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俺と幼馴染みが学校に閉じ込められた!  作者: 風海レト
第1章 廃校に来た俺たち
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1-6 ニシヤユカリ

これは…第2多目的室の鍵か…。

「…多分…すぐそこの…」

「そっか、行ってみよーぜ」

「待って…」

「ん?何?」

「この絵以外にも…何か描いてた…よね?」

うっ…知ってたのかよ…。バレない様に描いてたんだけどなぁ。

「いや?描いてねぇよ?」

「…描いてた…」

「いや?描いてねぇよ?」

「私を…描いてた…」

「うぐっ…何でそんな事まで分かるんだよ…」

「チラチラ見てたし…」

「あー、分かったよ…見たいんだろ?」

「…いい…見ない…」

「あっそ、じゃあ行こーぜ」




うーん、多目的室ってこんななのか?何にもないじゃん。ウチの中学にはなかった部屋だからどんなのだろうと期待してたのに。ま、それ以外は何にもないって表現の方が正しいんだけどね。

「慎…あれ…あの子…」

「分かってるよ、流石に分かる。」

「あの子が…西谷さん…?」

「おーい、そこの君は西谷って子かー?」

(私は裏切り者)

「えっ?」

(裏切り者は…結局裏切られて死んだ。彼に私は殺された。こうなるのは必然だったのね…)

「お前は西谷って子か?」

俺らはその霊に近付いた。青い霊だ。

(そう…私は裏切り裏切られたニシヤユカリです)

「そっか…早速だけどお前のネガイは?」

(え?えっと…あなた達は…)

「ああ、俺は山口慎」

「…神山美琴…」

(えっと…山口さん達は何ですか?いきなり他人の願いを聞いてくるなんて…変ですよ?)

「ああ、えっと…そうだな」

「…裏切られたって…何?」

(えっと……名前は出てこないんですけど…クラスメートに私が自殺するよう仕向けられたんです…)

「は?なんだそりゃ!?」

(彼は私の…罪の意識を最初は軽くしてくれてたんですけど、ある時に罪の重さで…私の犯した罪の重さで私を自殺まで追い込んだんです…)

「その罪って何だ?」

(…私は、勘違いで何も悪くない人を殺めてしまいました…。それが私の罪です…)

多分松山の事だろう。この霊が西谷なら西谷の最大の罪は…松山を自殺まで追い込んだ1人なんだから。

「そっか…その罪、償えるなら償いたい?」

(当然ですよ…だって…だって…)

「じゃあ償いに行こうぜ!今ならまだ償える!」

(いえ…無理です。私はここに縛られているんです。ここからは動けません…。それに…彼はもう…死んでしまったんです…。もう…もう会う事も出来ないし私が謝る事も…出来ないんです。)

「そっか…どうすっかな」

多分西谷のネガイは松山に謝りたいんだろう。松山は会議室にいるから会うこと自体は出来る。けれど西谷は動けないのか…。そうだ!松山がここに来ればいいんじゃねぇか!

「ちょっと待ってて?」

(え?何ですか急に…)

俺は急いで会議室に向かった。




「松山!」

(うわっ!なんだ君達か…ビックリさせんなよ…。)

「お前、取り敢えず一緒に多目的室に来てくれ!」

(…ああ、西谷に会ったのか。)

「西谷、すげぇ謝りたそうだったぞ、仲直り出来るんじゃ…」

(知ってるよ、でも僕は行けない)

「はぁ!?何でだよ」

(僕も彼女と同じでここに縛られている身。つまり僕もここから動けないという事さ)

「…何だよ…何だよそれ!結局ここから出られないんじゃん!」

(何?ここから出る為に彼女のネガイを聞いたのかい?)

「あったりめーだろ!」

(何で…それで生きているんだい?)

「は?」

(その様な態度を彼女に見せれば彼女

は赤い霊になる。なぜ…)

「慎は…彼女から直接…願いを聞いたワケじゃ…ないから…」

(……なんて強運の持ち主だ!ただの早とちりで死から免れるとは!)

「は?意味が分からないんだけど」

(ハハハ…凄いな君は。でもその態度は良くない。ここから出れるからネガイを聞くわけじゃないんだ。純粋に他人のネガイを聞くからこそ出られるんだ。出る為じゃなくて悩んでる人の為にネガイを聞いてあげて?)

「分かったよ…けれどこの先はどうすればいい?」

(フフッ…意識が変わったね。んじゃ、これ)

「ん?なんだ?これ、手紙?」

(西谷宛に書いた手紙だよ…それがあれば彼女のネガイは叶う。『彼女の為』にそれを持ってって)

「ああ、分かった!行こうぜ!美琴!」

俺らは急いで多目的室に向かう。

(そっか…そっか…今まで何人も僕の言う事を信じた。それで西谷の所で死ぬ人が大多数。ここから出たいが為に皆死ぬ。彼女の為にネガイを叶え西谷の所をクリアしても…ウソツキに殺される。それで結局ここから出られたのはあの時の3人だけ…。彼らは…西谷の所で死ぬハズだった…。けれど運があった。今までにないパターンだ。こんな状況なら、皆慎重になるのに、彼らは早とちりというありえない方法で切り抜けた。彼らなら…ここを壊す事も出来るかも知れない。僕らも…救うかも知れない。)




「西谷!」

(はいっ!何でしょうか?)

「お前の謝りたい相手と思われる人から手紙を預かってきたぞ」

(えっ…?松山君から?)

「うん…そう…だよ…」

(松山君を知っているんですか?)

「ああ!でもまずはこれを読んでくれ」

(ええっと…はい)

…そういや何が書いてあるんだろうな。お前を恨んでいるとか書いてあるのかな?来世でお前と会ったら殺してやる…的な事だったりして。

(ううっ…ヒック…)

「やっぱり…ね…でも…よかった…」

「ん?何が?」

「多分…あの手紙に…書かれてるのは…西谷さんを…許すって事…」

「な、何で分かるんだよ…」

「だって彼女…泣いてるけれど…どこか安心した様な…顔してる…」

「ん?ああ、確かにな」

(うぐっ…ゴメン…ゴメンね松山君…私が、弱かったばっかりに…松山君…ありがとう…)

「…良かったな、許して貰えたんだろ?」

(はい…ありがとうございます…けれど…1つだけ、グスッいいですか?)

「ん?何?」

(何で私にここまでの事を?)

「トーゼン…お前がその事で悩んでたからだろ!」

(えっ?)

「お前がその事を本気で反省していたから助けたんだよ!」

(…ありがとうございます!)

ガコン…

どっかでロックが解除された様な音がしたな。これで…脱出までの道のりの第1歩か…。

「女子は笑ってるのが1番だって!笑って!」

(…はい!)

西谷は最高の笑顔で多目的室から出る俺らを見送った。ん?鍵が落ちてるぞ?これは…第2家庭科室の鍵か…。何でこんな物が落ちてるんだろうな。

「ねぇ…私も…?」

「ん?何が?」

「私も…笑ってる方が…いいの?」

「状況によるけどやっぱ笑ってる方が良いよな」

「そう…」

「美琴は笑わねぇよな、まぁこんな状況なら笑う機会もねぇけど」

「うん…」

「実生活でもあんま笑わないのか?」

「…どういう時に…笑うのか分からない…」

「え?どういう時ってそりゃ楽しい時だろ」

「楽しい時が…どんな時か…分からない…」

「え?人と喋ってて楽しいとかこれやってて楽しいとかないの?」

「うん…」

「ピアノとかは?楽しくないの?」

「楽しく…ない」

「絵とかは?すっげえ上手いじゃん」

「…楽しくない…」

「ええっと、じゃあ友達と遊ぶとかは?」

「楽しく…ない…」

「あー、じゃあスポーツは?」

「楽しく…ない」

「ハハッ…楽しい事一切ないんじゃん」

「…ゴメン…」

「や、謝んなくていいって、でも多分美琴はこれから楽しい事、いーっぱい見つけるよ」

「えっ…?」

「だって色々出来るじゃん?出来ない事って楽しくないけど出来る事って楽しくなるからさ、だから今楽しいって事が分からなくても分かるようになるよ、きっと」

「そう……なんだ」

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