五対六
新作始めました。
そちらもよろしくお願いします。
「興味ありません。【雷槍】」
「「「「「「っ!?」」」」」」
メルザは澄ました表情で雷の槍を六人に向けて放った。
「…………………………」
「ちょっと! 何すんのよ!」
直撃する前に、翼の少女がメルザの魔法を防いだ。
その陰で、あの下品な女が大声で叫んでいる。その姿も品がないな。
「はっは! さて婿殿、あの六人なかなかの手練れじゃが、どう戦う?」
「そうですね……この前の戦闘の限りですと、僕達の誰かがあの六人のいずれと戦っても、負けることはないと思います」
「そうじゃの。確かにメルの魔法を弾く翼といい毒を使ったりといい、なかなか厄介な能力を持っておるとはいえ、実力そのものは一段低いしの」
そう言うと、大公殿下は顎鬚を撫でながら口の端を持ち上げた。
「ふむ……では私は、あの双子の姉妹を相手にするとしよう」
モニカ教授が背中の大剣“グレートウォール”の柄を握り、一気に振り下ろして構える。
「あは♪ じゃあ私は、あの下品な女にしようかしら♪」
二本のククリナイフを器用に回しながら、アビゲイルがニタア、と口の端を吊り上げた。
「メルザはあの大道芸人の相手をしていただいてもいいですか? 翼の少女は、僕が戦います」
メルザにそう告げると、僕はサーベルの柄を握りながら翼の少女を見据える。
普通に物理で戦ってもメルザのほうが強いことは分かっているけど、それでも魔法を無効化するあの翼は厄介だからね。
「おや、まさかあの真祖の娘と戦えるなんて、幸運ですね」
「っ!? お母様を知っているのですか!?」
「もちろん」
大道芸人は、澄ました表情で頷いた。
確かメルザの父君が先の戦で行方知れずになり、それを探しに行くためにオルレアン王国に向かったはず。
……ひょっとして、メルザの両親が行方不明になったのも、サウセイル教授とこの六人が絡んでいるんじゃ……。
「……これは、この連中を絶対に倒さなければいけなくなりましたね」
「はい……っ!」
メルザが口元の幻影魔法を解き、その牙を剥き出しにした。
「さあ、行きます!」
僕達は、“グラン・グリモワール”を名乗る六人の男女へと一斉に襲い掛かった。
◇
「……本当に厄介」
「それはどうも!」
六人の男女との戦闘が始まり、僕は翼の少女が放つ無数の羽根をサーベルで全て叩き落とす。
数は多いけど、それほど速くもないので叩き落すのは容易だ。
「それで、どうする? この攻撃だけでは、僕に通用しないことは分かっただろう。素直に僕の問いに答えてくれるのなら、悪いようにはしないけど?」
もちろんこれは嘘だ。
サウセイル教授の陰謀、そしてメルザのご両親について聞き出したら、即座に首を刎ねる。
「……ハア、この程度で勝った気になっているなんて、拍子抜け!」
「そうかい!」
再び放たれた羽根を、同じように叩き落とす。
先程からこれを繰り返しているから、気づけば足元は羽根で埋め尽くされていた。
その時。
「……馬鹿」
「っ!?」
叩き落したはずの羽根が下から上へと一気に襲い掛かってきた。
「ぐ……っ!?」
そのほとんどをもう一度叩き落とすものの、数が多すぎて何本かの羽根が身体に突き刺さってしまった。
「……このまま大人しく従うなら手加減してあげる。あなたはシェリル様のお気に入りだから」
「はは……それは光栄なのか屈辱なのか、判断に迷うところだな……」
そう言って、僕は苦笑する。
さて……地面にある羽根については、さっき攻撃された際に二度と使えないよう、単に叩き落とすのではなくて両断にしてある。
なので、先程のような攻撃を再び行うことはできないだろう。
となると、また同じようにあの少女の翼から射出される羽根を防ぐことになりそうだ。
全く……面倒だな。
「とにかく、続きを始めようか」
「……分かった。なら死ね」
また馬鹿の一つ覚えのように、翼から羽根を射出する少女。
当然僕は全ての羽根を両断すると、一気に少女に詰め寄った。
「終わりだ」
僕はサーベルを返し、その細い首を狙……っ!?
「……残念」
なんと、少女の翼が三対六枚に分かれ、まるで腕のように僕のサーベルを防いだ。
「本当に、面倒な翼だよ!」
「……今度は私の番」
三対六枚の翼全てを腕のようにして伸ばし、一斉に襲い掛かってくる。
サーベルで斬りつけるも、翼はかなり硬質化されているようで、刃が通らない。
ハア……仕方ない。
「……っ!?」
僕は溜息を吐くと、六枚の翼の攻撃を全て躱した。
そもそも、翼の根本が少女の背中と繋がっている上に、その大きさや長さに限界がある以上、それを見切りさえすれば躱すことは難しくない。
そして。
「……ああああああああッッッ!?」
少女の背後に回り込んだ僕は、翼の根本……つまり、彼女の背中を斬り裂いて翼を抉り落とした。
どれだけ翼を硬質化させようが、彼女自身は生身の身体だからね。
「さあ、これで終わりだ」
「……甘い。たとえここで私を殺したところで、私はまた蘇る。その時こそ、オマエの最後……っ!? ガ……フ……ッ」
「そんなことは分かっている」
僕はうなじの部分から少女の首をサーベルで串刺しにし、その息の根を止めた。
お読みいただき、ありがとうございました!
また、本日から新作の投稿を開始しました!
十年間繰り返される悪夢で幾千の死を乗り越え、僕は婚約破棄されて『迷宮刑』に処せられた地味で優しい子爵令嬢を救い、幸せになりました。
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