皇都の攻防②
「おおおおおおおおおおおおおおッッッ!」
激しくも雄々しい“戦鬼”の雄叫びと共に、僕はサウセイル教授へ向けて矢のように放たれた。
そして。
「っ!? ここまで来るなんて、どこまで目障りなんですか~!」
「知りませんよ! なら、初めから出てこないでくださいッッッ!」
素早く斬りかかった僕から、サウセイル教授は転移魔法で素早く距離を取った。
僕はそのままの勢いで六人へと迫る。
「あなた達! すぐに逃げなさい~!」
「「「「「「っ!?」」」」」」
サウセイル教授の叫びに、六人は一斉にその場から散り散りに逃げる。
「チッ! 逃したか!」
僕とモニカ教授、それにサウセイル教授は、そのまま地上の建物へと着地した。
だけど……妙だな。
前回、それとオルレアン王国での戦闘の際には、六人はもっと積極的に戦おうとしていた。
その時は、どこか自分の生命を軽んじるような戦い方だったのに、今日はかなり慎重になっている。
……ひょっとして。
「メルザ! サウセイル教授よりも、誰でも構いませんのであの六人を優先して攻撃してください!」
「分かりました! 【雷火球】!」
メルザは稲妻をほとばしらせる巨大な火球を、六人……いや、エタンへと向けて放った。
「っ!? チクショウ! 俺かよ!」
「……させない」
それを見たエタンが迫りくる火球から必死に逃げ出すと同時に、翼の少女が魔法を掻き消そうと割って入った。
「今だっ! 大公殿下! 六人目がけで矢を射かけてください!」
「任せい! 皆の者、聞いたな! 放てえええええッッッ!」
「「「「「おおおおおーッッッ!」」」」」
皇都の各所から、大量の矢が放たれる。
「モニカ教授! アビゲイルさん! 僕達ももう一度行きます!」
「う、うむ! だが、どうして急に六人に?」
「話は後です!」
「あは♪」
僕達は建物から一気に飛び出し、武器を構えて六人へと迫った。
「あああああ! 本当に面倒だわ!」
「はやく! 逃げよう!」
「そうだ! 逃げよう!」
エタンだけでなく、ハニーブロンドの女や双子の少女も一目散に距離を取ろうとする。
これで間違いない。
この六人は、今回に限って死ねない理由があるんだ。
なら。
「みんな! この勝負、サウセイル教授……いえ、この六人を倒せば、僕達の勝ちです! だから、絶対に仕留めましょう!」
「っ! 分かりました、ヒュー!」
「はっは! 承知!」
「あは♪」
「そ、そうか! 分かった!」
僕の言葉に、みんなが色めき立つ。
それに対し、サウセイル教授はといえば。
「……本当に、ヒューゴさんはますます面倒な存在になりましたね~……!」
この僕を、忌々しげに睨みつけていた。
「チクショウ! どうするよ!」
「そうよ! 今回は一人でも欠けたら終わり……いえ、私達に次はないのよ! ……って、ヒッ!?」
エタンとハニーブロンドの女が叫んだ瞬間、サウセイル教授は二人に向けて射殺すような視線を向けた。
「……あなた達、何を余計な事を言っているんですか~?」
「「もも、申し訳ありません!」」
そのあまりの威圧に、二人は顔を真っ青にして謝罪した。
へえ……次はない、ねえ……。
「それで……ヒューゴ君、六人のうち誰から片づけていく?」
「もちろん、決まっています。それは……」
僕は六人のうち、一人に目を付ける。
「あは♪ なるほど、確かにね♪」
そう言って、アビゲイルが頷いた。
そう……メルザの魔法を弾く翼を持つあの少女。アイツさえ倒せば、残りの五人はメルザの火力で一気に殲滅することだって可能になる。
「……なら、行くぞ!」
「はい!」
「あは♪」
モニカ教授の号令に、僕達三人は一斉に動いた。
あの、翼の少女を目指して。
「っ!? 来たわ!」
「チクショウ! これでも食らいやがれ! 【アシッドガス】!」
エタンが口から紫の煙を吐き、周囲に充満させる。
「ハアアアアアアアアアアッッッ!」
それを、モニカ教授が手に持つ大剣、“グレートウォール”を勢いよく振り回し、紫の煙が煽られて霧散する。
本当に、勉強しない奴だ。こちらが風下じゃない時点で、意味がないというのに。
「クッ!? 来やがれ!」
観念したエタンは二丁の斧を持つと、僕達を迎え撃つ。
だけど。
「っ!? 俺を飛び越えた!?」
「あは♪ お呼びじゃないの♪」
エタンの肩を蹴り、アビゲイルが皇都の夜に舞った。
そして。
「じゃあね♪」
「……っ!?」
翼の少女に飛び乗り、その脳天に二本のククリナイフを突き落と……「させないわよ! 【エウリュアレ】!」……っ!?
ハニーブロンドの女がそう叫ぶと、翼の少女の身体を這いながら黄色の大蛇が大口を開け、ククリナイフごとアビゲイルの腕を飲み込む。
その瞬間。
「……あ」
「悪いね」
僕は翼の少女の首を、黄色の大蛇の胴体と一緒に一閃した。
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