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お揃いの指輪

新作の『冷害王子』もよろしくお願いします。

一番下のリンクから行けます。

「ふふ! ヒュー、早く行きましょう!」

「あ、待ってください!」


 夜になり、大公殿下をはじめ一緒に夕食をしようと声をかけられたけど、僕とメルザは断りを入れ、王都の大通りへ二人で来ている。


 明日からはサウセイル教授の捜索に本格的に取りかかることになるし、せめて今夜くらいは羽を伸ばすことにしたのだ。


 何より、今の僕達はただの冒険者、ヒューゴとメルザでしかない上に、皇国内でも公式行事への参加をほとんどしたことがない(第一皇子の誕生パーティーとシモン王子の歓迎パーティーのみ)のため、僕達の素性を知る者は市井には絶対にいないだろう。


 むしろ僕達と知って接触してくるような者は、サウセイル教授の関係者だということ。

 それなら、逆にそこからサウセイル教授へとたどり着くきっかけになるかもしれないしね。


「ふふ……ですが、お爺様がすんなりと許してくださるとは思いませんでした」

「あはは、そこはさすがに、自分達のお膝元で派手な戦闘はできませんし、少人数であれば僕達に太刀打ちできるような連中がいるとも思えませんしね」


 この王都にたどり着くまでの道中なら大規模に戦闘を仕掛けることができたかもしれないけど、王都の街中でそんなに兵力を集中させてしまったら、明らかに大変なことになるからね。

 かといって、サウセイル教授自身も僕達の実力は知っているから、少なくとも自分で乗り出して来るか、同じだけの実力者を複数用意しないといけない。


「まあ、なので大公……おっと、シリル様もそれを踏まえての判断でしょう」

「ええ! そのおかげで、こうしてヒューとの楽しい夜を過ごせます……」


 僕とメルザは、どちらからともなく手を繋ぐ。

 もちろん、あの平民の恋人達がする繋ぎ方で。


「それで、メルザはどのお店がいいですか?」

「そうですね……まずは、あのお店に入ってみましょう!」


 メルザが指差したのは、小さな雑貨屋だった。

 でも、それなりにお客も入っているようだし、店の外に陳列されている小物類も趣味のいいものばかりだ。


「では、まずはあの店を(のぞ)いて、その後は夕食にしましょう」

「はい!」


 ということで、僕達は雑貨屋の中に入る。

 へえ……外にあった小物もそうだけど、基本的には雑貨というよりもアクセサリーショップに近いのかな。


「ふふ! これも可愛いですね! あ、こちらのイヤリングも!」


 そんな感じで、メルザは嬉しそうにアクセサリーを物色する。

 僕も彼女を眺めながら口元を緩めていると。


「あ……これ……」


 そこには、赤の小さな魔石でできたペアリングがあった。

 へえ……この色、メルザの瞳と全く同じ色だな……。


 メルザの瞳と指輪を交互に見比べ、気が付けば僕はその指輪を手に取っていた。


「すいません、これをください」

「はい」


 会計を済ませ、指輪を受け取る。


「ヒュー、何を買ったのですか?」

「あ、メルザ……左手をお借りしますね」

「は、はい……っ!」


 メルザのその細く白い左手の薬指に指輪をはめると、メルザが息を飲んだ。


「ヒュー……この指輪、私にくださるのですか……?」

「もちろんです。僕が指輪をあげるなんて、メルザ以外にいるわけがありませんよ」


 おずおずと上目遣いで尋ねるメルザに、僕は微笑みながらそう告げた。


 すると。


「ヒュー!」

「わっ!」


 胸に勢いよく飛び込んできたメルザを、僕は慌てて受け止める。


「嬉しい……ヒュー、大切にしますね!」

「はい、ありがとうございます」


 抱きしめるメルザの黒髪をかぐと、僕の大好きな金木犀(きんもくせい)の香りがした。

 ちなみに、僕が金木犀(きんもくせい)が好きだと言ってから、かなりの割合でお風呂に浮かべていると、ヘレンとセルマの二人から聞いている。


 本当にもう、僕はメルザが可愛すぎて、どうにかなってしまいそうだよ……。


「ですが……あはは、今は僕がメルザの匂いをかいでも拒否しないのですね」

「あう……もう、ヒューの意地悪……」


 そう言って口を尖らせるメルザ。尊い、尊すぎる……って。


「あ……」


 見ると、店内にいる人達が僕達に注目している……。


「メ、メルザ、そろそろ店を出ましょうか……」

「え? ……あ、そ、そうですね……」


 僕が声をかけて、メルザも注目されていることに気づいたみたいだ。

 うん……普段なら見られたところで気にも留めないんだけど、さすがにここは敵地だからね……。


 ということで、僕とメルザはそそくさと店を出た。


「ふふ……!」


 そしてメルザは、左手薬指を眺めながらご満悦の様子。

 もちろん僕も、そんなメルザを見てご満悦だ。


 なら、もっとメルザの笑顔を楽しもう。


「メルザ、これを見てください」


 僕は自分の左手を掲げ、メルザに見せる。


「あ! お揃いだったんですね!」

「はい! どうしても、あなたとお揃いにしたくなりました!」

「ふふ! 嬉しい!」


 すると、メルザはまた僕の胸へと飛び込んできた。


「本当に、ヒューはいつも私を喜ばせてばかりです……」

「それは僕の台詞(セリフ)ですよ。あなたの喜ぶ姿が、どれほど僕の心を満たしてくれるか……」

「ふふ……でしたら、やはり私とヒューはお似合いの二人ですね」

「もちろん」


 うん……僕とメルザ以上の二人がいるのなら、是非見てみたいものだ。

 まあ、世界にそんな二人なんていないだろうけど。


 すると。


「よお、坊主。カワイイ彼女連れてるじゃねーか」


 ……まるで、お約束とばかりに強面の男が三人現れた。

お読みいただき、ありがとうございました!


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