毒でさえも
風呂から上がった京静。自分の部屋に戻ると、そこには見覚えのない黒色の髪色をした長髪の女性がいた。その女性は京静が部屋に入ってきたのに気が付くと
「ちょっと、このあたしを何分待たせる気なの。」
「え、えーと、君は誰なんですか? なんで僕の部屋にいるんですか?」
「ちょっと、あの時あんたを助けてあげたのに忘れたっていうの?」
「あの時って、僕たち初対面ですよね?」
「はー!? 信じられない! あの時、あんたが、図書館がどーのこーのって聞いてきたから、そんなもんはありませんよって教えてあげたじゃない!」
「え、えー、あの時の・・・ そういえば、焦ってあんまり顔をおぼえていないや。でもなんでその人がいきなり現れるんだよ。」
「いきなりじゃないわよ。ずっとあんたの近くにいたわよ。」
女がそういうと、女の姿は一冊の本になった。
京静は作品名を読み上げる。
「『人生の意味』って、あの時借りた本!? 君、あの本なの?」
「そうよ、それとあたしは〈アルカロイド〉、アルって呼んでもいいわよ。」
「わ、わかった、アル。でもなんで急に人の姿になったんだよ。もっと早くなってくれればよかったじゃないか。」
「それはできないのよ。第7期を読む前からじゃないとこの姿にはなれないのよ。今までもそうだったの。」
「今までって、それどういう」
「いいから早く読みなさいよ。」
そう言われると、渋々椅子に座って7ページ目を読み始めた。
「第7期より。新種の生命が次々に誕生し始めた。しかし、この新種の参入により、生態系が崩れ、食物連鎖の崩壊が起こった。同時期に、火山活動が活発になり、大規模火山の再来により、絶滅は避けられないと判断。次の者に託す。」
「読み終えたけど、もしかしてアルも一緒に記憶の体験をするの?」
「は、何言ってんの。あたしが今まであんたに回顧させていたのよ。そして、今も、これからも。ということで、早速始めるわよ。」
京静が答える前に辺りは暗くなり、アルカロイドもどこかに行ってしまった。
間もなくして、京静の目に植物が映り込んだ。そこにウサギがやってきて、植物を食べた。ウサギが京静の周りを走っていると、姿を消した。と思われたが、キツネに捕食されていた。キツネがその場から立ち去ろうとすると、上から何かが急接近した。ワシだ。ワシがキツネを捕食している。その様子を見ていた京静は無意識に石を持って、ワシに投げつけた。ワシは死んでいた。その光景を見ると、我に返った京静は、赤いリボン状にものが体に巻き付いているのに気が付いた。それは一瞬にして、京静の体を絞り捻った。ぞうきんのように。