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第七章第三節



「フロレット、ごめんなさい……ごめんなさい……私、そんなつもりじゃなかったの」



 すがりついてくるレアに、フロレットは手を伸ばした。



「ああ、主よ……申し訳ありません……私はなんてことを。

あなたが無事でよかったは。そうでないと私……取り返しのつかないことを……」



 はらはらとレアの瞳からしずくがこぼれ落ちていく。



「ごめんなさい、フロレット。私が火をつけたのよ……森に」



 思ってもいない言葉を耳にし、フロレットは身じろぎした。



「ど、どうしてそんなことを……」


「…………大勢の人を、救いたかったからよ。それが私にできる唯一、兄さんの……」



 言い淀み、レアは顔を上げた。



「クラウス先生……――クラウス・ズィルバーンクーゲルさん。どうしてフロレットを助けにいったの。

あなたも一緒に、死んでいたかもしれないわ……それなのにどうして……」



 姓を含めた呼び名に、クラウスは目を見開いた。昨晩、屋敷を訪れたものたちには、自分の姓を告げていない。それなのにどうして――。

 少女のブラウンという姓を思い出し、クラウスは瞠目した。まさか、この少女は。そうか、だからか、と思った。だから、この少女は森を焼こうと――群生した白い花を丸ごと消し去ろうとしたのか。



「……目の前で死にそうな人がいれば、助けたいと思います。

僕は……多くの人の命を塵芥のようにしてしまったことがある。たとえこの命が危険にさらされようと、僕は償い続けなければならない……償いたいと思っている」



 男の言葉に、少女は何を思ったのだろう。

 乾いた涙の跡を頬に浮かべながら、レアは虚空を見つめた。



「私……自首するわ……もう少しで私は人を……」


「……今回のことで、誰かが傷ついたわけでも、亡くなったわけでもない。

起こっていない罪を裁くことは、軍警もできませんよ」




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