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第二皇子達との談笑

「ウーン……第二皇子とイライザ令嬢の二人と会うだけだから、そこまでオシャレをする必要はないと思うんだけど……」


 学院の休日、鏡の前でセルマの着せ替え人形を化している僕は、眉根を寄せながらそんなことを呟いた。


「駄目ですよヒューゴ様! 向こうも婚約者同士、そしてこちらも婚約者同士! なら、メルトレーザ様は絶対にヒューゴ様を自慢したいはずですから!」

「そ、そうなの?」

「そうなんです!」


 鼻息の荒いセルマに押し切られ、僕は思わずたじろぐ。

 で、でも、服装に関してこれまで、全てセルマの言ったとおりになっているし、下手に僕が主張したりしないほうがいいかも……。


「とりあえず、メルトレーザ様の様子を確認してまいりますので、少々お待ちください」


 そう言うと、セルマは僕を置き去りにして部屋を出て行ってしまった。


「ハア……」


 僕は鏡に向かって溜息を吐く。

 あのサウセイル教授が姿を消してから今日まで、結局あの人の手掛かりはつかめなかった。

 もぬけの殻だった屋敷にしても、調査の結果、長い間使われていなかったことも判明し、まさにサウセイル教授の足取りは全て途絶えてしまった。


 今後、あの人が僕達にどう絡んでくるのかは分からないけど、ますます警戒しておく必要がある。

 なにせ、得意の転移魔法のせいで神出鬼没だからね……。


「ただいま戻りました!」


 息を切らせて戻ってきたセルマが、手際よく服を選んでいく。


「メルトレーザ様の本日のドレスから、こちらの服がお似合いです!」


 そう言って手渡された服は、黒と赤を基調とし、金色の装飾が施されたものだった。


「わ、分かった。セルマの言うとおり、今日はこれにするよ」

「はい! むふふー……メルトレーザ様、絶対に見惚れてしまわれますよ!」


 嬉しそうに含み笑いをするセルマを尻目に、僕は手早く着替える。

 襟などの細かな部分については、セルマが手直ししてくれた。


「さあ! メルトレーザ様をお迎えしにまいりましょう!」

「う、うん……」


 セルマの後に続きメルザの部屋にやって来ると、扉をノックする。


「メルザ、入ります……って」

「あ……ヒュー……」


 なるほど……メルザも黒と赤を基調としたドレスだったんだね。

 もちろん、素敵というほか言いようがない。


「あ、な、なるほど……だから先程、セルマが……」

「あ、あはは……そうみたい、ですね……」


 僕とメルザは微笑み合うと、一緒にセルマを見る。

 するとどうだろう。セルマは思い切り胸を張って鼻高々である。


「ですが、こんなに素敵なメルザと一緒だと、イライザ令嬢がかすんでしまいそうですね」

「ふふ、それを言うなら、アーネスト殿下も存在感を失くしてしまわれそうですよ?」

「あはは。とはいえ、僕には最初からメルザしか目に入らないんですけどね」

「あう……も、もう……もちろん、私もヒューしか入りませんよ?」


 うん……メルザ、その返し方は反則です。


 なので。


「あ……」

「メルザ……」


 感情が抑えきれなくなった僕は、ハーグリーブス家へ出発する時間までの間、メルザを抱きしめて思う存分堪能した。


 ◇


「やあ! よく来た!」

「お待ちしておりました!」


 ハーグリーブス家の屋敷に着くなり、アーネスト殿下とイライザ令嬢が笑顔で出迎えてくれた。


「本日はお招きくださり、ありがとうございます」

「とんでもありません! こちらこそ、ヒューゴ様にはご無理を申し上げました!」


 そう言って、イライザ令嬢がずい、と身を乗り出して頭を下げる。

 だけど……す、少し距離が近いような気がする……。


「ハハ、今日は二人が来るということで、イライザが張り切って準備したのだ。是非、二人には楽しんでいってもらいたい」

「「はい、ありがとうございます」」


 僕はメルザの手を取り、第二皇子とイライザ令嬢の後について行く。


 そこには。


「おお……」


 第二皇妃殿下のお茶会と同様、席の上には(つる)から咲いた花や葉でできたアーチがあった。


「ウフフ……メルトレーザ様はお肌が弱いということでしたので、急遽ご用意させていただきました。さすがに、レオノーラ皇妃殿下のご用意された薔薇庭園のようにはまいりませんが……」

「いえ、こちらも素晴らしいです……ご配慮くださり、ありがとうございます」


 そう言って、メルザが一礼した。


「さあ、立ち話もなんだから、早く座ろう。そして、イライザに是非とも二人の話を聞かせてやってくれ」

「は、はあ……」


 僕達は席に着き、四人でのお茶会を始めた……んだけど。


「ウフフ! それで、ヒューゴ様はメルトレーザ様にどのように食べさせておられるのですか?」

「は、はい……それはこうやって……」

「あ、あう……は、恥ずかしい……」


 とまあ、僕とメルザの普段のやり取りを、イライザ令嬢の前で実践させられていた。

 なので、メルザも僕も嬉しい反面、妙に照れてしまう……。


「はああ……やはり、お二人のように仲睦まじい関係に、憧れてしまいます……」


 うっとりした表情を浮かべながら、イライザ令嬢が僕達……というか、主に僕を見てくる……。


「……アーネスト殿下は、普段はイライザ殿とどのように接しておられるのでしょうか?」

「ん? 私は見てのとおりだが?」


 メルザが低い声で尋ねるが、第二皇子は何も感じないのか軽い調子で答えた。

 いや、メルザが怒っていることに気づいてくださいよ……。


「と、ところで、単刀直入にお伺いします」

「……何かな?」

「今日、僕達を招いた、本当の理由(・・・・・)を尋ねても?」


 そう……今日の目的は、第二皇子にとっては自分達の派閥に大公家を引き入れるためのはず。

 メルザに余計な心労をかけるくらいなら、用件はさっさと済ませたほうがいい。


「それはもちろん、イライザが二人と楽しくお茶を飲みながら談笑したかったから……そして、私もヒューゴと仲良くなりたかったからだ」

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