友×3+弟 2
あれから自己紹介やらなんやらをした後、女王さんにあいつの情報を伝えた。
「名前が分からない…ですか。」
「顔もここに来る前の格好も分かるんだが、名前だけが抜けてるんすよね。」
「それは他の方もですか。」
「はい。」
「なるほど。ではそれ以外の情報を。」
髪型や身長、とにかく俺らが知っていることを王女さんに言いまくった。
「分かりました、ではこれをたどりに探させていただきます。今日は色々ありお疲れでしょうから、どうぞお休みください。」
「待ってください。まだ話は終わっていません。」
先程まで自分の世界にいた弟ちゃんが口を開く。
「なぜ兄さんだここではないとこに飛ばされたんですか?」
「そちらに関しては召喚士たちに命じて調べさせています。分かり次第お伝えいたします。」
「…分かりました。」
その後、各自部屋に案内され食事をとり、就寝に入った。
それからは、ここの常識や地理などの勉強を教わりつつ、剣術や魔法を叩き込まれた。
最初の方は不満げだった弟ちゃんも(俺らは魔法でテンション上がって超乗り気だった)兄のためと俺らが説得し渋々頑張り始めた。
色々教わって分かったことが、どうやら今は戦争しているわけではないらしい。
俺らが来る一か月ほど前まではやっていたようだが、現在はにらみ合っている状態だそうな。
劣勢とは?って聞いたら物資方面が敵側に邪魔されてるんだと。
なんやかんやで3ヶ月たったある日俺らは女王さんに呼ばれた。
「お久しぶりです。訓練の方はどうですか?兵士からは…」
「そういう前置きはいらないので早く要件を言ってください。」
「ははは…。すんません女王さん。」
「いえ、大丈夫です。」
相変わらず弟ちゃんは女王さんに冷たいな。
「ではまず、霧空様のお兄様がいない件について分かったこと、と言いますか何個かありうる原因、を絞ることができました。」
「意外とかかったんですね。三ヶ月も。」
「申し訳ありません。これまでこのような事例がなかったため時間がかかってしまいました。」
「へぇ、本当ですかね。」
「申し訳ありません。」
「謝られたってっ…!」
「まあまあ、それ以上つっかかっても時間かかるだけだから話進めてもらおうぜ、な?」
「…はい。」
それに、どうせ聞いたってこの人も本当の事言わねんだろうし。
「二つまでに絞ることができました。一つ目が我々が召喚時に示した条件と違ったから、という理由でここの魔法陣から出ることが出来なかったということ。二つ目が途中で何者かに介入され此方にこれなかった、もしくは別の場所に飛ばされたか、です。」
2つ目の方はこっちでも予想はできた。
「その、召喚時の条件って何すか?」
「我々が示した条件とは、おかしな思想がなく、しっかり道徳心を持もち、正義感がある程度あるものです。」
なるほどな。
確かに、正義感がありすぎると変なことにちょっかいかけたりしてるもんな、ラノベの主人公とか。
「その条件ならあいつは、はぶかれねえな。」
「そうです。兄さんは正義感はともかく思いやりもありますし優しいですよ。なのでその仮説は違います。」
弟ちゃんはどこか自慢げに言い切った。
「失礼ですがそう言い切ることはできません。もしかすると、あなた方の前ではそう演じていただけなのかもしれません。実は本性が、という話も珍しいわけでもありませんので。」
女王さんがそう言い切ると、弟君だけでなく俺らの雰囲気も鋭くなる。
「兄さんことを何も知らないくせに変なこじつけはやめてください。」
「女王様、さすがに言い過ぎだぜ。」
「喧嘩売ってる?」
「俺らがあいつと何年一緒にいたと思ってんすか?霧空君の言う通り変なこじつけはやめろ。」
「失礼っ!」
部屋の中の雰囲気が変わったことに気づいたのか、外にいた騎士達が扉を開け入ってこようとする。
だが王女はそれを「大丈夫です。外で待機を。」っと止める。
「気を悪くさせてしまったなら申し訳ございません。ですが可能性がないわけではありませんので。」
そう言い、紅茶を一口飲む。
「空気が悪くなりましたね。次の仮説の話に移りましょう。」
カップを置きこちらを見る。
こっちとしては、さっきの話を問いただしたいんだが…。
そう考え、返事をせずにいると女王さんが勝手に話し始めた。
「二つ目の仮説は他国に言っている可能性が高いです。ですが現時点ではどの国でも見つかっておりません。引き続き他国を探してみますが、もし仮説一だった場合の心の準備をすることをお勧めします。」
言い終えると、女王さんはそのまま部屋を出て行った。