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皇都の地下へ

「では、まいるとするかの」

「「はい」」


 次の日の朝、僕とメルザ、そして大公殿下は、馬車に乗って例の地下へと通じる穴があるという場所へと向かう。


 サウセイル教授の企みを、阻止するために。


「それで、まだ地下への探索はされていないんですよね? その上で、どうしてそこがサウセイル教授の仕掛けた転移魔法陣があると踏んだのですか?」

「おお、そういえばまだ話しておらなんだな。実は、その穴を隠してあった場所には、数人が通れるだけの転移魔法陣の痕跡と、例の魔石がいくつかあったんじゃ」


 大公殿下が顎鬚(あごひげ)を撫でながら説明する。

 なるほど……そこからその地下への穴の先に、何かがあると踏んだんだな……。


「いずれにせよ、穴の中に入らねば何も分からぬ。それも、闇雲に兵達と投入しても、それはそれで無駄に命を落とすことにもなりかねんからの」

「はい……」


 確かに、サウセイル教授に対抗できる実力者となれば、この国では僕達三人に加え、モニカ教授とアビゲイルくらいだろう。


 ……もっと、個の力を集めていく必要があるな。


「大公殿下、僕から一つ提案があるのですが……」

「? なんじゃ?」

「はい。今回の探索が終わった後にでも、広く人材を募ってはいかがでしょうか」

「ほう?」


 そう告げると、大公殿下は興味深そうに身を乗り出した。


「この皇国にも、優秀な人材は多くいらっしゃいますが、それでも、大公殿下に迫る実力の持ち主となれば、数えるほどもいません。一方で、サウセイル教授をはじめ例の六人の男女についても、かなりの実力の持ち主です」

「そうじゃの……」

「サウセイル教授に対抗するためには、集団の力だけでなく、個の力がかなり重要になってきています。今回の探索でも、大公殿下ご自身が出張らなくてはならない状況は、かなりまずいのではないでしょうか」

「うむう……」


 僕の言葉に、大公殿下が唸る。

 そう……毎回、このような事態が起こっては大将である大公殿下が最前線に立っている状況は看過できない。万が一、大公殿下に何かがあれば、それこそ混乱して収拾がつかなくなってしまう。


 なら、もっと大公殿下の負担を減らすためにも、僕達と同程度の実力者を多く確保しておきたい。


「婿殿の言いたいことは分かった。じゃが、私達と同程度の実力者となると、そうそう見つかるものでもあるまい」

「はい。少なくとも、皇国内で探すのはほぼ無理があるでしょう。ですので、他国と手を結んではいかがでしょうか?」

「他国と?」


 今回のサウセイル教授の企みには、当たり前だけどオルレアン王国が背後にいる。

 そして、周辺国の中には、オルレアン王国を警戒している国があってもおかしくはない。


 何故なら、オルレアン王国の動きを見れば、サウザンクレイン皇国の次は自国に食指を伸ばす可能性だってあるのだから。


「まずは、オルレアン王国に接している国のうち、友好関係を結んでいない国を中心に同盟あるいは協定を結んでみてはいかがでしょう。相手国が弱ければ弱いほど、話に乗ってくるかと」

「ふむ……それは面白いかもしれんの」

「はい。それで、同盟や協定が結べたあかつきには、向こうから人材を借りるのです。それで、不足する人材の補填が可能となるかと」


 ただし、その場合には相応の見返りをこちらも用意しなければならないけど、何より大国であるサウザンクレイン皇国の後ろ盾を得られるのだから、相手国にもメリットは大きいはず。


「うむ、分かった。此度(こたび)の探索が終わったら、皇帝陛下に進言してみよう」

「よろしくお願いします」


 僕は、大公殿下に深々と頭を下げる。

 すぐに体制強化とはいかないけど、こうやって地道に力を蓄えていけば、いざという時にサウセイル教授の陰謀を全て潰せるはずだ。


「あ……皇都の外に出るのですね」


 車窓から眺めていたメルザが、ポツリ、と呟く。


「うむ。その穴は実は皇都の外で見つかったからの。念のためにと、オリバーの奴が皇都の外壁の外まで調査してくれて正解じゃったわい」

「そうなんですね。さすがはパートランド卿です」


 門を抜け、馬車は外壁に沿うようにして進んで行くと、兵士達の幕舎が見えた。

 どうやら、あの場所に(くだん)の穴があるんだな。


「さあ、着いたぞい」

「メルザ、どうぞ」

「ふふ……ありがとうございます」


 僕はメルザの手を取って馬車から降ろすと、素早く傘を差した。


「大公殿下、それにヒューゴ殿、お待ちしておりました」


 陣頭指揮を執っていたパートランド卿が、こちらへとやって来て挨拶をした。


「うむ。では、私達は今から穴の中へと入る。地上との連携用としての兵士の選抜は済んでおるか?」

「はっ、こちらに」


 そう言ってパートランド卿が振り返った先には、男女合わせて五人の兵士が整列していた。


「うむ。ではメル、婿殿、行くとするかの」

「「はい」」


 そうして、穴の前へと来た僕とメルザは、その穴の中を(のぞ)き込む。

 これは……かなり深そうだな……。


「階段などもないため、この連結可能な縄梯子(なわばしご)で降りていただきます」


 かなりの長さの縄梯子(なわばしご)が、穴の中へと降ろされた。


「では、僕が先に降ります。メルザは、大公殿下の後から降りるようにしてください」


 そうすれば、もしメルザが万が一手を滑らせても、僕か大公殿下が助けることができるからね。


「ふふ……はい」


 クスリ、と微笑むメルザに頷くと、僕は縄梯子(なわばしご)に手をかけ、ゆっくりと穴の中へと降りていった。

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