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冬まつり・また冬に会いましょう

冬の女王・シエナとクリスの妹マリエは、二人で滑り台に乗ったり、迷路を一緒にまわったり、宝さがしゲームをして、楽しみました。宝さがしゲームとは、雪の中に、リンゴをあらかじめ隠しておいて、子供たちが見つけるゲームです。リンゴは備蓄された数少ない食料でしたが、大人が、子供たちのために一個ずつ出し合ったのでした。


 もちろんクリスも遊びました。迷路が簡単すぎてクリスには不満のようでしたが、来年はもっとりっぱなのを作ろうと、ユーリ達と話し合いました。


 村の女衆たちは、外で遊び体の冷えた子供たちに、”ショコラ”という暖かい飲み物を、作りました。ショコラは、牛乳と”ショコラ”の粉末を合わせたもので、子供たちは、きそって飲んでしまい、あっという間になくなりました。”ショコラ”の粉末を出してくれたのは、あのチェダさん。


「いや、商売の知り合いから、もらったんだ。やたら甘いし、俺は飲まないから子供たちに飲ませてやってくれ。温めた牛乳で溶かすんだ」


 と、ショコラ3箱、女衆たちに投げてよこしたとか。チェダは、いわゆる”いい男”でしたから、女衆の間で人気急上昇です。


 子供を連れて来た大人にはホットワインかコーヒー。ワインは鳥先生が寄付してくれました。

なんでも、論文で賞を取った時の副賞として、たくさん貰ったのだとか。残念ながら、鳥先生はアルコールが飲めず、そのまま封もきらずに、家に置いてあったそうです。


 西のほうが茜色に、東の空は薄い紺色に染まったころ、この小さな祭りも終わりになりました。それぞれが家に帰って行き、広場は驚くほど静かになりました。マリエは”シエナと一緒に寝るから”と駄々をこねましたが、塔の中は寒くて、風邪をひいてしまいます。クリスは”明日、朝一番に塔にこよう”となだめ、二人は世話になってる村長さんの家に帰りました。


*** *** *** *** *** **** 

 一方、冬の女王・シエナは、一人になったものの、肝心な事を忘れたのに気付き、あわてて作業に取り掛かりました。タペストリーの仕上げが残ってるのです。手直しする所もあります。


 女王は、まず、一羽でいるタペストリーの中の白鳥に、魔法をかけました。すると、白鳥はさ飛んで仲間の処にもどりました。それから、今日、遊んだ迷路やスベリ台、クリスとマリエの姿もタペストリーに小さく入れました。もっとも作業は、手足のはえたあのモフモフが、忙しく働いたおかげですが。


 シエナは、天のお父様からの”知らせ”で、早く目が覚めました。

(もうすこし、遊びたかった)シエナは、外に出て待ちました。天のお父様の処までシエナをの連れて行ってくれる何かが、来るはずです。


 そんな時、クリスがマリエとやってきました。ギュンターが馬を操り、ソリに乗せてきたのです。


「ああ、よかった間に合ったわ。クリス、私、知らせがきたから、もう帰らなくては。ありがとう。クリスとマリエのおかげで、帰る事が出来る。」


 冬の女王・シエナは、嬉しそうだけど少し寂しい笑顔で空を見上げてます。空にはV字の形で、白鳥たちが、北の国目指して飛んでいます。あの独りぼっちの白鳥も、一緒です。


「また次の冬の時に会えるね。シエナ。お別れは少し寂しいけど、今度はもっと楽しく遊べるような迷路や滑り台を作るよ。愉しみにしてて」


 マリエは、”会えない間もずっと友達” といって、泣いてます。


 雪がちらついてきました。この冬最後のなごり雪でしょうか。その中から、六角形の大きな雪の結晶が、ゆっくり降りてきました。その上には、背の高い女性が乗っていました。髪は若草色、パンツ姿のその女性を見て、シエナは一目散にかけていきます。


「プリマヴェーラ姉さま。やっと来てくれたのね」

「親父のやつ、なかなかシエナを呼ぶことができなくて、本当は困ってたようだ」

「ふふ、でも春の女王の姉さまが、来てくれて、村の人達も喜ぶでしょう」


 クリスは、それは少し違うと思って、ずっと考えてた事をシエナに伝えました。


「ねえ、シエナ。今回の冬は大変だったけど、村中が一つになる事が出来た。最後には冬まつりも出来た。結果、いい冬だったと思うよ」


 確かに、村中が長い冬に困り果ててましたが、生き延びる事は出来た


「そうさね。シエナ。いらない季節なんてないんだよ。」


 シエナは平べったくて透明な六角形の氷のような乗り物に乗っかると、少しづつ空へ上っていきました。


「また 今度の冬に。待ってるから」

「シエナ、私の事、忘れないでね」


 二人の声が届いたのか、冬の女王シエナは、大きく手を振り、空に消えていきました。


「さてと、大車輪で春の仕事をしなくちゃね。」

春の女王・プリマヴェーラは、塔に入って行きます。待ちかねた春がやってきました。


 


ご愛読、ありがとうございました。

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