メルザは少し肩を落とした。


「あはは、まだ今日は初日なんです。明日になれば、何か発見があるかもしれませんから」

「ヒュー……はい!」


 僕の慰めの言葉に、メルザは笑顔で返事してくれた。

 うん……ただの気休めの言葉かもしれないけど、それでも、メルザが元気になってくれてよかった。


「ハハハ! ヒューゴ、そういうところだぞ?」

「完全にメルトレーザ様一筋じゃないか!」

「それに関しては、一切否定しません!」


 (はや)し立てる兵士のみなさんの言葉に、僕は全力で肯定した。

 僕がメルザ一筋なのは、当然のことだからね。


「あう……も、もう、ヒューったら……」


 するとメルザは、顔を真っ赤にしながらも、嬉しそうに口元を緩めていた。


 ◇


 橋梁工事を始めてから、ちょうど一週間。


「ヒュー! ヒュー!」


 兵達の指示しながら橋を支える柱を建てている中、大声で僕の名前を呼びながらメルザが駆け寄って来た。


「メルザ、どうしたのですか?」

「は、はい! 例の紋様の石を掘り進めたその先に、新たな魔法陣が現れました!」

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