1-4 マツヤマトモキ
「ここか…会議室は」
「そう…だね…」
「ん…!人がいる!」
「待って…!」
美琴は俺の服の袖を掴んだ。
「なんだよ?」
「あれは…多分…霊。今は青いけれど…怒りで…赤い霊になるかも…」
「なっ…そんな事もあるのか?」
「うん…彼は…かなり危険…」
「分かった…」
「な…なぁ!」
(誰?)
「お、俺は…山口慎…」
「神山…美琴…」
(僕はマツヤマトモキ。君は僕の言う事を信じる?)
「は?」
何言ってんだ?コイツ。
(僕と西谷は付き合ってたんだ。なんで僕の様な人が、クラスのアイドル的存在の西谷と付き合えたのかは分からないけど。僕らは幸せな日々を送っていたよ。西谷が幸せ、と思ってたかどうかは分からないけど。でも嫉妬心って怖いね。クラスメートの黒田貴教は僕が西谷と付き合ってる事に嫉妬した。それであのメモを僕の机の中に入れたんだ。僕がそのメモを見ていたら、黒田に…ね。結局僕達は別れたよ…)
「あのメモは黒田貴教っつー奴の書いた物なのか…」
黒田って奴の思う壷になったってことか…。
(……だけどそれだけじゃ終わらなかった!奴はそのメモを口実に僕を気持ち悪い人間として扱ったんだ!ロッカーを汚され、机を汚され、靴を、服を、教科書を…。それに…それに西谷も僕を気持ち悪い人間扱いをしたんだ!)
「な…そんなこと…有り得るの…?」
(信じられるかい?)
「…信じる。確かにチラッと見ただけだったけど机にもロッカーと同じ様な物があった…」
(…正解だよ。ここで信じないと君達が言ったら、僕に殺されてたよ。僕はここで何人も殺してるからね)
「えっ…」
(ああ安心して?君達は僕の言う事を信じた。だから君達は殺さない。その代わり僕を信じた人には、この学校の脱出のヒントを教えてる)
「えっ!本当か!教えてくれ!」
(この学校には脱出の『キーマン』が何人もいる。そのキーマン全員の『ネガイ』を叶えれば…脱出出来る。だけど当然、皆知ってる。良いように使われない様に気をつけて…。ちなみにここの中学校のキーマンは西谷だよ。でも気を付けて…彼女も1つ間違えれば君達を殺す霊になるから。……西谷の『ネガイ』聞いてあげて…)
「その…西谷って奴はどこに?」
(分からない…けどコレ持ってって)
「これは…」
第6校長室の…鍵?
「校長室…何で…こんな物を?」
(廊下に落ちてたんだよ。まぁ僕には必要ないしあげるよ)
「ありがとうな」
(気を付けてね、特にウソツキの霊には…ね)
俺らは校長室に向かう。
(キーマンの記憶は消される…何で僕達の記憶は消されないんだろうね…とっくに許してるのに…ね)
「ここか…」
「入ろう…?」
俺達は鍵を開け、中に入った
「んー、やっぱ校長室ってだけあって調べなきゃいけない所が多いな」
「そう…だね…」
「美琴は部屋の左側を調べて、俺は右側を調べるから」
「うん…」
校長室ってだけあって教室よりかは狭い。だけど棚やらなんやらが多いから調べる箇所が多い。調べる範囲は狭いけど箇所は多いみたいな形だ。
「何もねぇな…開かない所が多すぎ」
「コッチは…色々見つかった…」
「えっマジ?教えてくれよぉ」
「後で…今は調べるのに…集中する…」
焦らしてるのか?なかなかやるなぁ。まぁでも正論っちゃ正論か。いちいち報告してたら集中が切れちゃうもんな。お、コッチも見っけ。でも詳しく見るのは後でにしよ。それから黙々と俺らは調べていった。
「さて!こんなもんかな?」
「うん…」
俺らは見つけたものをテーブルに広げた。鍵が2つ、メモが1つ。電池が2つ。書類が3つ。
「あ、後あそこに…金庫みたいな物が…」
うーん、金庫ではないなぁ。でもまぁパスワードを解除すれば中の物が取れるっつーのは一緒か。
「さて…と、まずは鍵から調べてこうか」
えっと、第2会議室と…第1理科室の鍵か。
「地図にない…多分違うフロアの鍵…」
「何でそんな物があるんだ」
次は…メモを見てみよう。『9661』だって。汚ぇ字だな。ホントに校長かよ…。電池は…お!この懐中電灯に使われてるのと同じだ!ラッキー。書類は…生徒の物が2つと、よく分からない物が1つ。生徒のは松山と西谷のか…。西谷って由香里って名前なんだな。もう1つは…なんだ?よく分からねぇな。
「このメモ…金庫のロックを…解除するのに…使うんじゃない…?」
「あ、確かにそうかもな」
しかしパスワードをメモに書くまでは分かるんだけどさ、それを部屋に置いとくか?持ち歩くとかしようぜ?
「えっと9661だっけ」
「そう…」
「ん?あれ、開かねぇ…」
「間違ってるんじゃ…ない?」
「もう1回入れ直してみるか」
ボタンを押してロックを解除する仕組みだ。ロッカーは南京錠だった。
「やっぱ開かねぇ…」
「これ…反対なんじゃ…ない?」
「反対ってなんだよ?」
「1996なんじゃ…?」
「……開いた」
情けねぇ…。超情けねぇ…。俺今超カッコ悪い…。
「なんか…ゴメン…」
謝らないでくれよぉ!なんか謝られると惨めになってくるんだよぉ!
「えっと…それで中には…何が…」
「ああそうだった」
えっと、中には…第6体育館の鍵と第4音楽室の鍵か。
「やっぱり…鍵だったんだ…ね」
「だな、音楽室と体育館の鍵…地図に載ってる?」
「音楽室は載ってる…けど…体育館は…」
「じゃあ音楽室に行ってみよっか」
っ!また赤い霊…!
「クッソ!また悪霊かよ…!」
「逃げよ…?」
(イキルモノ?コロス!)
「うわっやっぱ追いかけて来たよ…」
俺らはまた急ぎめに逃げる
「そこの教室に入ろう!」
「うん…」
…!開かねぇ!なんでだ!
「ねぇ…?早く開けて…?」
「開かねぇんだ!なんで…」
(イキルモノ…コロス!コロス…コロス…コロ、コロコロコロロロロロロロロ…)
「なんで開かねぇんだよ!」
ハッ!そういえば最初に会った霊が『空間が固定されてる』って言ってたな…。そんな教室もあるって言ってたっけ…。ドアが空間に固定されてるって事だったのかよ…。
「クッ…別の教室に向かうぞ」
「えっ…ここは…?」
「ここは開かねぇ!理由は後で話す!」
「うん…分かった…」
俺らはまた逃げ出した。
(マテ!イキルモノ!コロス…コロス!)
「ここの教室はどうだ?」
「ここって…さっきの教室…」
ああ、ここは3-3-3教室か…。
「フーッ、結構焦った…」
(アケロ!アケロ!)
「…ここにいるのがバレてる…けど?」
「手がねぇから開けられねぇよ…」
「どうやって…逃げるの?」
「そこは頭を使って…ね?」
「ホントに…これで平気…?」
「まぁ、多分いけるっしょ!」
悪霊のいる前のドアに机を2つ重ねた。これなら霊はこれを越える為に浮くはずだ。俺が前のドアを開ける。入って来たら美琴が後ろのドアを開け、外に出て前のドアを閉める。俺は全速力で後ろのドアまで行き、後ろのドアを閉めるって作戦だ。
「んじゃ…開けるぞ?」
「うん…」
俺は前のドアを開けた。すると悪霊は若干困惑した様子を見せたが、動いた。しかし奴は浮くのではなく、机を通り抜けてきた!
「あっ…しまった…透明なのか…」
俺は教室の奥に逃げた。美琴はもう前のドアを閉めた。
「やべ、しくった…」
(コロス…コロス…)
「しまった…」
けれど全速力で逃げれば…なんとか行けそうか…。
「おおおおおお!!!」
俺は机を思いっ切り蹴っ飛ばした。