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存在する死者達

「それで……シモン殿下、どうされたのですか?」


 食堂のテラス席で、僕とメルザ、シモン王子、クロエ令嬢の四人で食事をしながら、おずおずと尋ねる。

 十中八九、この前のオルレアン王国への潜入の件だということは分かっているけど、それでも、余計なことはできれば二人には伝えたくない。


「ああ……この際、君達が王国内で大暴れしたことは置いておく。今回は、それとは別の件だ」

「「別の件?」」


 僕とメルザは、思わず顔を見合わせる。


「実は、例のサウセイル教授に関してなのだが……クロエの実家を使って秘密裏に調べた結果、歴代国王には、“ダスピルクエット”という人物が(そば)にいたという記録が見つかった」

「…………………………」


 シモン王子の言葉に、僕は無言を貫く。

 アビゲイルの話によれば、“原初の魔女”シェリル=“ダスピルクエット”=サウセイルは、サウザンクレイン皇国建国時から存在した人物だということ。


 その“原初の魔女”については、アビゲイルが現在調べてくれてはいるが、普通なら世襲制であると考えるべきだろう。


 だが。


『知ってますか? 私って、人間から魔力を吸収できるんです~。そのおかげで、この若さを保てますし、強さだって維持できるんです~』


 そう……彼女は、僕達にハッキリと告げた。

 これが事実なら、彼女は何十年……いや、何百年と、その若さを保ったまま生き続けているということだってあり得る。


 “原初の魔女”は、オルレアン王国にずっと根付いていたということ、か……。


「む……あまり驚いた様子がないな……」

「え? ああ、すいません。そういうわけではないのですが……」

「まあとにかく、今はサウセイル教授が“ダスピルクエット”として国王陛下の(そば)にいると考えたほうがいいだろう。そして先日、若い男女六人(・・)が王宮内に入り、国王陛下に謁見したとのことだ」

「若い男女六人(・・)?」


 シモン王子の言葉に、僕は思わず聞き返した。

 その数は、奇しくもアビゲイルが連中のアジトに潜入した際、殺害したエタンを含め、見たという人数と完全に一致している。


「ああ……その手紙を受け取ったのが今朝で、謁見の日付はちょうど三日前とのことだ」

「三日前!?」


 馬鹿な!? エタン殺害から既に三週間、翼の少女と双子の少女を仕留めたのも一週間以上も前だぞ!?

 なら、謁見した六人とアビゲイルが見たという六人は、また別人だということか……?


「そ、それで、もし分かればなのですが、その六人の中に、かなり大きくて筋骨隆々な男や、双子の少女がいたりは、その……しないでしょうか……?」


 僕は嫌な予感が外れていることを祈りつつ、シモン王子におずおずと尋ねる。


「ヒューゴ……どうしてその者達を知っている(・・・・・)?」

「っ!?」


 や、やはり同一人物!?

 だ、だけど、あの四人は間違いなくその首を落としたんだぞ!? そんな状態でまだ生きているだなんて、絶対にあり得ない!


「ヒュー……どうか落ち着いてください。まだ、それが本当に同じ人間なのかどうかも分かりませんし、ひょっとしたらそれもサウセイル教授の策略なのかもしれませんから」

「あ……す、すいません……」


 メルザにたしなめられ、僕は冷静さを取り戻す。

 だが……もし同一人物なのだとしたら、一体どうやって……?


「……シモン殿下、貴重な情報をありがとうございます」

「いや……これが君の役に立てばいいのだが……」

「充分です。これだけでも、知っているのと知らないのでは、対応も心構えも全然違いますから」


 もしこのことを知らないままあの四人と再度まみえたなら、僕達は動揺して不利な状況に追い込まれていたかもしれない。

 それに、少なくとも四人の特徴や能力は把握しているんだ。逆に有利に展開することだってできる。


 僕はチラリ、と隣のメルザを見る。

 彼女は、心配そうに僕だけを見つめていた。


「メルザ……ありがとうございます。あなたのおかげで、僕は冷静さを取り戻すことができ、これからどうすべきかに思い至ることができました。本当に、あなたは最高の女性(ひと)です……」

「あ……ふふ、ヒューのお役に立ててよかった……」


 僕とメルザは、どちらからともなく手を重ね合う。


「コホン」

「「あ……」」


 シモン王子に咳払いされ、僕とメルザは視線を彼へと戻す。

 だけど、その手を離すことなく、むしろ離れまいとして平民の恋人達が行う手繋ぎをした。


 あはは……本当に、この繋ぎ方を考えた人は天才だよ。

 こんなにも、大好きな人と繋がっていることが実感できるんだから。


「まあ、話したかったことはこれで全部だ。早く昼食を食べてしまおう」


 そうして、僕達は昼食を食べるんだけど、利き腕でメルザと手を繋いでいるため、食べるのに四苦八苦した。


 ……まあ、メルザが食べさせてくれたから、むしろよかったんだけどね。

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