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一難去って……


 ――あれから僕は【ステータスオープン】のスキルを取得した。

 

 僕は森を抜けるべく【念動】で移動を試みているのだが、MPの管理が感覚に頼るとやっぱり厳しい点があるのだ。だって残りMP0になって気絶したら一巻の終わりだからな。


 ――――――――――――――――


 マナセ・トウマ LV1 状態 四肢欠損


 HP 16/16

 MP 12/20


 ATK 4

 VIT 3

 SPD 0

 MAG 5

 LUK -1292


 <Aスキル>

【ゴーレムクリエイト】【真眼】【ヒール】【念動】


<Pスキル>

【勇者】【レベル1固定】【気配察知】


 ――――――――――――――――



 改めて酷い数値だ。

 確か僕ってこの世界の住人の半分くらいのステータスなんだっけ。


 と、言うことは僕以外だったらさっきの狼にもあまり苦戦しなかったのかなぁ。


 ……そんな気がしてきた。


 そう言えば僕の最大HPって20だった気がするんだけど、減っているのは体が欠損したからなのかなぁ。それにSPD0ってなんだよ。ダルマだからか。

 LUKの数値も悪化している気がする。




 ――実を言うと僕、あまり暢気なことは言ってられません。

 今結構ピンチだったりします。



 と、言うのも念動による移動に時間がかかるせいでもう日が暮れてきているのである。

 ついでに喉がカラカラ。腹も減っている。

 今になってあの狼の死骸を生でも食しておくべきだったかと後悔し始めているところだ。

 あの時はせめて火を通さない生肉を食べる気が起きなかったのだ。

 かといって片手しかない僕には火を付ける手段もなかった。早いところ火魔法は取得したい。

 更に酷いのが、終わりの見えない森地獄。

 ここまでどう来たかわからないから絶賛迷子中。


 僕が作ったゴーレムは僕の移動に合わせてひょこひょことついてくる。無駄に魔力を消費しないためにも僕が魔力回復待ちになる度にスリープモードになって貰っている。


 そして暗くなった森の中を移動する僕を先程から何者かが付けている気がするのだ。

 移動手段及び攻撃手段をMPに頼りきりの僕としては、その何者かを排除しない限り進めない。


 MP枯渇=死である。どうしてこうなったよ。

 ちょっとこの世界ハードモードすぎませんかねぇ。


 僕は【真眼】を発動させて辺りを窺うことにした。

 このスキルのありがたいところは見え方が明度に左右されないことである。更に視野が広がり視力も上がる。そしてMPは必要ないのだ。非常にありがたいスキルだ。

 ただ、視力があがると情報が増える分、脳の処理に負荷がかかる。

 言ってしまえば疲れるのだ。長時間発動すると頭痛が始まる。常時発動させるのは割と厳しい。


 しかし、命が関われば泣き言を言っている場合ではない。頭痛がしようと使うのをやめるわけにはいかないのだ。僕は歯を食いしばってスキルを使い続ける。


 そして僕はついに追跡者を発見するに至る。追跡者の数は恐らく5。

 どれも小学生くらいの大きさだが頭の大きさがやたら大きな二足歩行の生物だ。

 顔つきは醜悪で、腰蓑一丁姿。肌の色は緑色。

 そいつは弓や棍棒を手に僕を負っている。それなりの知能があるのが見て取れる。


 ……くそ、数的不利の上、遠距離攻撃持ちとか最悪だ。

 こっちは短剣も失って丸腰なんだぞ。

 動けない僕は格好の的じゃないか。


 近寄らせたら負けだ。どうにかして殺すしかない。


 僕はじっとその場でチャンスを待つ。


 緑の小男達のうちの1体が弓を構え矢をつがえた。

 そしてその直後棍棒を持った4体がこちらへと疾走してくる。

 距離は約10メートル。小男達は木の陰を器用に利用してこちらへと距離を詰めてくる。


 身動きが取れない僕はその場でじっと身構えるしか出来ない。


 そして矢が放たれた。

 

 だが、僕は【真眼】のスキルを発動している。スローモーションに等しい。

 僕はしっかりと矢の位置を確認した後【念動】を発動。

 僕へと直進してくる夜野軌道を無理矢理ねじ曲げ僕のコントロール下に置いた。

 そしてそのままスピードを殺さないように注意しながら弓持ちの小男のこめかみにぶち当てた。


 ……まずは一体。一番厄介な遠距離持ちを倒せた。


 しかしその間に、残りの棍棒持ち四体は僕の目と鼻の先まで距離を詰めていた。

 近くに来るまで気づかなかったが、一体だけ鉄剣を装備しているようだ。

 あれに斬られたら洒落にならない。


 僕は【念動】で操っていた矢を急遽鉄剣持ちの小男に向け引き寄せた。

 しかし、矢の到達よりも小男達の接近が早い。

 小男達は素早く僕の四方へと散開するとそれぞれ手に持った獲物を振り下ろしてくる。


 ……回避を!


 僕はとっさに【念動】を発動させようとして物を1個しか動かせないことを思い出す。

 勿論、そこには僕の体だって含まれる。


 なら致命打以外甘んじて受けるしかない。


 ――ドガッ! バキッ!


 僕は【真眼】でコースを見切って頭を庇うように上半身を捻る。

 振り下ろされた棍棒は僕の肩と背中へと直撃した。

 それとほぼ同時に鉄剣が横薙ぎに振るわれる。


 ……くそ、一度回避行動を取った以上体のバランスが傾いてしまっている。これ以上の回避行動は取れない。



 小男の剣が僕の脇腹を横からえぐっていく。


「っく……………ううううううううっ」


 ……あ、駄目だ死ぬ。


 そう思った瞬間、剣持ちの小男が膝からくずおれた。

 どうやら念動で引き寄せていた矢が、小男の後頭部に突き刺さったようだ。

 間もなく小男の頭を貫通して額からこちらへと抜ける。

 間一髪だった。

 小男の振るった剣は所持者が生命活動を停止したせいか、剣幅一個分だけ僕を切り裂きそこで動きを止めたようだった。


 ……容赦の無い棍棒の雨を身に受けながら僕は脇腹刺さった鉄剣を右手で引き抜いた。

 それを正面に向かって思い切り振る。

 負傷を抱えながら体重を乗せる事も出来ず腕だけで振るった攻撃。正面の小男は踊るように体を捻ってあっさりと躱す。そして僕の側面に回って先程えぐられたばかりの脇腹めがけて棍棒を振り抜いた。


 「……ぐああああっ」


 僕は痛みに呻く。僕の周りを囲む小男を振り払いたい一心でがむしゃらに剣を振り回す。

 流石に小男達は怯んだのか僕から若干距離を空けた。


 ダメージが嵩み、襲ってくる目眩。朦朧とし始める頭。僕は必死に意識を繋ぎ止める。

 

 がむしゃらに剣を振り回しながら僕はステータスを呼び出す。 


 ――――――――――――――――


 マナセ・トウマ LV1 状態 四肢欠損


 HP 4/16

 MP 10/20


 ATK 4

 VIT 3

 SPD 0

 MAG 5

 LUK -1292


 <Aスキル>

【ゴーレムクリエイト】【真眼】【ヒール】【念動】


<Pスキル>

【勇者】【レベル1固定】【気配察知】


 ――――――――――――――――


 【念動】を使った影響でMPは2消費した。【ヒール】の消費は5だから2回使えるが僕の攻撃手段は【念動】な以上、実質回復は1回きりだろう。


 急所を外せば棍棒のダメージは1。小男三人がかりで攻撃されてしまえば残された時間は少ない。


 僕は何も考えずがむしゃらに剣を振り回す。当てようとは思わない。

 右手の鉄剣を当てようと考えると【念動】の動きに障害が出る。

 ただ、近寄らせないためだけの牽制だ。


 あくまで【念動】が攻撃手段。右手に関しては動きを止めないとだけ意識していればいい。



 「【ヒール】」


 さぁ、後は打ち止めだ。

 こっから先は僕が【念動】の矢で小男を殲滅するのが先か、殴り殺されるかの何の駆け引きもない戦いだ。


 僕は矢を念動で操り小男達の頭を打ち抜いていく。

 改めて【真眼】のスキルがありがたい。このスキルでスローモーションに見えるおかげで動き回る小男に僕でも矢を当てられる。


 何回殴られたかはわからない。

 だけどその間に僕は一匹、二匹と仕留めた。


――――――――――――――――


 マナセ・トウマ LV1 状態 四肢欠損


 HP 1/16

 MP 1/20


 ATK 4

 VIT 3

 SPD 0

 MAG 5

 LUK -1292


 <Aスキル>

【ゴーレムクリエイト】【真眼】【ヒール】【念動】


<Pスキル>

【勇者】【レベル1固定】【気配察知】


 ――――――――――――――――


 ――小男が棍棒を振りかぶるのが見えた。僕は必死に矢を操る。

 だが、僕の矢が到達するよりも早く小男が僕に向かって棍棒を振り下ろす。

 そして、それは直撃した。

 たった1しか無かった僕のHPの数値がぶれた。

 

 途端、僕の視界が真っ白に埋め尽くされていく…………。

 


 〈レベルが上がりました。レベルが3に上がります……〉



 ――――――――――――――――


 マナセ・トウマ LV3 状態 四肢欠損


 HP 3/28

 MP 2/28


 ATK 8

 VIT 3

 SPD 0

 MAG 7

 LUK -1292


 <Aスキル>

【ゴーレムクリエイト】【真眼】【ヒール】【念動】


<Pスキル>

【勇者】【レベル1固定】


 ――――――――――――――――


 〈……【レベル1固定】によりレベルが1に再設定されます〉


 ――――――――――――――――


 マナセ・トウマ LV1 状態 四肢欠損


 HP 1/16

 MP 1/20


 ATK 4

 VIT 3

 SPD 0

 MAG 5

 LUK -1292


 <Aスキル>

【ゴーレムクリエイト】【真眼】【ヒール】【念動】


<Pスキル>

【勇者】【レベル1固定】【気配察知】


 ――――――――――――――――


 ……ああ、また死に損なった。どうやら僕は相当に悪運が強いらしい。


 僕がダメージを受けた瞬間、僕の矢もまた小男を打ち抜いていたらしかった。

 相打ち気味に終わった戦闘。そして相手を殺したことに起因するレベルアップ。

 

 どうにもダメージを受けて0になるタイミングで一時的にレベルが上がっていたようだ。

 そのおかげでHPがたった一瞬だけ増えていた。

 しかし、それも一瞬のこと。

 僕のレベルはまた【レベル1固定】のせいで1に戻ることとなる。

 そして運がいいことにレベルダウン処理で0に切り捨てられずに1に切り上げられたのだ。

 


 とにかく僕は生き延びた。


 小男1体当たりレベル2つの上昇。5体いたから合計でレベル10。スキルポイントはレベルの3倍手に入るから合計で30。


 ……これだけあれば現状を打開するスキルが何か得られるだろう。


 夜はもうすぐだ。


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