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たなばたin夜

作者: 麗韻

数々の星が煌めく夜空。

星たちはまるで帯のようにまとまり、その輝きをより優美なものへ変化させてゆく。

天上に流れる川は、二人を分断し、一日のみの邂逅を許すものになった。


―と、まぁ何のとりとめもなくこんな言葉を思い浮べたわけではない。

今日は七月七日、つまるところ七夕だ。

そして時刻は午後八時半、当然ながら空は星空となっている。

そんな時間に学校の屋上で天体観測まがいのことをやっていれば、

やる気がないヤツはこんなことを考えたりしていないとやってられないだろう。

ところでなんでやる気のないヤツこと俺が、こんなことろに来ているかというと、

全ては俺の隣でたくさんの短冊を必死になって笹に付けている幼なじみのしわざだ。

あ、手伝ってやれとか思うなよ、さっき聞いたら自分のは自分でつけるとか拒否

されたんだから。

さてこんなことになった経緯はと言うと――




始まりは帰り道だった。多分。

向こうがいつから計画してたとか、そんなのはわからないからな。

たまたま両方とも部活がなくて一緒に帰っていたときだ。

「今日は七夕だねっ!」

「・・・そいや、そうだったな。」

何の脈絡もなく唐突にそう言われた。

まぁ、何だかんだで産まれてかれこれ十六年も一緒にいたのだから、悲しいこと

に慣れてしまうんだが・・・。

「そうなのよ!だからそれっぽいことやろ!」

「それっぽいこと?」

「うんっ!星見たり、願い事書いたり、それから・・・・・。」

「あ〜ハイハイわかったから。それがど――。」「ほんと!?じゃぁ午後の八時

に迎え行くから!じゃね!!」

「えっ・・・?あっ・・おい・・。」

そういってさっさと帰っていった。

どうやら鬱陶しくなって返した言葉を、肯定の返事と勘違いしたらしい。

なんという都合のいい頭。

ってな感じであいつは宣言通りに迎えに来て、いまにいたる。




「もういいだろ?」

「まだ!あとちょっと・・。」

そう言ってさらに高いところに短冊を吊す。

手にはあと五、六枚、本当にあとちょっとのようだ。

やれやれ、やっとか。

あまりに暇でどうしようかと思ってた。

「・・・よしっ!できた!」

「やっとか、じゃあ行くぞ。」

俺は手を引っ掴んでさっさと連れていこうとする。

「まってよ!もうちょっと余韻に・・。」

「余韻にはあとでいくらでも浸っていいから。さっさとやるぞ。」

これ以上おまえのペースはこっちがへばる。




「よしこんなもんでいいか。」

「はーやーくー!」

「こんなに時間かかったのはおまえのせいだろ!」

「はーやーくー!!」

「あぁくそっ・・。」

「じゃあ撮るぞ〜。」

「お〜!」

【ピピピピピピ・・・・】

カメラのタイマーの音を聞きながら、素早くあいつのところにいく。

「ケータイのカメラでよかったんじゃないか?」

「よくない!こっちのが綺麗に写るし。」

「そうか?・・・お、そろそろだ!」

「「3、2、1!」」

【パシャッ!】

すぐさま二人とも確認に急ぐ。

「おぉ〜〜!」

「うまくいったよな?」

「うん!」

そこには天の川と大量の短冊がついた笹を背にした俺たちが写っていた。

「あいかわらずの無表情だね。」

「うるさい。おまえもこんなバカみたいに笑いやがって。」

「バカじゃない!!」

プーッと膨れる幼なじみ。

突きたくなってきた。

まぁ、やめとくか。

「よし、帰るぞ。」

「えぇー!もちょっといようよ!」

おい何でそこで涙目になるんだ・・・。

「はぁ〜〜。・・・好きにしてくれ。」

「やったーっ!!」

そういってあいつは夜空を見上げる。

と言うか寝転ぶ。

「おい。汚れるだろ。」

「い〜の〜。」

そういいながら上を見て笑う。


まぁ、いいか。

ポケットの写真とさっきの笑った顔を思い出しながら思う。

まだ友達の延長線上でも、こういうのは、悪くない。

そんなことを思いながら、俺も夜空を見上げた。

―さて、織姫と彦星は会えたのだろうか・・・。

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― 新着の感想 ―
[一言] ほのぼのですね。幼馴染みの彼女は、この彼を好きなんでしょうね。彼の方もまんざらじゃない感じですけど、なんでかめんどくさがってますよねぇ。彼の想いはどの辺にあるのかなぁ…。そんな所が気になって…
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