それは真実
京静の瞼が開けられた。
「ちょっと、休みすぎよ。早く起きなさい。」
京静の意識が戻ると、アルカロイドが瞼を引っ張っている光景が映った。
「ちょっと痛いよ。それに急に殺しにかかりすぎだよ。後悔しそびれたじゃないか。もう一回やり直しか。」
京静が気怠そうに言うと、アルカロイドは食い気味に答えた。
「その必要はないわよ。」
「でも、後悔しないと次のページが出てこないんじゃ。」
「誰がそんなこと言ったのよ。勝手な解釈で物事を進めるんじゃないわよ。」
アルカロイドは再び本の姿に戻り、そして京静は半信半疑でページを開くと、第8章が増えていた。京静は本を閉じ、アルカロイドに聞いた。
「じゃあ、どういう条件でページが増えるんだよ。教えてくれよ。」
アルカロイドは人間の姿に戻ったが口を動かさない。京静が問い詰めようと一歩踏み出すと、
「あんたが知る必要はないのよ。あんたは最後まで記憶を辿って使命を全うすればいいのよ。」
「なんだよそれ。僕には知る権利があるだろ。なにがあって教えられないんだよ。」
しかし、アルカロイドは黙ったままである。京静がもう一度問い詰めようとすると、硬い口が動いた。
「今日はもう寝なさい。明日の朝また会いにくるから。」
京静は納得しなかったが、アルカロイドの空気が重たそうに思えて、その言葉に従った。
京静が眠りにつくと、アルカロイドは右手の人差し指と中指を京静のおでこにのせた。
京静は目を覚ました。時計は午前8時を示していた。
(やばい、学校に遅刻する!)
京静はベットから出ると、アルカロイドがドアの前で立っていた。
「どこに行くつもり。」
「どこって学校だよ。遅刻しそうなんだ。」
「へー、学校ね。そんなものはないわよ。」
「は? ない訳ないだろ。早くしないと遅・・・」
アルカロイドは京静の言葉にかぶせて言う。
「あなた学校に行ってる場合じゃないでしょ。そもそも、学校なんてないって言ってるでしょ。あと、あんた今日が何曜日かもわからないでしょ。」
「今日が何曜日って、今日は・・・。 あれ今日は何曜日だ、ど忘れか。」
「ど忘れなんかじゃないわ。だって曜日がこの世から消えたんですもの。学校もね。時期に、何曜日だっけ、なんていう考えすら消えるわね。曜日の概念が消えつつあるもの。」
「どういうことだよ。曜日の概念が消えるって、一体何が起こってるんだよ。」
「何が起こっているのか、それはあんたしか知ることができないのよ。」
そう言い残すと、アルカロイドは本の姿に戻った。
「さあ、第8章を読みなさい。あんたが今やるべきことはそれだけよ。」
京静はなにがなんだか分からないまま、第8章を開く。