表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/67

緊急会議

「ただいまー……」


「あ、アルマにケリンさん、お帰りなさい」


 ケリンが新天地であるギルド『スカーレット』に入ってから4日が経過。

 その間にもケリンは、メンバーと一緒に依頼をこなし続けた。 ここでのケリンの評価は、メンバー間でも高く信頼度もうなぎ上りになっていた。

 子供にも好かれており、子供のお世話を率先してやっているので、アルマからは体調面を心配されたりしたこともあった。

 今回も依頼をこなして帰宅し、リキュアに出迎えられたところだ。


「二人とも、どうしたの?」


 二人の様子がおかしかった事に気付いたリキュアが尋ねた。


「それを話すためにメンバーに一度広間に集合してほしいんだけど……」


「良くないことがあったの?」


「ああ……。 連盟支部経由で公国から連絡が入ってな…」


「わかった。 みんなを呼んでくるね」


 事情を察したリキュアが、メンバーを呼ぶために各部屋に行き、声を掛けた。 その間に、ケリンとアルマも広間へと向かう。 ケリンがショックだったことに気を使ってか、アルマはあえて声を掛けなかった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「みんな、揃ったね?」


「はい、メンバー全員います」


「それで、アルマ。 一体どういう了見なんだ?」


 広間に集まったメンバーの一人のアレンは、アルマがみんなをここに集めた理由を聞いてみた。

 緊急依頼とかではなさそうなのに、みんなを広間に集めた事に疑問を感じたからだ。 それに答えるために、アルマは重い口を開いた。


「先に連盟支部から入った報告を言うとね……。 リーベル公国とエリクシア王国の国境付近にあった洞穴に潜んでいたスライムを、エリクシア王国のギルドが力技で屠ったという報告が入ったの」


「ええっ!?」


「ちょっと待て! あのスライムを力技でか!?」


「うん、これはリーベル公国の諜報部隊が件の洞穴に忍び込んで観察した内容なんだよ。 火力に物を言わせてスライムを無理やりコアを壊して屠ったみたい」

 

「し、信じられない……! そんな事が……!」


 アルマからの報告で、メンバーの多くが驚きを隠せない。 まさか、力技でスライムを屠ったという報告が来るとは思わなかったのだろう。

 特にアイシアは、怒りに身体を震わせていたのだから。


「それで、ケリンさんが俯いているのは……? スライムを倒した事に関係が?」

 

 エリューシアが、ケリンが落ち込んでいるのを見て気になったのだろうか、関連性を聞いていた。 アルマは当然ながらそれに答える。

  

「それをやったのはかつてケリン君が属していたギルド『サテライト』だからだよ」


「あの脳筋主義の筆頭か!」


「そうだよ。 エリクシア王国じゃ力が全てだからね。 その象徴としてのし上がってたみたい」


「それでケリンさんは……?」


「うん、ご覧の通りショックを受けているんだよ。 でもね……」


 アルマが次に言った内容で、ケリンや他のメンバーは冷静さを取り戻した。


「『サテライト』がやった力技でスライムを倒すというのは間違った倒し方なんだよ」


「そうだろうな。 聞いた話じゃスライムを倒しにはコアを破壊するんだが、それを成すには『剣士』と『ビショップ』の力が必要なんだったか」


「そう! コアをスライムの器官から引きはがすために剣士の技で器官を切り刻み、その後『ビショップ』の抽出スキルでコアをスライムから隔離させるんだよ。 その後でコアを破壊するんだ」


「その前に『フリーズ』で凍らせることも忘れてはいけませんけどね」


 アレンやエリューシアが冷静に受け止めたり、アルマの説明に補足を入れたりしたおかげで、他のみんなは冷静になった。

 特に、ケリンを心配するアイシアが、一時怒り心頭だった事もあってか、アルマによる正しいスライムの倒し方を伝えたところで大人しくなった。


「だけど、マスター。 『サテライト』が間違った倒し方をしたんだったら、そのスライムは……どうなるの?」


「器官がくっついたままだから、徐々にコアは再生し、より大きくなって復活するだろうね」


「そうなったらまずいな。 下手したらここにも来るかもしれない」


「可能性としては先にエリクシア王国を攻めていくんでしょうけど、準備は怠らないほうがいいね」


 シルスからの質問に答えつつ、冷静になったケリンからの懸念にも冷静に対応していくアルマ。

 彼女は他のメンバーにも準備は怠らないように進言した。


「で、そのスライムと遭遇した場合は?」


「ギルドメンバー総出で応対するよ。 その際にケリン君とリキュアの力が必要だしね。 最悪、他のギルドとも連携して対応するかもね」


「どれだけ大きくなって復活するかは未知数だからな。 それもやむなしか」


 そして、もし遭遇した場合の応対もギルドメンバー総出でやる事、最悪他のギルドとの連携も視野に入れる事にもアレンが代表として同意した。


「今回の緊急会議はこれでおしまいだね。 今日は暗いし、それぞれ疲れを癒してね」


 アルマの言葉で締めくくり、解散となった。


「ケリン君、頑張ろうね。 ボクも支えてあげるから」


「ああ、頼りにしてるよ、アルマ」


 二人になったところでアルマがケリンを励ます。

 彼の居場所は、この『スカーレット』。 ケリンもそんなアルマに恩を感じ、それに甘えることにした。 一人で抱え込むことがないように。


よろしければ、評価(【★★★★★】のところ)か、ブックマークをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ