表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
125/241

影縫いアビゲイルへの報告

「ふふ、久しぶりにヒューとの皇都散策ですね!」


 第二皇子とイライザ令嬢とのお茶会の次の日の夜、僕はメルザと一緒に皇都の街を歩いている。

 もちろん、ここへは馬車で来たんだけど、せっかく月明かりの綺麗な夜ということで、僕達は大通りを歩くことにしたのだ。


 とはいえ。


「……これが“影縫いアビゲイル”への用事でなければ最高だったんですが……」


 そう言って、僕は肩を落とす。


「……それは仕方ありません。アーキン伯爵の調査結果を報告する約束でしたから……」

「そ、それはそうですが……」


 正直、最近色々なことがあり過ぎて、メルザに癒されたい僕がいるわけで……。


「ふふ……ですが、ヒューがそこまで私を求めてくださるのは、その……嬉しいです……」


 ……うん、本当にもう、僕も色々と抑えがきかなくなりそうです……。


「メルザ……サッサとこんなくだらない用事は済ませてしまって、二人きりの夜を楽しみましょう」

「あ……ふふ、はい!」


 僕はメルザの手を取り、少し足早にアビゲイルの店を目指した。


 そして。


「いらっしゃいませ……フフ、相変わらずお二人共、仲がいいですね」


 店に入るなり出迎えてくれたアビゲイルが、僕達を見てそんなことを言いながら微笑んだ。


「当然です。私とヒューは、お互い運命の相手同士なのですから」


 メルザは僕の腕を抱きしめながら、ちろ、と舌を見せて少し子どもっぽく振舞った。

 これはアビゲイルに僕達の仲睦まじい姿を見せつけて威嚇しているんだろうけど……すいません、そんなあなたを見てこの中で一番刺さっているのは僕だと思います……。


「フフ、ではどうぞこちらへ」


 アビゲイルに店の奥へ通され、僕達はソファーに座ると、彼女はお茶を注いだカップを差し出してくれた。


「ええと……念のためお伺いしますが、毒なんて入っていたりしませんよね?」

「さて、どうでしょう? ……って、“カンタレラ”を飲んでしまったあなたに対して、さすがに不謹慎でしたね。ご心配なく、毒は入っておりませんよ」


 僕はメルザを(うかが)うと……うん、アビゲイルの言葉に()はないみたいだけど、今の会話のせいでメルザが暴発寸前だ。

 でも、そんなメルザを見てアビゲイルがどこか楽しんでいるように見えるのは気のせい、だよね……?


 ま、まあいいや。とにかく本題に入ろう。


「では……早速ですが、アーキン伯爵に関する調査結果です」


 僕は書類の束をテーブルの上に置くと、アビゲイルが手に取って目を通した。


「……へえ、よく調べてありますね」


 そう言って、アビゲイルは満足そうに頷く。


「まあ……今回の調査では、大公殿下が直接指揮を執って行っていますからね。それだけ、皇国も本気(・・)だということです」

「フフ……どうやらそのようです。それで、この後はどうするつもりですか?」

「はい。まずはアーキン伯爵と取引のあった貴族達を一斉に取り締まり……とはいかずに、まずはどうやってアーキン伯爵がこの取引先と関係を持ったか、それとアーキン伯爵の背後関係を調査する予定です」

「そうなのですか?」


 不思議そうに尋ねるアビゲイルに、僕は頷いた。

 そう……これは、取引先名簿を見た僕が、大公殿下にお願いしたのだ。

 というのも、アーキン伯爵は中立派ではあるが、その取引先の半数以上が第一皇子派であり、三分の一も中立派、あとは申し訳程度に第二皇子派がいるだけだ。


 まるで……第一皇子派又は第一皇子派になびく可能性のある中立派に絞って、取引しているかのように。


「……これはあくまでも僕の勘、なのですが……どうやら、このアーキン伯爵の裏の顔というのは、何者かによって仕組まれたもの、というふうに考えています」

「……その、何者か(・・・)、というものに心当たりはあるのですか?」

「まだハッキリとは言い切れませんが……アビゲイルさん、あなたもおおよその見当はついているんじゃないですか?」


 (うかが)うような視線を向けて尋ねるアビゲイルに、僕も同じく尋ね返した。


「フフ……そうですね」


 アビゲイルが、フ、と微笑み、お茶を口に含んだ。


「ヒューゴさん……一応、誰なのかお尋ねしても?」

「はい……」


 僕は一度メルザを見ると、彼女はゆっくりと頷いた。

 メルザには、僕の考えは伝えてある。


 そして。


「アーキン伯爵を裏で操っている人物……それは、サウザンクレイン皇国第二皇妃殿下、“レオノーラ=フォン=サウザンクレイン”です」

お読みいただき、ありがとうございました!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、

『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!


評価ボタンは、モチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ