表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファンタジー風学舎譚  作者: 黒歴史丸
第一章 臆病少年と訳あり皇女
1/10

臆病者の学舎生活

初めまして皆様。

この度、「小説家になろう」様にて、異世界ブームに便乗させていただくこととなりました。

素人の稚拙な文ではありますが、少しの間お目汚しさせてくださいますようお願いします。

学舎都市での入学式は、入学を祝い夜の舞踏会を開催する。

舞踏会自体が入学式なのだ。各寮3階にある広間、今回の舞踏会はそこで行われる。

様々な国と地域から集まった生徒や講師はそれぞれ出身地の正装をしている。

統一性がないため、会場の空気は実に混沌としている。ミコトは民族衣装で、アミプに近い衣装であった。

「君たちの入学は、君たちの人生にとって大きな転換点になる。此処では己が何者を目指すのも自由だ、この学舎生活を生かすも殺すも君の選択次第。好きにしなさい。」

学舎長の挨拶が終わり、舞踏会が始まった。

家同士のつながりや今回とは別の夜会やらで、元から知り合いがいるケースが多く、すでにグループが出来上がっていた。

(ふぇぇぇ、知り合い居ないよぉー。)

島の外は初めてのミコトはグループに入れなった。しかしながら何処の世界にも外れ者はいるものである。

(あそこの女の子に話かければ良いの?でも、目が死んでるよー。)

ミコト以外にもう一人この場で浮いた子がいた。

カモイ皇国で、女性用の正装に当たる鮮やかな色の銘仙を身に着けていた少女。(銘仙と言うのはつまり平織の絹織物で着物の一種と言う認識で間違いない)

その少女は瞳に光が無く、碌に動きもしない。

(目に光が無いというのは、つまり一種の比喩表現である。目に生気を感じられない様子を指す。)

その上、表情筋がないかのような無表情なので近寄りがたい空気があった。

「あ、あのー。一緒に踊りせんか?」

ミコトは意を決して、少女に話しかけた。貴族社会で生きる上で、他家との交流は重要である。

何より一人でいるのは寂しかった。

「・・・そう。」

少女は顔色一つ変えず答えた。

「僕はミコトって言います。貴方は?」

ミコトは諦めず話しかける。でもちょっと泣きそう。

「島の神童。ミコト・ベルツリー。」

「え?俺そんな風に呼ばれてるの?」

ミコトは困惑した。思わず素の自分がでるほどに。島の外を知らぬミコトは本土での、自分の評判なんて知らない。ベルツリー家に長兄が生まれた事は、知ってる人がいるかもしれないなー位の認識だった。父親が外で自慢しまくった事など知らぬ。

「有名。クナが自慢して回った。」

「そ、そうなんだ。(お父さん・・・やめてよぉー。)」

ミコトは目立ちたくないのと気恥ずかしいので、どんな顔すればわからなかった。

「クナは親ばか。でも評価は間違えない。」

「お父さんと知り合いなんですか?」

「ココロ」

「え?」

「ココロ・カモイ。私の名前。」

ココロ・カモイ。カモイ皇国の皇帝、その15番目の娘。つまりは皇女である。

「ふぇぇぇぇぇー!?」

ミコトの困惑は終わらない。

ミコトの父親であるクナは仕事で定期的に皇帝の城に行くので、城に住む皇族なら知り合っていても不思議はない。

しかし知らなかったとはいえ皇女相手にタメ口。世が世なら無礼うちである。臆病もので悲観主義のミコトは恐怖心に呑まれ、ちょっと泣いてしまった。

カモイ皇国は一夫多妻と多夫一妻の両方が、認可されている。ココロ皇女は皇帝にとっては十番目の妻の娘であり、宝人と言う特殊な人種の血を引いている。宝人の特徴の一つとして、目に光が無い。

無論、他にも宝人の特徴はある。しかし目に光が無いと言うのは側から見て不気味であり、敬遠される理由に成り得た。

またココロ皇女の母は敗戦国から捕虜として連れてこられた女性である。

もう終わった事とは言え戦時の遺恨は簡単には消えない。ココロ皇女に対しても敵愾心を持つ人間は居る。

もっとも宝人と言う人種は、特殊であり特別である。

その上皇族であるココロ皇女の愛想が良ければ、悪いようにする人間は居なかっただろう。…人でなく道具として生きるのを良しとすればの話だが。

宝人と言う特殊な人種である事と、戦時の遺恨そして不愛想な無表情。

城の人間は冷遇され腫物の様に扱われるか、利用しようと近づいてくるかの二択だ。。

「あの、タメ口きいて申し訳ありません。どうか命だけは助けてください。」

ミコトは無礼うちに怯えていながらも、思考し保身に走る。

「気にしない。どうせ忌み子。」

ココロ皇女は、不思議だった。さっきも言ったように、ココロ皇女は忌み子である。

城でも城下町でも良く思われていない。侍従すら彼女を裏で蔑むかあるいは利用対象としてしか扱わない。

故に自分に怯える目の前の少年が、実に不思議だった。

「忌み子でも皇女殿下は皇女殿下ですし、立場はココロ様の方が上ですから。」

ミコトはココロ皇女が忌み子でも、皇帝には愛されていると思った。親の情と言う物を信じていた。だから思った。機嫌を損ねたら、自分は殺されるかもしれない。

「タメ語がいい。」

ココロ皇女は興味が沸いた。ミコトと言う人間は自分が接した限り酷く臆病だ。しかし、クナはミコトを『強い男』と称していた。親の贔屓目が多分にあると仮定しても、ミコトが『強い男』には見えない。褒めるにしても他の言葉が出てきそうなものだが、クナは『強い男』と言った。ミコトの何を持ってそう言ったのか?興味を持ち、観察することにした。」

「え?いや、わかった。でいいか?」

ミコトは困惑した。ココロ皇女は何故タメ口の要求などするのか?合ったばかりのよく分からない男相手に、いきなりタメ口がいいと言うのは如何いう理屈か?ミコトは心底分からなかった。

「これで友達。踊ろう。」

「あ、ああ。」

困惑するミコトと期待するココロ。二人の認識がかみ合わないまま、社交ダンスに身を投じた。

「ミコト」

「なに?皇女様。」

踊りの最中に、何かを確信したココロ皇女は言った。

「私の『使い手』になれ。」

その言葉を受けたミコトは

「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇー?!」

情けない声を上げた。


この話の主人公ミコト・ベルツリーの話をしよう。

ミコトは貴族ベルツリー家の長兄として生を受けた。ベルツリー家はこの世界の中で4つの指に入る国家の1つ、いわゆる和風に近い文化を持つカモイ皇国の外れの孤島を領地として持つ子爵の家である。

カモイ皇国の中でも、先住民族の伝統が強く残る土地だ。

「ふぇぇぇぇ。スローライフがしたいよう。」

ミコト・ベルツリーは屋敷の一室で情けない口癖を言いながら、勉学にいそしんだ。ミコトは驚いたり弱音を吐いたり、する時に『ふぇぇぇぇ』と言うのが口癖である。父親からの課題を、弱音を吐きこなしていた。良くも悪くも凡人であった。

貴族といっても調子に乗れるような人間ではない。

凡人らしい死への忌諱感がミコトを蝕み、また動かしていた。

「とにかく死なないためにも、頑張って色々と力を身に付けなきゃ。」

生きるということは、死に晒されることと同義である。ミコトの原動力は死への恐怖である。

楽観はない。『生きていてこそ自分の道を選び、歩ける。』それがミコト変わらぬ人生論であった。

「にしても、政治、商学、帝王学、武芸、魔術、その他諸々。自分で頼んでなんだけど、やり過ぎじゃないかなぁ?」

ミコトは、はっきり言って疲れていた。ミコトは凡人である。

ミコトにとって、子爵の父からの詰め込み教育はストレスを感じるものだった。

父親に勉学に勤しみたいと要求し、父親のクナ・ベルツリーは貴族として生きるのに、必要な力を与えるべくスパルタ教育を施した。こうして、ミコトは愚痴を漏らし、勉学に苦しみながら成長した。

ミコトがクナに頼み勉学に励み始めたのが齢五つの頃、それからミコトは島の住人として狩り家事家業の三つに勤しんだ。島の子供は皆、狩りと家事を覚えて、生きる術を身に着ける習わしがある。

ミコトもまた、島の住人として、狩りに家事にと駆り出され、また、貴族の子として様々な勉学に苦悩した。ミコトは学舎都市に行く年になった。

「ミコトはこれから学舎都市で六年間の間、学舎に通う事に成る。」

学舎都市は国際会議により、より良い環境で多様な文化に触れた国際的な人材育成を、目的としたどの国にも属さぬ中立都市である。」

学舎都市は多数の学舎の集ってできた都市である。

学生はその中で2つの学舎を選び両方に通うのが原則で、中でもカモイ皇国の貴族は、貴族で在りながら有事の戦働きもこなす身分のため、権力者の何たるかを学ぶ王政舎と武器を持って戦う術を学ぶ騎士舎に通う生徒が多い。

「王政舎と騎士舎以外の、興味のある学舎があれば通っていい。」

親として、選択肢を狭めてほしくないクナはミコトに言った。

「学舎都市に行けば、およそ学べぬ学問はない」そんな言葉が生まれるほどに、学舎都市は多くの学舎を抱える。このチャンスを無に帰すのは、して欲しくなかった。

「わかった。最初の一年間良く、考えとく。」

学生が己の通うべき学舎を決める期間として、入学から最初の年はすべての学舎の授業が受けられる。

ミコトはクナの忠告を聞き、目立ちたく無いが為にカモイの貴族の多くが選ぶ学舎を選ぼうとしていた、己の考えを改めた。


如何でしょう?楽しんでいただけましたか?

次回はミコトの学園生活が、本格的に始まっていく予定です。

・・・何時になるかは分かりませんが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ