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関与

「しかし……毒を盛られては、さすがのヒューゴでも手も足もでない、か……」


 午前の授業を終え、僕はメルザ、シモン王子、クロエ令嬢と一緒に昼食を摂っている。

 この四人でこうやって過ごすのは久しぶりのように感じるけど……うん、シモン王子、もう少し発言には気を遣っていただきたいと思います。


「……今回は、運が悪かったのです。私の(・・)ヒューは、毒などという卑劣なものに屈したりはしませんから」


 ほら、メルザの機嫌がものすごく悪くなってしまったし……。


「それにしても……ヒューゴ様、第一皇妃殿下からお茶会のお誘いがあった際には、本当に出席なさるおつもりですか?」

「? はい、そのつもりですが……」


 おずおずと尋ねるクロエ令嬢に、僕はキョトン、としながら答える。


「……ヒューゴは命知らずなのか? アーネスト殿下も言っていたが、普通は警戒して距離をおくものだぞ……」

「あはは、そうかもしれませんね」


 まあ、お茶会に出席したほうが、犯人をあぶり出せるからなんだけど。


「ところで……大公家の治癒師が言うには、僕が飲んだ毒というのは、“カンタレラ”という珍しいものなのだそうです。このサウザンクレイン皇国では、到底入手困難な代物だそうでして……」

「……ほう? 聞いたこともない毒の名前だな」


 僕の言葉に、シモン王子が澄ました表情でそう言いながらお茶を口に含んだ。


「ということは、オルレアン王国にも流通していないようなものなのでしょうか?」

「……本来、毒というものは暗殺に用いられるもの。ですので、真っ当な者(・・・・・)であれば、知らないのは当然かと」

「なるほど……確かにクロエ殿のおっしゃるとおりですね」


 クロエ令嬢の答えを受け、僕は頷きながらニコリ、と微笑んだ。


「それより、早く食べてしまわないと午後の授業に遅れてしまうぞ?」

「そ、そうでした」


 僕達は急ぎ昼食を終え、教室へと戻る……んだけど。


「あ……そういえば、モニカ教授に呼び出しを受けているんでした。すいませんがシモン王子とクロエ殿は、先に教室にお戻りいただけますでしょうか」

「? ああ、分かった」

「失礼します」


 シモン王子とクロエ令嬢は、僕達と別れて教室へと戻っていった。


「……メルザ、いかがでしたか?」

「はい……あの二人は、明らかに()を吐いていました」

「そう、ですか……」


 アビゲイルから“カンタレラ”がオルレアン王国側から持ち込まれたと聞いた時、ふと考えた。

 グレンヴィルのクーデターに続き、ひょっとしたら皇位継承争いにおいても、あのオルレアン王国が関与しているのではないかと。


 だから念のため、僕はかまをかけてシモン王子達に“カンタレラ”の話題を振ってみたんだけど……少なくとも、二人が今回の件について何らかの関与をしていることは間違いなさそうだ。


「ですが、ヒューが毒を飲まされたことに関しては知らない様子でしたし、心配していたことも間違いありません」

「だとすると、あの毒をまさか僕に使うとは思ってもいなかったんでしょうね……」


 なら一体、シモン王子達はどう絡んでいるのか……。


「いずれにせよ、大公殿下にお話ししてシモン王子達の監視を強化していただくようにお願いしましょう」

「はい……」


 僕とメルザは、廊下の先を見つめた。


 ◇


「ヒューゴ、メルトレーザ、今度の学院の休みの日にイライザと会ってやってはくれないだろうか」


 一日の授業を終えて帰り支度をしていると、第二皇子が声をかけてきた。

 だけど……皇宮であんなことがあった後だというのに、普通に誘ってくるあたり、常識や遠慮というものがないのだろうか……。


 ……いや、これは第二皇子として攻勢をかけているのかもしれない。

 第一皇子との間に大きな溝があると踏んで、僕達を第二皇子派に引き入れるために。


「ふむ……ですが、どうしてイライザ殿は僕達に会いたいと?」

「ハハ、どうやら二人に憧れを抱いているようでな。確かに、貴族の子息令嬢の婚約というのは家同士の政略結婚であって、君達のようにお互いを心から愛し合うようなことは珍しいからな」


 確かに、第二皇子の言うとおりではある。

 僕とメルザは、お互いの生い立ちなどもあって、こんなにも愛し合うことができたけど、普通は貴族の義務(・・・・・)でしかないからね……。


 だけど……さて、どうしようか……。


「……アーネスト殿下、その、イライザさんとお会いするというのは、皇宮で……ということでしょうか?」

「いや……さすがに私もそこまで考えなしではない。今回はハーグリーブス家の屋敷だ」


 メルザの問いかけに、第二皇子が答える。

 一応、それくらいの思慮はあるみたいだな。


「……分かりました。では、今度の休みにハーグリーブス家へお伺いさせていただきます」

「おお! 本当にありがとう!」


 僕の手を取り、満面の笑みを見せる第二皇子。


「では、イライザにもこの話を伝えておくよ!」


 第二皇子は何度も振り返り、嬉しそうに手を大きく振りながら教室を出て行った。

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