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魔石の意味

「実は、皇宮を中心として円を描くように、皇都の外れで圧縮された魔石が発見された」


 大公殿下は重々しい口調でそう告げる。


「それは……どのようなものなんですか? そして、どんな影響が……」

「うむ。魔法使いに調べさせたところ、かなりの高密度の魔力を持っており、暴発すればかなりの被害が及ぶ代物らしいわい……」


 そう言って、大公殿下はギリ、と歯噛みした。

 暴発したら相当な被害が出るほどの威力を持った魔石、ねえ……。


「あ……そういえば、今の会話の中で気になったのですが、『皇宮を中心として円を描くように』とおっしゃっておられましたが、ひょっとして、見つかった魔石は一つだけではないのですか?」

「そうなんじゃ……厄介なことに、確認できただけで五つあったわい。それも、皇宮から同じくらい離れた距離での」

「なるほど……」


 となると、魔石を仕掛けた者は皇都全体に被害を与えることを目的としているのか……。

 ここまでの大規模な仕掛けと、高度な技術で圧縮された魔石…………………………まさか!?


「そ、それって……ひょっとして、サウセイル教授の仕業、という可能性も……?」

「……うむ。魔石を圧縮させるなどといった技術を持っておる者を、私はシェリルの奴しか思い浮かばん……」

「で、でも、まだサウセイル教授と決まったわけではありませんし、例えばオルレアン王国が関与している可能性もあるのでは?」

「もちろんじゃ。とにかく今は魔石の分析と、仕掛けた者が何者なのか調べておるところじゃ」


 仕掛けた者の思惑……って、でも待てよ?

 それほど皇都に大規模な被害を与えようとしている者が、こんな簡単に魔石を発見されるような、そんなお粗末なことをするだろうか……。



「……これは、魔石の調査もさることながら、それ以外に皇都に異変がないか調べたほうがいいかもしれません……」

「というと?」

「はい……何者かは分かりませんが、この魔石をカモフラージュにして、実際には裏でもっと恐ろしいことを企んでいる可能性も考えられます。でないと、そんな簡単に五つも魔石が見つかるなんておかしいですから」

「なるほどのう……」


 僕の推理を聞き、大公殿下は腕組みしながら考え込んだ。


 そして。


「はっは! やはり婿殿も、私と同じ考えに至ったか!」


 大公殿下は豪快に笑うと、僕の背中を叩いた。

 だけど、そうか……大公殿下も同じ結論だったんだな……。


「私と婿殿の意見が一致したんじゃ、まず間違いないじゃろう! オリバーに指示して、魔石の他に怪しいものがないか、併せて調べさせることにしよう!」

「それと、そんな危険な魔石なら、暴発させるための発動条件のようなものがあるかもしれません。せっかく五つも魔石が見つかったのですし、まずは試しに暴発させてみてはいかがでしょう」

「おお! そうじゃの!」


 僕の言葉に、大公殿下は手を拳で叩いて首肯すると。


「はっは! ウッドストック家の未来は安泰じゃの!」

「あはは!」


 大公殿下は破顔しながら、僕の頭をそのごつごつした大きな手で撫でてくれた。


 僕はそれが嬉しくて、思わずはにかんだ。


 ◇


「ふふ、一か月ぶりの学院ですね!」


 旅行から返ってきた次の日の朝、僕とメルザは久しぶりの皇立学院へと向かっている。

 もちろん、学院には休暇申請を出し、了承を得ているので何の問題もないけど、それでも若干後ろめたい気持ちがないわけじゃない。


 だって、言うなれば僕達は学院をサボっていたわけだから。


「リディア様やクロエさんも元気にしていらっしゃいますでしょうか……」

「あはは、しばらく休んでいたといっても一か月ですし、もちろん皆さん元気だと思いますよ?」


 むしろ一か月会わなかった分、クリフォード皇子とシモン王子がいつも以上に暑苦しく絡んでこないか心配だけど……。


「それと、お土産も喜んでくださるといいんですが……」

「あはは、それこそ心配いらないですよ。メルザが心を込めて選んだお土産を、気に入られないなんてことはありませんから」


 むしろ、そんな奴がいたら地獄を見せてやろう。

 僕の(・・)メルザのお土産は、ありがたく受け取るべきなのだ。


「あ……ふふ、ヒューは考えていることがすぐに顔に出ますね」

「え!? そ、そうですか……?」

「ええ。私のお土産を絶対に受け取らせようって、そんな表情ですよ?」

「あ、あはは……」


 メルザに考えをバッチリ読まれてた……。

 ま、まあ、メルザは僕の婚約者なんだから、こうやって以心伝心なのは仕方ないよね……。


「ふふ……ですが、何を考えておられるのか分からないような御方ではなく、ヒューが私への真心を見せてくれる御方だからこそ、私はこんなにもあなたのことが好きで、こんなにも幸せになれるんです……」

「メルザ……」


 嬉しそうに目を細めながら、メルザはそっと胸に手を置いた。

 ああ……あなたはどうしてそんなにも、僕の心を満たしてくれる言葉をくださるのですか……。


「僕は……本当に、あなたに出逢えてよかった……」

「ふふ……私も、あなたに出逢えて本当によかった……」


 僕達は、お互いの手を取り合うと、こつん、とおでこを合わせた。


 ◇


「メルザ、どうぞ」

「ふふ……はい」


 学院に到着し、僕はいつものように先に馬車から降りて、メルザの手を取る。

 お土産は……申し訳ないけど、御者に教室まで運んでおいてもらおう。


 すると。


「む……ヒューゴ、メルトレーザ殿……」

「シモン殿下」


 門の前でたたずんでいたシモン王子が、僕達を見るなり声をかけてきた。

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