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大公殿下の想い

「僕は七度目の人生で、怪物姫を手に入れた」の発売まで、あと8日!


7月20日発売ですので、どうぞよろしくお願いします!


▽特設サイト▽

https://fantasiabunko.jp/special/202207seventhtime/


書籍の帯には重大発表あり!

お見逃しなく!

「メ、メルよ、待つんじゃ!」


 リディア令嬢のパーティーから帰宅するなり、メルザは執務室へと真っ直ぐ向かい、仕事をしていた大公殿下を詰問する。

 そのあまりの剣幕に、大公殿下は頭を抱えながらひたすら謝っていた。


「いいえ、待ちません。そもそも、そんな大事な話をどうして私達に先に言わなかったのですか」

「そ、それは、今後の婿殿とクリフォード殿下が良好な関係を内外ともに示す意味合いがあるのと、クリフォード殿下自身に皇国に迫っておる危機について認識してもらうため……」

「だとしても、あらかじめ私達にお話しいただいてもよかったのでは?」


 メルザはニタア、と口の端を吊り上げ、大公殿下を追い込んでいく。

 それを傍観している僕は、必死で助けを求める大公殿下の視線から目を逸らしつつ、こうやって怒るメルザの愛おしさに見惚れていた。


 そして。


「……次はありませんよ?」

「ぐふう……わ、分かったわい……」


 ようやくメルザに許してもらい、大公殿下は青い顔で机の上に突っ伏した。


「そ、それでじゃな、今回の橋梁工事には、我が大公軍の兵が当たることになっており、婿殿の副官にはオリバーをつける」

「パートランド卿がですか!」

「うむ、あやつは戦場での工作も見事でな。必ずや婿殿の成長につながるはずじゃ」


 そう言うと、大公殿下は口の端を持ち上げた。

 あはは……本当に、僕のことをいつも考えてくださって……。


「ありがとうございます。この任務、見事成し遂げてみせます!」

「はっは! 期待しておるぞ!」

「はい!」


 豪快に笑う大公殿下に、僕は元気よく応えた。


「ふふ……それでお爺様、私の仕事(・・・・)になる紋様のある石の調査ですが、どのような紋様なのですか?」

「おお、そうじゃった」


 大公殿下は机の引き出しを開け、中から小さな石を取り出した。


「これは……」

「全部ではないのじゃが、アイシス川の地下からかなりの量の石が採掘された。しかも、大きさも形も寸分違わずな」


 まじまじと見つめるメルザに、大公殿下が説明する。


「メル、どうじゃ?」

「はい……紋様そのものは魔法陣とは違うようですが、この石そのものには微量の魔力が宿っていますね……」

「ほう……?」


 メルザの言葉に、大公殿下が顎鬚(あごひげ)を撫でた。


「いずれにしても、一つ一つの石であれば問題ないと思いますが、これが大量にとなると、何かしらの影響があるかもしれません」

「ふむ……やはり、あの川一帯を調査する必要がありそうじゃの。何せ、地下洞窟での一件もある」

「「はい」」


 やはりこれは、サウセイル教授の仕業なのだろうか……。

 だけど、あの洞窟もサウセイル教授は利用こそしたが、元々は最初から皇都の地下にあったもの。

 そう考えれば、彼女とは別の何かによるものなのかもしれない。


「ふふ、いずれにしましても、調査をしてみなければ始まりません。ですから」


 メルザがしな垂れかかり、僕の眉間を人差し指でそっと押した。

 あ、あはは……どうやら顔に出ていたみたいだ。


「そ、そうですね。メルザなら、どんな魔法が施されていたとしても、すぐに見抜くことができますから」

「はい! 任せてください!」


 僕の言葉に、メルザは笑顔で応えてくれた。


 ◇


「メル、婿殿……気をつけるんじゃぞ」

「大丈夫ですよ、お爺様。さほど離れた場所でもありませんし、週に一度は屋敷に戻りますから」

「う、うむ……そ、それはそうじゃが……」


 心配そうな表情で見送りに来た大公殿下に、メルザは苦笑する。

 でも、まんざらではないようだ。


「それに私には、私だけの(・・・・)騎士様(・・・)がいらっしゃいます。だから、心配いりません」


 そう言って、メルザが真紅の瞳で僕を見つめながらニコリ、と微笑んだ。

 そんな彼女に応えるように、僕は胸に手を当ててお辞儀をした。


 メルザを護る、たった一人の騎士として。


「では、行ってきます」

「くれぐれも気をつけるんじゃぞー!」


 僕達の馬車が見えなくなるまで、大公殿下が手を振り続ける。

 あはは、本当に身内には過保護だなあ。


「ふふ……お爺様ったら、仕方ありませんね」

「当然ですよ。大公殿下にとって、メルザは宝物ですから」

「もう……何をおっしゃっているんですか。お爺様は、ヒューを心配されているのですよ?」

「あ……あ、あはは……」


 少し呆れた表情でメルザが告げると、僕は誤魔化すように苦笑いをした。

 だって……そんなの、嬉しすぎるから、照れくさくて……って!?


「メ、メルザ!?」

「ふふ、ヒューはやっぱり分かりやすいですね」


 メルザに突然頭を抱きしめられ、僕はしどろもどろになる。

 し、しかも、顔がメルザの胸に挟まれてるんだけど!?


「ヒュー……私の愛おしい御方……」

「メルザ……」


 胸の中から覗いたメルザの幸せそうな表情を見て、目的地であるアイシス川まで、僕は彼女に甘えた。

お読みいただき、ありがとうございました!


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