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日常の非日常

作者: あさせふみ

病院の待合室で待つこの時間は、どことなく自分が世界に取り残されたような気分になる。

同じく待合室で無言でいる数人はテレビと壁掛け時計を交互に見ている。それをみて、外でがやがやする声が光たどすれば、ここは影と錯覚した。

ここでの音は、遠くの廊下から聞こえてくるバラバラの足音とテレビの声。



テレビのニュース。

どこか落ちつない雰囲気

でも、静かで。

中々呼ばれない空間。



仕事場ではいつも通り仕事が続いている。本来なら私も働いている時間で、それが日常だ。

そう思うからこそ、この時間をしっくり来ない。一向に、慣れる気配がない。

非日常というのはこういう事のような気がする。



ニュースでは、ひっきりなしに、つい先日起きた殺傷事件を報道している。

特に新しい情報はないまま、同じ情報を延々と流している。誰も何も触れず、ずっと同じ場所に立ち止まっているような。



子供たちが刺された、と。


この間も子供が亡くなったとニュースで報道があった。

もちろん同情はするのだが、どこか異世界の話に聞こえる。

私の住む世界で起こっていることかイマイチ分からない。

私はテレビで映る世界がどうにも自分と同じ世界と思えないのだ。



では、私の世界はどこなのか、と問うてみる。

自宅、実家、仕事場、お店。

どこもしっくりこないのが正解で、それが私の心情である。



以前からそういう傾向はある。

実家を出て下宿しても、違う。ひとり暮らしを始めても、違う。仕事をしていても、違う。買い物をしていても違う。

どこにも自分の居場所を見いだせないのだ。



5分も経たずに診断は終わって、また放り出された。


どこで待てとも言われず、さも当たり前のように待合室へ向かう。

また待つしかないのだけれど。誰に何を言われた訳でもないのに。



経過観察の文字。

この時間がまた来年の今頃にやってくる、という意味だ。



違う待合室のテレビでは、首相の話をしており、笑顔も見られる。

国賓を歓迎している。

これも私は別の世界の話。



会社に向かわなくては。


ーこの世界は中々終わらないー

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