2-6 オオムラサオリ
まーたここに逆戻りかよ、そんで前調べた所からスタートかよ。
「ふぅ…こっちに…それっぽい物は…なかった…よ」
「え!?美琴早いな」
「神山先輩、山口先輩手伝ってあげて下さい!」
「え、いいよ別に…自分でやるよ」
「いい…慎、1番遅いから…」
「う…うっせーな」
「口よりも…手を動かして…」
「分かったよ…」
俺は6個目を調べていた。もう慣れたけれど、調べると言うのは、服の中まで調べなきゃならない。そこにリボンがあるかも知れないからだ。服の中にあるわきゃねぇけど。っつっても赤いリボンは服の中にあった。だから絶対ないとは言えねぇ。
「慎…遅い…もっと早く…」
「俺は男子だぜ?こんなん気が引けるに決まってんだろ」
もう慣れたけど。
「白石君だって…男子だけど…そこそこ早いじゃない」
「そこそこ…ですか」
「いや、だってアイツはおかしいし…」
「え?僕っておかしいですか?」
「うん…ちょっと引く…レベル」
「えぇ!?何がおかしいんすか?」
「さっき変な事言ってたじゃん」
「さっき…?ブラがちっさいって言ったことっすか?」
「うん、まぁ」
もうちょっとオブラートに包んでと言うかなんと言うか…。
「だってちっさいんすもん。ちっさい物をちっさいって言って何が悪いんすか?」
「まぁ…うん、もういいや」
「それより…手を…動かして…」
「そうだな、悪かった。」
…ん何かある、あれ?紙?何も書かれてねぇな。この服の主が持ってた物か?ん!?何だ…頭が…。まさかこれは…!
「あ…頭が…痛てぇ…」
「え!?先輩、大丈夫っすか!?」
「慎…!しっかりして…!」
「先輩!センパ…」
ドサッ…。
ここは…更衣室?ちょ…さっきまで俺は美琴と白石と一緒にリボン探してたハズなんだが
「うーん、どの籠にもないわねぇ」
「ねぇ、何でお父さんは来ないのぉ?」
ミニ美琴の声っ!…アレ?どこにもいねぇ。
「うーん、お母さんにも分かんない!」
お母さん?この声は…『その子には手を出さないで!』って言ってた人の声だな。とすると『待て美琴!』がお父さんか?しかし、もう1人は誰だ?
「ふーん、あ!リボンってあれの事じゃない?」
「あ!本当だ!よく見つけたわねぇ」
籠の…下?あんな所に何で…。
「それじゃ5-2-4の大村さんの所に行こっか!」
「うん!行こ行こ!」
「…こんな所にあるなんておかしいわ、ここでもいじめに似た類のものがあったのかしら?そうとなると分かってくる事があるわね…。多分これは彼の仕業ね…」
「お母さん?行こーよ」
「ああ、そうね!」
ここでもいじめか…。そんで何だ?彼って。誰の事だ?
「ん…」
「あっ!大丈夫っすか?先輩?急に倒れちゃって…」
「慎…私と思われる人に…会ってたの?」
「いや、今回は会ってない…ただ声が聞こえただけだった」
「そう…」
「それより、リボンは多分…」
「えっ?」
「ほら、あった!やっぱここだ!」
「なるほど!籠の下ですか!」
「さっき…倒れた時に見たの?」
「ん…いや、ミニ美琴が見つけてた」
「そう…」
「早速小室に届けに行きましょうよ!」
「おう、分かった。」
(おお、それそれ!それだよ!)
「ハイ、あげる」
(イヤ…俺に渡されても困るんだけど)
「え?じゃあどうすれば…」
(5-2-4にいるオオムラサオリって子に渡してあげて?)
「大村早織?分かった、渡すよ」
(多分教室の隅っこの方にいるよ、よくそこにいたから)
隅っこによくいたってなんか寂しいな。いや?お母さんが言ってた様にいじめの類があったとしたら…隅っこに追いやられると言うか隅っこに行っちゃうのも納得出来るな。つーか、またいじめかよ…。
「それじゃ!行きますか!」
俺らは5-2-4教室に向かった。
(ヒッ!もう勘弁して!)
俺らは教室に入るなりいきなりそう言われた。
「えっ…何でいきなりそんな事言うんだよ」
大村早織だっけ?酷く怯えている様子だ。
(どうせアンタらも私に嫌がらせをしに来たんでしょ?騙されないから!帰ってよ!)
「あー、小室光輝って人にここに行けって言われたんだよね、僕ら」
(…光輝から?何の用?)
「このリボンを渡せって」
俺らは青いリボンを渡した。
(ああ…ありがとう!どこにあったの?)
「いや、更衣室の籠の下…」
(そんな所に…ありがとう!)
「いやいや、僕達は小室に頼まれたんだから、気にしなくていいって!」
(アンタ達は私の為にこんな事を?)
「ああ!お前の為だ!」
(へぇ…優しいんだね!アンタ達!)
「所で小室とはどんな関係?」
(どんな関係って?)
「あ、僕が悪かったよ、小室って彼氏?」
「お、おい…いきなり何を聞き出してるんだよ」
(うん!光輝は私の彼氏!でも何で私となんか…)
「何かあったの?」
(うん…光輝と付き合う様になってからクラスメートから嫌がらせされて…リボンも多分隠されたんだよ…)
「なるほど…ね」
(でも光輝はいつも助けてくれた…嫌がらせをする子達も光輝がいると嫌がらせを止めてた…)
「そういや小室って結構顔よかったよな」
「ええ、だから僕はクラスメートが嫉妬して嫌がらせをした、と思ってます」
(うん…だからね、何で私が光輝と付き合えたのかなぁって、私より可愛い子、いっぱいいるし…)
「それは違うと思うな、僕は」
(えっ?)
「可愛くないから付き合わない、って事じゃないと思うよ」
(そう…そうだよね!やっぱり光輝はいい人だよね!)
「ああ!もちろん!」
…何かがおかしい。何だ?何がおかしいと思ったんだ?ミニ美琴のお母さんが言ってた事から恐らく『彼の仕業』なんだろな。でも変だ。『彼の仕業』、『彼』なのになぜ…『彼の仕業』なのにリボンがあった場所が女子更衣室なんだ?女子と一緒に嫌がらせに絡んだ?それならお母さんは『彼らの仕業』にするはずだ。
「慎…どうしたの…?」
「あ、イヤ考え事」
「山口先輩!そろそろ行きましょうよ!」
「ん、ああそうだな」
やっぱり変だ。何かがおかしい。
(フーッ、演じきった…。こうしないとアイツらは出れないもんね。でも早かった、今回は。アイツが言ってた様にもしかしたら…ここを壊すかも知れないね。多分『記憶』に『触れる』事が出来る人がいるんだね。でも…アレ?あの後ろの方にいた子、まさか美琴?そっか…なら…可能性はあるかも!)
(でもまだ『戻ってきて』ないよ?)
(あら、マツヤマ…いたのね)
(どうなるか心配でね)
(あなたが言ってた事、分かったわ)
(だろ?彼らなら、壊すかも知れない、僕らを救うかも知れない)
「小室!届けて来たぞ!」
(あ…ありがとう、アンタらは本当にいい奴なんだな)
「いいっていいって!」
ガコン…。
またロックが解除された様な音がしたな。
(アンタら…もう行くのか?)
「ああ!」
(もう少し喋ってたかったけれど、仕方ねぇか!)
「じゃあね!また会えたらその時ハいっぱい話しような!」
(ああ!そうしよう!)
俺らは相談室を後にした。
「また会う気、あるんか?」
「ある訳ないじゃないですか!」
「やっぱりな」
「でも…この学校以外の場所でなら会いたいです!」
「フフッこの学校以外じゃ会えねぇよ」
「会えるかも知れないですよ?」
「そうだな…んじゃ!階段まで戻るか!」
「そうですね!」
「そう…だね」