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王都に到着

新作連載開始しています!

「……どうやら、命知らずの者がいるようですね」


 僕は唇を離すと、メルザの耳にそっとささやいた。


「……数は五人ですが……どうしますか?」

「あはは、決まっていますよ。その連中のお目当てはメルザでしょうから、それを僕が許すとでも?」

「ふふ……そうでしたね。では」


 メルザは右手を頭上へとかざすと。


「【雷槍】」


 巨大な雷の槍を、空高く放った。

 その瞬間、僕達を狙っていた者達の姿が雷の槍による光でくっきりと照らしだされる。


「死ね」

「っ!? がひゅ……っ!?」


 僕は素早く一番近くにいた者へ距離を詰めると、抜刀術でその首を斬り落とした。


「まず一人」

「っ!? クソッ! 舐めるなっ!」


 仲間の一人の首が地面に転がるのを見て、残りの四人のうち二人が剣を抜き、僕へと突撃してきた。


「二人、三人」

「え……ごふっ!?」

「ぐぼあ……っ!?」


 二人目は首元にサーベルを刺突して風穴を開けて一気に引き抜くと、返す刀でもう一人を脇の下から反対側の肩まで斬り裂く。


 あと二人……っ!?


 なんと、あろうことか残りの二人は、やられた仲間に見向きもせずにメルザへと突っ込んでいった!?


「メルザ!」

「ふふ、大丈夫ですよ。さあ……黒焦げになりなさ……っ!?」


 メルザが二人に向けて右手をかざした、その瞬間。


「あは♪」

「ふっ!」


 二つの人影が現れ、襲ってきたうちの一人は細切れに、もう一人は巨大な剣によって文字どおり叩き潰された。


「アビゲイルさん、モニカ教授……」

「あは♪ こんなところに盛った賊がいるなんてね♪」

「全く……せっかくの瞬間を邪魔なぞして……」


 ニタア、と(わら)うアビゲイルとは対照的に、モニカ教授は心の底から不機嫌そうだ。

 だけど、少々聞き捨てならない言葉を吐きましたよね……?


「……ひょっとして、ですけど……二人共、見ていました……?」


 少しだけ威圧を込めながら、僕は低い声で尋ねる。


「フフ……さあ、どうでしょう?」

「わわ、私だけではないぞ!? 向こうの岩陰にヘレンもいるからな!?」

「モ、モニカ様、どうしてばらすのですか!?」


 とぼけるアビゲイルと、仲間を裏切るモニカ教授。さらには思わず立ち上がって抗議するヘレンの姿も。


 ……本当に、この三人は。


「……私とヒューの時間を邪魔するなんて、いい度胸ですね……!」

「「「っ!?」」」


 メルザの絶対零度の威圧を受け、さすがの三人も立ちすくむ。

 それから三人は、しばらくの間メルザに説教をされていた。


 なお、大公殿下は酔い潰れてテントで熟睡していた。


 ◇


「んう……」


 テントの隙間から差し込む光が顔を照らし、僕はその眩しさで目が覚める。


「ぐおおおお……ぐおおおお……」


 昨日の夜しこたまワインを飲んだせいでまだいびきをかいて眠っている大公殿下を置き去りに、テントから出た。


 すると。


「ふふ……ヒュー、おはようございます」


 メルザは木陰の下で岩に腰かけながら、最高の笑顔を見せてくれた。


「メルザ、おはようございます。よく眠れましたか?」

「はい。おかげさまで、快適に過ごせました」


 彼女はそう言うけど、野宿で身体が休まるはずがない。

 とにかく、今日は王都に着いて宿屋でゆっくりしてもらわないと。


「ヒューゴ様、メルトレーザ様、おはようございます。まずはお茶でもいかがですか?」

「あ、ヘレンおはよう。じゃあお願いできるかな?」

「かしこまりました」


 ヘレンは恭しく一礼すると、既に火にかけてあったケトルでお湯を注ぎ、お茶を用意してくれた。


「ふふ、朝の澄んだ空気の中で飲む温かいお茶は格別ですね」

「ええ。そして、隣に愛する人がいればなおさらです」

「あう……わ、私も同じです……」


 僕の言葉に照れてしまうメルザ。僕は、そんな彼女の世界一の可愛さを再認識せざるを得ない。

 でも、こうなってくると王都にいる男連中が、メルザを見てよからぬことを考えるかもしれないな……。


「? ヒュー、サーベルに手をかけて、どうしたんですか?」

「え? あ、あはは……王都でメルザにまとわりつく()がいたら排除してやろうと考えていて、無意識に手にかけていたようです……」


 メルザに指摘され、僕は苦笑しながら答えた。


「ふふ、確かに()は嫌ですね……既に、一匹(・・)紛れ込んで(・・・・・)いますが(・・・・)


 一応、メルザは表情は笑顔だけど、絶対に笑ってないよね……。


「あ……ヒュー……?」

「あはは、すいません……そうやって、僕を独占しようとしてくれるメルザの気持ちが嬉しくて、つい甘えたくなってしまいました……」


 僕はメルザの身体にほんの少しだけ寄りかかり、彼女の艶やかな髪に顔をうずめた。


「あう……そ、その、昨晩は野営でしたので……あ、あまり臭いをかがないでください……」

「何を言っているんですか。世界中の香水を集めても、メルザのほうがいい匂いですよ」

「は、恥ずかしい……」


 顔を真っ赤にして両手で覆ってしまったメルザ。


 でも、僕は朝食の時間まで、そんな仕草込みで彼女を堪能した。


 そして。


「……着きましたね」

「はい!」


 その日の夕方、僕達はオルレアン王国の王都、“ルーティア”に到着した。

お読みいただき、ありがとうございました!


また、本日から新作の投稿を開始しました!


弟の策略により命を落とした不器用な冷害王子は、最後まで祈りを捧げてくれた、婚約破棄した不器用な侯爵令嬢のために二度目の人生で奮闘した結果、賢王になりました


下のタグから飛べます!

絶対に面白いのでぜひよろしくお願いします!


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