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オルレアン王国へ

「はっは! 遅かったのう!」

「た、大公殿下!?」

「お爺様!?」


 なんと、目の前にいたのはハルバードを担いだ大公殿下だった。

 だ、だけど、それもそうだけど!?


「そ、その……あの立派な顎鬚(あごひげ)はどうされたのですか……?」

「ん? はっは! 数十年振りに綺麗さっぱり剃ってやったわい!」


 僕がおずおずと尋ねると、大公殿下は豪快に笑った。

 い、いや、だけど顎鬚(あごひげ)といえば大公殿下の象徴ともいうべきものでは!?


「まあ、顔の周りが涼しいが、仕方あるまい。なにせ、私の顔は(ひげ)込みでオルレアン王国の連中に覚えられておるからのう」

「あ……」


 大公殿下の今の言葉で理解する。

 ひょ、ひょっとして……。


「た、大公殿下も、その……王都に……?」

「うむ! 魔石やその他の調査については、全部オリバーの奴に丸投げしてやったわい!」


 ま、まさか大公殿下まで来るだなんて思わなかった……。


「……やはり、メルと婿殿だけを行かせるわけにはいかぬよ。もう、同じ思い(・・・・)をしたくはないのでな」

「大公殿下……」


 そう言われてしまっては、僕には返す言葉はない。

 本当に、この御方は……。


「ふふ……それは構いませんが、今回の王都への潜入に関してはヒューがリーダーです。なのでお爺様もヒューに従ってくださいね?」

「おう!」


 メルザの指摘を受け、大公殿下は胸の甲冑を拳で叩いた。


「で、でしたら早速いいでしょうか……?」

「む、なんじゃ?」

「その……ハルバードはこの際いいとして、さすがにその甲冑ですと立派すぎて怪しまれてしまいます。なので、僕達も含めこの街で変装をしてから行きましょう」

「むむ……この甲冑はいかんかったか……」


 僕にそう言われ、大公殿下が少し落ち込んでしまった。


「それでヒュー、私達はどのような変装をするのですか?」

「はい。やはり武器を持ちながらも目立たないようにするために、冒険者になりすまします」

「ふむ……それが妥当であろうな」

「ですね」


 尋ねるメルザにそう答えると、モニカ教授とアビゲイルも頷いた。


「では早速、この街の市場で冒険者らしい(・・・・・・)装備を整えましょう」


 ということで、僕達は街の市場へ出て装備を整えた……んだけど。


「ど、どうでしょうか……?」


 試着を終え、着替えたメルザがおずおずと尋ねる。


 なお、メルザには露出を抑えてもらうため、僕の独断と偏見で神官服を着てもらうことにしたんだけど……うん、自分を全力で褒めてやりたい。


 だって。


「メルザ……すごく素敵です……神々しいです……」

「あう……そ、そんな褒め言葉、なんだか皮肉のように聞こえてしまいます……」


 そう言って、メルザは照れてしまった。

 確かに、ヴァンパイアのメルザに神々しいはミスマッチかもしれないけど、そもそも女神グレーネよりも綺麗なんだから間違いじゃない。


 ……女神グレーネの実物は、見たことないけど。


「そ、それより、ヒューのその服装も素敵です……」

「そ、そうでしょうか……」


 い、一応、一般的な軽装にロングコートを羽織ってみたんだけど、メルザが気に入ってくれてよかった……。


「ふむ、二人共なかなか似合っているぞ」

「モニカ教授……その格好は……?」

「ん? どうだ、私もいいだろう?」


 モニカ教授は、腕や脚を甲冑で覆い、金属の胸当てにポンチョをまとったスタイルだ。

 意外にも、かなり似合っている。


「あとは、大公殿下とヘレン、それにアビゲイルさんですが……」


 僕は店内を見回すと……あ、いた。


 大公殿下はやはり重装備で固めてマントを羽織り、意外にもテンガロンハットをかぶっていた。

 髭を剃られて分かったけど、大公殿下……若い頃はかなりモテたんじゃないだろうか……。


「フフ……ヒューゴさん、いかがですか?」

「いかがですか、って……」


 アビゲイルは、露出度の高い服装で、気づけば店の中にいる男連中の視線を一身に集めていた。


「……アビゲイルさん、少々あざといのではないのでしょうか?」

「フフ、そうでしょうか? でしたら、メルトレーザさんもどうです?」

「結構です!」


 クスクスと揶揄(からか)うように笑うアビゲイルに、メルザは顔を背けた。

 で、でもこれ……メルザがこんな服装を着た姿も、ちょっと見てみたいかも……。


「皆様、お済みでしょうか?」


 既に町娘の格好をしたヘレンが、声をかける。


「あ、ヘレン。全員終わったよ。では、行こうか」

「はい!」


 僕達は店を出ると、あらかじめ用意しておいた幌のついた荷馬車に乗って国境へと向かう。

 これなら、オルレアン王国内でもそれほど目立たないだろう。


「あの橋を渡れば……」

「オルレアン王国、ですね……」


 メルザが僕の手を取り、ギュ、と握った。


「大丈夫……あなたは僕が、絶対に守りますから……」

「ふふ……もちろん、心配してはおりませんよ……?」


 そう言って、メルザが僕の肩にもたれかかる。


「止まれ!」


 橋を守る兵士に止められ、御者を務めるヘレンが入国の手続きを済ませる。


 そして……僕達は、オルレアン王国に入った。

お読みいただき、ありがとうございました!


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