パーティーへの出席
幕間という名の番外編です。とりあえず、週二、三回のペースで更新予定です。
また、新作始めましたのでよろしくお願いします。
「ヒューゴ様、こちらの服のほうがいいと思います」
「いいえヒューゴ様、メルトレーザ様は絶対にこちらのほうが喜ばれます!」
皇都消失を図って現れたサウセイル教授達を退けてから一か月後。
今日は、第一皇子の婚約者であるリディア令嬢の招待を受け、パーティーに出席することになっている、んだけど……。
「「ヒューゴ様! どちらになさいますか!」」
「う、うん……」
ヘレンとセルマにずい、と詰め寄られ、僕は思わずたじろぐ。
もちろん、最高に美しいメルザをエスコートするのだから、僕も相応しい格好をしなければいけないのは分かるんだけど、その……なんで姉妹揃って僕以上に気合いが入っているんだよ……。
「ぼ、僕のこともだが、二人も同じくパーティーに出席するんだから、そちらの準備はいいのか?」
「「ヒューゴ様が私のお薦めする服をお選びになられたら、すぐに支度します!」」
「ええー……」
どうやら、すぐに僕が服を決めないと、二人に迷惑がかかることになってしまうようだ。
なお、今日のパーティーはミラー子爵家も招待を受けているので、セルマが出席するのは当然だし、ヘレンについてはメルザの侍女として出席する。
……ヘレンも、久しぶりに家族に逢えるのだから、僕のことよりも自分を優先してくれればいいのに。
「「それで! どちらになさいますか!」」
「じゃ、じゃあ……」
ということで、仕方なく僕はサーコートはヘレンの、それ以外はセルマの選んだものを着ることにした。
二人は納得がいっていないようだが、埒が明かないので渋々了承してくれた。
ということで、僕は服を着替えてメルザの部屋へと向かう。
もう、支度を整え終えているだろうか……。
――コン、コン。
「メルザ……」
僕はノックすると、扉をゆっくり開けておずおずと部屋の中を覗く……っ!?
「あ……」
なんと、メルザはちょうどコルセットを装着しているところで、その……要は下着姿だった。
「すす、すいません!」
僕は慌てて部屋の扉を閉め、顔を覆ってその場でうずくまる。
うう……失敗した……。
というかメルザも、着替えの最中ならノックした時に言ってくれればいいのに……。
だけど。
「……メルザ、ものすごく腰が細くて手足も長くて、その……綺麗、だったな……」
一瞬だけ見たメルザの姿を思い出し、僕は思わずのぼせてしまった。
◇
「お、お待たせしました……」
「あ、い、いえ……」
ドレスに着替え終えたメルザに招かれ、部屋の中に入ったけど……さっきの光景が頭に焼き付いて、恥ずかしくてメルザが見られない……。
「……ヒューゴ様、メルトレーザ様が待っておられますよ?」
「わ、分かっているよ」
後ろに控えるヘレンに急かされ、僕は恥ずかしさを堪えて顔を上げると……。
「うわあああ……!」
メルザのあまりの美しさに、僕はただ感嘆の声を漏らした。
長く艶やかな黒髪をハーフアップに綺麗にまとめ、毛先の白がコントラストとなってより際立っている。
黒を基調としたシックなドレスも、メルザの透き通るような白い肌と相まって、本当に素敵だ。
それに。
「今日はルビーの首飾りをしているのですね……」
「あ……お気に召しませんでしたか……?」
僕の言葉に、メルザが上目遣いで不安そうに尋ねる。
あまりの彼女の美しさに惚けてしまっていたせいで、勘違いさせてしまったみたいだ。
「まさか……とてもお似合いですし、僕はあなたの瞳の色と同じルビーは一番好きな宝石ですよ」
「ふふ、よかった」
メルザは安心したのか、胸を撫で下ろしながらクスリ、と微笑んだ。
ああ……もう我慢できない。
「あ……ヒュー……」
「メルザがいけないのです。あなたが、こんなにも素敵だから……」
僕はメルザを強く抱きしめ、その髪に顔を寄せると、金木犀の香りが、僕の鼻をくすぐった。
僕の、好きな花の香りだ……。
「メルザ……今日のパーティー、絶対に僕から離れないでください。それと、僕以外の男とは絶対に踊ったりしないでください」
「ふふ、もちろんです。ヒューこそ、私以外の女性に目移りしたりしないでくださいね?」
「それこそあり得ません。メルザより素敵な女性は、この世界にはいないのですから」
「もう……」
僕の胸に顔をうずめながら、メルザが苦笑する。
「ね……ヒュー……」
「はい、どうぞ」
真紅の瞳を潤ませながら、上目遣いでおねだりするメルザに、僕はシャツのボタンを一つ外して首筋を露わにしてみせた。
「かぷ……んく……ん……ぷあ」
「美味しかったですか?」
「はああ……! 当然です……! 愛する人の血ほど、私を満たしてくれるものはありません……!」
両手で頬を押さえ、メルザは恍惚の表情を浮かべる。
そんな彼女の持つヴァンパイアとしての艶かしさに、僕はただ見惚れてしまっていた。
お読みいただき、ありがとうございました!
また、新作を始めました!
これまでの人生で全ての者から虐げられて毒殺されかけた厄災の皇子は、優しく受け入れてくれた属国の美しい公女殿下と共に復讐を果たし、最高の幸せを手に入れました
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