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メルザのお茶会

「うわあ……!」


 いよいよメルザ主催のお茶会の日となり、僕は庭園にセッティングされた会場を見て感嘆の声を上げた。

 いや、この規模といい雰囲気といい、ハッキリ言ってしまえば第一皇妃殿下や第二皇妃殿下の開いたお茶会すら比べものにならない……。


「ふふ……皇帝陛下を始め、多くの来賓をお招きするのですから、どうしてもこの規模になってしまいますね」

「いや、それを用意した、メルザの見事な手腕に驚くばかりです……!」


 お茶会やパーティーなど、こういった社交関係については、全てその家の夫人が取り仕切るものなんだけど……僕の(・・)メルザなら、全てを任せられる。

 本当に、綺麗で優しくて強いだけでなく、なんてすごい女性(ひと)なんだろう……。


 まさに、“完璧”という言葉はメルザのためにあるようなものだな……。


「ですが、ここまで用意できたのは、リディア令嬢とクロエ令嬢のおかげです。あのお二人が、私を助けてくださったから……」

「いいえ、それは違いますわ」


 すると、後ろからリディア令嬢とクロエ令嬢が現れた。


「メルトレーザ様は、今日のために本当に頑張ってこられました、それは、一緒に準備をお手伝いさせていただいた、この私が保証します」

「はい。このクロエ=レスタンクールも同じく」

「リディア様、クロエさん……」


 微笑みながら労いの言葉をかける二人に、メルザが真紅の瞳を潤ませる。

 あはは……メルザにこんな友人ができて、僕も心から嬉しい。


 お茶会の準備に花を咲かせるメルザ達の邪魔をしないように、僕はその場からそっと離れると。


「ヒューゴ様、やはり私の選んだ服で間違いないですね!」

「セルマ……これは私がアドバイスしたんです。あなたよりも、この私のほうが何倍もヒューゴ様を理解しているのですから」


 せわしなく準備をしていたはずのセルマと、同じくメイド姿をしたヘレンが声をかけてきた。

 なお、ヘレンはあの証拠を届けてくれてから今日まで、ずっとメイドとしてセルマと一緒に働いてくれている。

 なんでも、そちらのほうがヘレン的には落ち着くらしい。


 そして二人共、妙な対抗意識を燃やさないでくれるかな。

 こういうところ、本当に姉妹……じゃないんだったな。


「あ、そうそう。二人共、今日はあそこが特等席になるから、向こう側で給仕をしたほうがよく眺められるよ」

「うふふ……ありがとうございます」

「本当に……楽しみです」


 ヘレンとセルマが、ニタア、と口の端を吊り上げた。

 うん……この表情も似てるなあ……姉妹じゃないけど。


 ◇


「はっは! よくぞまいった!」


 お茶会の開始時間が近づき、次々と招待客がやって来ては大公殿下が挨拶をする。

 その隣には、この僕もいて一緒に挨拶をしていたりする。


 こういうのも、大公殿下の後継者として大切なものだからね。

 そのおかげで、今ではかなり認知してもらえ、“小大公”なんて呼ばれたりするようにもなった。


 なお、メルザはお茶会の陣頭指揮をしているため、こういったお客の出迎えには顔を出していない。

 その代わり、お茶会が始まれば主催者として最も注目を浴びることになる。


 ただし……断罪が始まるまでは、だけど。


 メルザが出席する貴族達から純粋に称賛を受けられないのは気に入らないけど……かといって男連中からメルザに変な視線を送られるのはもっと嫌だから、まあいいか。

 そもそも、今日のお茶会は皇帝陛下も出席されるから、他の男性貴族を呼ばないわけにもいかなかったし……仕方ない。


 すると。


「ヒューゴ!」

「本日は招いていただき、痛み入る」


 僕を見ながら満面の笑顔を浮かべる、第一皇子とシモン王子が声をかけてきた。

 いや二人共、なんでそんなに嬉しそうなんですか……。


「あはは……今日のお茶会では、リディア殿とクロエ殿にメルザを助けていただき、ありがとうございます」

「何を言う。リディアはメルトレーザに助けを請われ、本当に嬉しそうだったぞ。こちらが感謝したいくらいだ」

「フフ……クロエも、ようやくこの国で友人ができて嬉しかったようだしな」


 僕は二人に頭を下げると、第一皇子は妙に距離が近いし、シモン王子は目を細めながら口元を緩める。

 何というか、僕に好感を持ってくれるのはいいんだけど、その好感度が若干振り切れているように感じるのは気のせいだろうか……。


「そ、それでは、お二人の席にご案内しますね」

「うむ」

「ああ」


 僕は、あらかじめ用意してある席へと二人を案内した。


「ふむ……シモン殿下と向かい側とはな」

「あと四つ席があるということは、リディア殿とうちのクロエ、それに、アーネスト殿下とその婚約者といったところか?」


 円卓の席に着くと、シモン王子が尋ねる。


「いえ、リディア殿とクロエ殿はそのとおりですが、残る二つは僕とメルザの席です」

「そうなのか? では、アーネストはどこに……」

「それは、向こうの円卓になります」


 そう言って、僕は第二皇子とイライザ令嬢の席を指差した。


「なるほどな……変に衝突しないよう、派閥同士で分けたのか」

「まあ、それも(・・・)ありますね……」


 本当は、これから起こる断罪で、第一皇子やシモン王子達が巻き込まれないようにするためなんだけどね。


「では、僕はまだ他の方々の挨拶などがありますので、お二人共ゆっくりご歓談ください」


 僕は恭しく一礼すると、また大公殿下のところに行って貴族達と挨拶を交わす。


 そして。


「これは皇国の太陽、皇帝陛下にご挨拶申し上げます」

「うむ……今日は楽しませてもらうぞ」


 皇帝陛下が、ウッドストック家の屋敷へとやって来た。


 ――本日の主役である、第二皇妃殿下を連れて。

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