君の思惑
二本目の鉄の棒が、左腕に貫通した。そのまま天井を突き抜けて、上空にまで体を運ばれた。マンション前で起こった時と同じ光景が目に映る。しかし、その時とは違うことが一つある。それは、痛覚だ。さっきの時よりも、より確かに、より鮮明に、痛みを感じる。下を見る京静。心臓に向かって伸びてくる鉄の棒を見つける。死を覚悟する。
(最後に大学芋、食べたかったな・・・)
鉄の棒は、京静の心臓を貫通した。
次に目を覚ますと、5ページ目を開いた光景が映った。
(ふ、増えてる・・・)
京静は読むことを拒み、リビングへ下りた。テーブルの上には、『15の知恵の書』がある。
(なんで、部屋に置いてきたのに。)
そのまま、家から飛び出す。門をくぐり抜け、道路に出た。京静は息を呑んだ。京静は、さっき出たばかりの玄関にいたのだ。また、玄関を飛び出し、門を出る。京静は玄関にいる。何度も何度も門を出た。結果は同じであった。
(絶対5ページ目を読ませたいってわけか。)
京静は観念し、5ページ目を読みに自分の部屋に戻った。
「第5期より。大陸が氷河に包まれた。食べるものが何も無い。追い打ちに超新星爆発が起こる前兆を感知。大量絶滅は避けられないと判断し、次の者に託す。」
(ってことは、次は急に寒くなって、地球が爆発するってことだな。それは大体想像がつく。一つ疑問なのは、どうして、第4期を二回も体験したのかってことだ。体験した内容はほぼ同じだったよな。相違点があるとしたら・・・ もしかして・・・)
京静は家を出た。家の外は大雪に見舞われ、既に京静の体には凍傷がある。そして、地面が大きな音とともに揺れ始めた。瞬く間に地球は爆発した。
目を開けると、5ページ目を開いたところだった。6ページ目を開くと、白紙だった。京静はそれを確認すると、また家を出た。家の外は大雪に見舞われ、既に京静の体には凍傷がある。そして、地面が大きく揺れ始めた。すると京静は大きな声で叫んだ。
「もっと楽しい学校生活を送りたかったーーーー!!!!!」
地球は爆発した。目を開けると、5ページ目を開いたところだった。京静は恐る恐る6ページ目に目を移す。6ページ目に、文字があった。
(やっぱり、一回目と二回目で違ったのは、後悔を残して死んだか、そうじゃないか。つまりは、後悔を残して死ぬと次のページが読めるようになる。最初は死ぬのは嫌だって思ったし、第2期は借りた本まだ読んでないって思ったし、第3期は家族とご飯食べたかったし、第4期は大学芋が食べたかった。恐らく些細な後悔でいいのだろう。)
京静は5ページ目を開いたまま、『15の知恵の書』に向かって言った。
「もう一つ確かめたいことがある。それを確かめたら第6期を読むから、それまではいいだろう?」
『15の知恵の書』は返事を返したかのようにページを閉じた。